晩年の黒澤作品を舐めてもらっては困ります。実は名作揃いなんですよ。ヒットはしなかったけどね。
2018年11月20日 更新

晩年の黒澤作品を舐めてもらっては困ります。実は名作揃いなんですよ。ヒットはしなかったけどね。

80年以降、晩年の黒澤作品は一般にあまり評価が高くないように見受けられます。特に最後の3作品は商業的にも厳しいものでした。だからって、ダメなのか?!駄作なのか?!いやいや、まったくそんなことはないんですよ、これが!

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黒澤明

「世界のクロサワ」、または「天皇」と呼ばれることさえある日本を代表する映画監督の黒澤明。黒澤明の作品と言えば、それはもう名作ばかり。生涯30本の監督作品を生み出していますが、どれをとっても面白く、アカデミー賞を始めとして、ヴェネツィア映画祭、カンヌ映画祭、ベルリン映画祭と世界三大映画祭を総なめにしたその実力は折り紙つきです。
黒澤明

黒澤明

生年月日:1910年3月23日
没年月日:1998年9月6日(88歳没)
出生地:東京都品川区
死没地:東京都世田谷区成城
活動期間:1943年~1998年
しかし、晩年の黒澤作品は必ずしも評価が高いとは言い難いようで、高倉健なども「黒澤監督の晩年の作品には、良いものがないと思う。」と発言してますね。
さて、晩年の作品は本当に面白くないのか?!駄作なのか?!振り返ってみようではありませんか。

影武者 -①

黒澤明の晩年というと80年代以降ということでしょうか、作品で言うと「影武者」ですね。「影武者」は前作「デルス・ウザーラ」以来5年ぶりの作品で、時代劇ということになると「赤ひげ 」以来15年ぶりということになります。
しかも、主役を務めるのは座頭市でお馴染みのお騒がせ大物俳優である勝新太郎。更にショーケンこと萩原健一。面白くならないはずがありません。

主演 勝新太郎 幻の影武者  Kagemusha Akira Kurosawa Shintaro Katu

物語は、ひょんなことから小泥棒が武田信玄の影武者となってしまったという戦国時代の悲喜劇を壮大なスケールで描いています。
期待は高まりましたが、撮影開始早々にして黒澤明と勝新太郎が衝突。個性の強い2人ですからねぇ、ぶつかるのは想定内だったのかもしれませんが勝新太郎は残念ながら降板してしまいます。
代役として起用されたのは、黒沢作品の次回作で主演が内定していた仲代達矢でした。まさしく影武者ですね。

影武者 -②

主役の交代というアクシデントから始まった「影武者」ですが、実は交代したのは主役だけではありません。音楽を担当していた佐藤勝もまた黒沢明と衝突して降板。急遽、池辺晋一郎が起用されています。まぁ、波乱含みのスタートだったんですね。
それでも作品は無事に完成し、1980年4月26日に公開されました。
影武者

影武者

監督:黒澤明
脚本:黒澤明、井手雅人
製作:黒澤明、田中友幸
外国版プロデューサー:フランシス・フォード・コッポラ、ジョージ・ルーカス
出演者:仲代達矢、山崎努、萩原健一、根津甚八
音楽:池辺晋一郎
撮影:斎藤孝雄、上田正治
配給:東宝
公開:1980年4月26日
上映時間:179分
無名時代の南部虎弾(電撃ネットワーク)、柳葉敏郎、山田五郎などが出演していますが、出演者はほとんどがオーディションで選ばれています。結果、新人俳優や演技経験のない素人が重要な役についているんです。監督の演技指導があればキャリアなど問題ないということなのでしょうね。それを証明した作品でもあります。

影武者

アカデミー賞はノミネートに留まりましたが、カンヌ国際映画祭でのパルム・ドールをはじめとして多くの映画祭で受賞しています。

「乱」のスケールはデカイ。どのくらい大きいかというと、「デルス・ウザーラ」の完成後にはシナリオは完成していたにも関わらず、スケールが大きすぎて莫大な製作費が必要となったものの資金調達が出来なかったために撮影は延期されたという。
つまり、「乱」」は「影武者」の前に作られるはずだった作品なんですね。
「影武者」の大ヒットにより、資金が集まり無事に制作することができた、それが「乱」です。
乱

監督:黒澤明
脚本:黒澤明、小國英雄、井手雅人
製作:セルジュ・シルベルマン、原正人
製作総指揮:古川勝巳
出演者:仲代達矢、寺尾聰、根津甚八、隆大介、原田美枝子
音楽:武満徹
撮影:斎藤孝雄、上田正治
編集:黒澤明
配給:東宝
公開:1985年6月1日
上映時間:162分
制作で問題はなかったかといえば、やはりありました。
黒澤明と共同脚本を行っていた小国英雄が人物設定で対立し途中降板。また、降板こそしなかったものの音楽の武満徹とももめて、本作以降絶縁状態となってしまいました。

しかし、それでも「乱」は素晴らしい。アカデミー賞(衣裳デザイン賞)をはじめ、これまた多くの映画賞を受賞し、その芸術性は世界で高く評価されています。

Ran Trailer - Akira Kurosawa

結果「乱」は、黒澤明が監督した最後の時代劇となりました。本作をライフワークと考えていたそうですから思いを遂げたということなのでしょうね。
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