壮絶! 大西秀明 生まれながらのお笑いモンスター
2022年2月27日 更新

壮絶! 大西秀明 生まれながらのお笑いモンスター

優しすぎて純粋すぎて、そして面白すぎるジミー大西。そのケタハズレのエピソードと天然ボケにはどんな芸人もかなわない。人々に爆笑と癒しを与える最強のお笑い芸人である。

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「付き合ってくれてありがとう。
この店、オクレさんが教えてくれてん。
遅くまでやってるし安くて美味しいって。
1度来てみたかったんやけど1人やとね」
さんま定食を注文した理子がいった。
「ここ、さんまさんのマンションの近くです」
「そうなん?
じゃあここ知ってた?」
「(首を振りながら)マンションはいったことがあります」
「行ってみたいわ」
(やっぱり好きなんや)
さんま定食を頼んだときから疑っていたが、この言葉で確信した大西はガクッとうなだれた。
後はひたすらハンバーグ定食を口にかきこんだ。
「大西君、初日はあんなに調子よかったのに、なんでやる気なくしてもたん?」
「いや、別に・・・」
「悩みあるなら話して。
ずっと暗い顔して・・・・
私、また大西君の笑顔みたいんよ」
そのこちらを真っ直ぐみてくる理子に大西は思い切っていった。
「す、好きなんやろ?」
「好き?」
「理子ちゃんはさんまさんのこと好きなんやろ」
「好きや。
大西君も好きやろ」
「その好きと、僕の好きと理子ちゃんの好きはちゃう!」
「何が違うの?」
理子は眉をしかめた。
「ちゃうねん。
ちゃうから僕、芝居が気が入らへんねん」
理子は箸を置いた。
「私がさんまさんを好きっていうのは・・・」
「そうやウソついてもわかる」
「ウソやない。
さんまさんのことはむっちゃ尊敬してる。
けどそれは大西君のいうてる好きとは違う。
恋とかそんなんやないの」
「せやけどよう楽しそうに話してるやん」
「私、東京行くんよ」
「東京?」
「さんまさんにはその相談に乗ってもらっててん。
ゴメンな、黙ってて」
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大西は両手で理子の手を握った。
「じゃあ、僕も行く。
僕も東京行く。
今決めた。
ええやろ」
「そらええけど・・・いやよくない!」
理子はその手を突き返した。
「そんな急に・・・
よう考えんと。
せっかく新喜劇に・・」
「新喜劇はもうええねん。
もともと芸人目指していたわけやないし、どうやってもさんまさんみたいにはなれへんし・・・
辞めるいうてくるわ。
ここで待っといて。
すぐ帰ってくるし」
大西は立ち上がってニカッと笑った。
そして制止する理子を無視し、定食屋を出て、さんまのマンションに走っていった。
大西は、運よく部屋にいたさんまに息も整わないまま
「僕、芸人も吉本も辞めさせてください。
わかったんです。
僕みたいのがどんなに努力しても若みたいには死んでもなれへん。
モノが違ういうか・・・
せやったらいっそのこと辞めたほうがええ・・・
止めんでください!
もう決めたことなんです」
「ええで」
「えっ?」
「お前が決めたんやったらそうしいや。
せやな、芸の道は努力でどうなるもんでもないしな。
その通りや」
「ど、どうもありがとうございました」
「おう、元気でな」
軽く手を上げたさんまにもう1度頭を下げ、大西はマンションを出て、全力で定食屋へ向かった。
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「理子ちゃん、いうてきたで。
東京行こ」
そういいたかったが、定食屋に理子はいなかった。
代わりにノートを破りとって書いた手紙があった。
「大西君、急にいなくなってゴメン。
でもそのほうがいいと決心したの。
大西君を待っている間、いろいろ考えました。
今の気持ちです。
私、大西君がおると甘えてしまう気がしたんよ。
せやから1人で東京行きます。
さっきは本気でうれしかったで」
大西は思った。
「フラれた」
手紙には、大西の笑顔が子供のことに飼っていたブルドッグにソックリで好きだったとも書かれてあった。
大西にとって理子はマキちゃんの生まれ変わりだったが、理子にとって大西は源五郎という犬の生まれ変わりだったのだ。
さらに手紙の最後で理子は、芸人のやめないように訴えていた。
「それが大西君の笑顔のために、きっと大事なことだから」
大西は手紙を丁寧に畳んだ。
(1981年4月に吉本新喜劇に入ってマドンナ役で活動した片山理子は、ドラマ「スチュワーデス物語」の鈴野はなえ役など活躍した後、、1980年代後半に芸能界を引退。
東洋英和女学院大学に入り、卒業後にロンドンへ留学。
帰国後、紅茶関係の仕事に就き、化人として吉本の文化部に復帰し、2018年、大西と再会した。
芸名「田宮緑子」、愛称「グリン子先生」として活動している)
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翌日、大西はなんば花月の明石家さんまの楽屋に向かった。
「なんやお前、辞めたんやないのか」
「さんまさん、弟子にしてください」
大西は体を2つに折って深々と頭を下げた。
「僕、腹を切ります」
「切るんかい」
「切腹か。
介錯いたす」
「くくるやろ、くくる!」
さんま、村上ショージ、Mr.オクレ、にいっせいにツッコまれ、いい直し。
「くくります、一生懸命くくります」
そして頭を下げたまま、さんまににじり寄った。
「いっちゃん尊敬できる若をいっちゃん近くでみて、若みたいなかっこいい芸人になりたいんです。
お願いします」
しかしさんまは
「そうか・・・他で頑張りや。
俺は弟子とれへんのや。
諦めや」
と突き放した。
「なんでですか?」
大西が迫り
「何がや」
さんまが返すと
「世田谷」
ショージがボケた。
「なんで僕、弟子になれへんのですか」
「決めとるからや」
「何を」
「弟子とらへんて」
「誰が」
「俺がや」
「世田谷」
「なんですか。
とってくださいよ。
なんでとらんのですか」
「うるさいわ」
「とるっていいましたやんか」
「いうてない」
「ええ~」
「もう帰るわ」
さんまはタバコを消して立ち上がった。
「さんまちゃん、メシは?」
Mr.オクレが聞いた。
「自分らで食え」
「なんで、メシいくっていいましたやんか。
焼肉行くっていいましたやんか」
ゴネるショージの頭をはたいてさんまは楽屋を出ていった。
ショージは大西にいった。
「ウチらが餓死したらお前のせいじゃ」
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その後も大西は
「弟子にしてください」
と頼み続け、さんまは断り続けた。
ショージに
「さんまさんは実はオカマ」
と吹き込まれ、下半身裸で突撃したこともあるが結果は同じ。
しかししばらくするとさんまの方から呼び出しがかかった。
「やった!」
喜んで花月の楽屋に行くと、ザ・ぼんちのおさむがいて、さんまにおさむ兄さんの弟子になるようにいわれた。
「コイツ、弟子の雄二いうんや」
おさむが紹介すると、横にいた男が、
「よろしく」
と頭を下げてきた。
大西は
「よろしく」
と同じように頭を下げたが
「兄弟子や。
ちゃんとせえ」
とさんまに怒られた。
そして雄二に
「がんばれよ」
といわれ
「お前もがんばれよ」
といい、さんまに頭をはたかれた。
「お前、しっかりせえよ。
わかったな」
「わ、わかりません」
「だから!お前はおさむ兄さんの弟子になるんや」
「なんでおさむ兄さんが僕の弟子ですか?」
「逆や!逆に決まっとるやろ!」
声を荒げるさんまの横からおさむは優しく声をかけた。
「俺がさんまちゃんに頼んだんや。
お前、おもろそうやから弟子にしたいって。
よろしゅう頼むで」
そして大西の肩を叩いた。
さんまは大西の頭を持って強引に下げさせた。
「兄さんがよろしゅういうてはるのに頭下げんか。
しっかり教えてもらうんやで。
弟子にとって師匠は絶対や。
四角くても師匠が丸いうたら丸や。
もし師匠がカラスは白いうたら?」
「白いうたら・・・カモメ!
・・・ああ鳩か」
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こうして大西は、おさむの家で住み込みの弟子となった。
おさむは、右と左がわからない大西に
「箸と茶わんはどっちで持つねん」
と聞くと、
「好きな方で持つ」
と返された。
おさむが京都花月でトンカツを注文したが、大西はそれを運んでいる途中、誘惑に負け、真ん中の1切れ食べ、残りを寄せた。
しかしおさむはケチャップがズレているのを発見。
「食べたやろ」
「食べてません」
否定する大西の口にはケチャップがついていた。
「まずは楽屋のみんなに覚えてもらわなアカン」
とおさむは、右手を上げてチョキをつくった。
普通はタバコくれの合図だが
「タバコ出さんとグー出せ」
と指示。
「じゃんけんと違う!」
というネタだった。
しかし右手を出すと大西はタバコを出す。
「グー出せって」
何度いっても無理だった。
楽屋で島田紳助に
「好きな漫才コンビは誰?」
と聞かれた大西は
「1番は、いとこい先生(夢路いとし・喜味こい)
2番目は、正司敏江・玲児さん。
4番目は、レツゴー三匹さん。
5番目は、B&Bさん
・・・・・・」
と答えていった。
横で聞いていたおさむは
「8番目がザ・ぼんち」
といわれ
「ナメてんのか!」
と怒った。
しかし基本的にぼんちおさむは優しかった。
どんなに失敗しても、失礼な口をきいてもニコニコしていて、怒るフリはするがキレることはなかった。
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ある日の夜、大西は師匠の家で待機していた。
家にいるのはおさむの嫁だけで、2人で、ずっと話をしていた。
おさむは25歳のときに19歳だった嫁と結婚。
出会いはディスコ。
まだ売れていなかったおさむは、必死にモノマネやギャグをして押しに押して交際をスタートさせた。
しかし相手の親は交際にも結婚にも猛反対。
自分の親も相手の親に直接会いにいって
「ウチのの息子が迷惑をかけて申し訳ない」
と謝った。
そんな困難を乗り越えて結ばれた2人は非常にラブラブだった。
やがて電話が鳴り、嫁がとった。
「はい、もしもし・・あっおさむちゃん。
えっ、まだ仕事してんの?」
「そやねん。
収録が長引いてもてなあ。
悪いけど大西に、もう迎えに来んでええから寝ときいうといて」
「もうひどいんやから。
あんまり遅いと大西くんと浮気しちゃうわよ」
嫁はそういって電話を切って振り返ると、下半身裸の大西が立っていた。
「なにやってんの?」
「ホ、ホンマにええんですか?
ボ、ボクと浮気するって」
「えっ?」
大西は下半身裸のまま、仰向けに寝転んだ。
「お願いします!」
「アホッ!
冗談に決まってるやろ!」
住み込みで弟子をしていたため、プライベートな空間がなく、大西の性欲は常に高かった。
フロ掃除のときに陰毛を見つけると、あの優しくて綺麗な奥さんのものかもしれないと思い、興奮した。
そして
「便器から子供が生まれるんちゃうか」
と思うほどなんば花月のトイレで吐き出していた。
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ある時期から大西は自販機の前を通れば、常につり銭口と機械の下を確認するようになった。
そして大阪生まれのはずなのに
「田舎のお袋が病気になって・・」
といって借金。
大西が、
「平木君のお父さんが亡くなりまして、午後からお葬式があるんです」
といって午後から仕事を休んだとき、おさむは平木君のお父さんが4回死んだことに気づいたが黙認。
むしろ
「女か?」
「借金か?」
と心配した。
その後、村上ショージが雑居ビルからセクシー衣装を着た女性と一緒に出てくる大西を目撃。
大西はうれしそうに頭を下げて女性にお金を渡していた。
その後、大西はおさむに楽屋に呼ばれた。
「大西、そこ座り」
「はい」
「腹割って話そか」
「はい」
「お前、最近、随分金が必要みたいやな」
「バレてたんですか」
「どうせ女に貢いどるんやろ。
どこの女や?
クラブか?
風俗か?」
大西は首を振り、小さな声で
「占い」
といった。
「占い?」
「はい、守護霊様が問題解決してくれるから、お札とか買うて、それで・・・」
「お前、そんなんに引っかかたんか!」
「引っかかったんちゃいます」
夜、歩いていた大西は、占い師の女性に
「悩みがありますね」
と声をかけられ、手を握られ、胸を押し当てられた。
店に入って占ってもらうと
「守護霊様が願いを叶えてくれる」
といわれ、その後、セッセッとお金を納め続けた。
「金とられたんか?」
「差し上げました。
偉いお坊さんが書いてくれたお札です」

【昭和の漫才】ぼんちおさむジミー大西

通常、芸人の世界では、弟子は2年経つと「年季明け」といって1本立ちすることになる。
大西もおさむの弟子について、あと1週間で2年となり、おさむは移動中の車の中で聞いた。
「どうする?」
「東京で、もう1回弟子につきたいです」
「たけしさんとか欽ちゃんなら、口利いたるで。
誰の弟子になりたい?」
「早見優ちゃんです」
おさむはシートからズリ落ちた。
「優ちゃんについて何すんねん」
「着替えを手伝いたい」
「断られたら?」
「歌手として頑張ります」
「ムリじゃ!」
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その後、おさむはテレビ局で一緒になったさんまにいった。
「大西のことなんやけどな、アイツに芸名つけたってくれんか」
「なんでですか。
弟子に芸名つけるんは師匠の仕事でんがな」
「だからそれがさんまちゃんや。
アイツ、さんまちゃんしかみてないで」
さんまは思った。
(困ったもんやな)
その後、花月の劇場から明石家さんま主演のテレビ番組の中継があり、大西は進行係として参加。
仕事が終わった後、さんまに呼ばれた。
「俺んとこ来るか?」
「ホンマですか」
「ああ、東京に来て俺の運転手やるか?」
「やったろか?」
大西はニタニタと笑いながらいった。
こうして大西は東京行きが決定。
おさむは
「さんまの付き人になればエエ」
と快くいったが、
「いいえ、僕は早見優さんにつきたいです」
といわれ、どついた。
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