CDで36枚組という桁外れのライブ・アルバムをリリースしたボブ・ディランの変貌をみる。
2018年7月3日 更新

CDで36枚組という桁外れのライブ・アルバムをリリースしたボブ・ディランの変貌をみる。

2016年はノーベル文学賞受賞という偉業を成し、CDで36枚組という桁外れのライブ・アルバムをリリースし世界中のファンを狂喜させたボブ・ディラン。そのアルバムにも収録されている超名曲「いつもの朝に」を通して今なお進化し続けるボブ・ディランを追います。

702 view

Bob Dylan

ボブ・ディラン

ボブ・ディラン

出生名:Robert Allen Zimmerman
別名:ブラインド・ボーイ・グラント、ラッキー・ウィルベリー/ブー・ウィルベリー、ジャック・フロスト
生誕:1941年5月24日
出身地:アメリカ合衆国 ミネソタ州ダルース
学歴:ミネソタ大学中退
ジャンル:ロック、フォークロック、フォーク、ブルース、カントリー、ゴスペル
担当楽器:ボーカル、ギター、ベース、ハーモニカ、キーボード
活動期間:1959年~現在
「風に吹かれて」「ミスター・タンブリン・マン」「ライク・ア・ローリング・ストーン」「天国への扉」などで知られるボブ・ディランですが、2016年はそのボブ・ディランにとってもファンにとっても特別な1年となりました。

日本のファンにとっては8度目となる来日公演や、アルバム「フォールン・エンジェルズ 」のリリースも嬉しいものでしたが、何といっても世間を驚かせたのが歌手としては初めてとなるノーベル文学賞の受賞でしょう。
村上春樹ファンを落胆させ、ロック・ファンを狂喜させたこの賞の受賞は、それまでにもグラミー賞やアカデミー賞、ピューリッツァー賞など賞という賞を総なめにし大統領自由勲章などというものまで受章しているボブ・ディランにとっても特別なものだったに違いありません。

そして、ボブ・ディランのコアなファンでさえも度肝を抜かれた「THE 1966 LIVE RECORDIN」というCDで36枚組というとんでもないボックス・セットが発売されました。

THE 1966 LIVE RECORDIN

THE 1966 LIVE RECORDIN

THE 1966 LIVE RECORDIN

THE 1966 LIVE RECORDIN

THE 1966 LIVE RECORDIN

【完全生産限定盤】36枚組CD
出典 amass.jp
ディランのボーカルに絡みつくようなロビーのギター、ガースのオルガン、リックのベース、そしてリチャードのピアノも上手いんですよね。
やっぱりディラン&ザ・バンドの組み合わせは特別なんだなと思います。
1966年にボブ・ディランは5月までアメリカ、オーストラリア、ヨーロッパを廻るツアーを行っていますが、このツアーはレコーディング並びにフィルム撮影が行われていて、「THE 1966 LIVE RECORDIN」には、そこから22公演分の音源が収められています。

この時のツアーは伝説となっていてファンの間では長らくブートレッグで聴かれていました(特にフリー・トレード・センターでのライブ)。なぜ伝説となっていたかと言いますと、当時はボブ・ディランがフォークからロックへと移行した時期で、ロックを変換させ大きな話題となっていたのです。
今や代表曲である「ライク・ア・ローリング・ストーン」が大ヒットし、歴史に残る名盤「ブロンド・オン・ブロンド 」のリリース直後、そしてこのツアーのバックを務めているのが後にザ・バンドとなるメンバーということで楽曲も演奏も非の打ちどころがないほど素晴らしいのです。

が、その一方でギター1本でフォーク・ソングを歌っていた頃のファンからはバッシングをうけていました。会場にはそうした以前のファンと新たなファンが入り乱れ、緊張感が漂っています。まさに歴史に残るライブとなっています。

それにしても36枚組とは。

いくら素晴らしい、歴史的価値があると言っても、このボックス・セットを購入するのはかなり勇気が要ります。当然と言えば当然なのですが、なんせ収録されている22公演の内容はほとんど同じなのですから。

しかし、初心者にも聴きやすい、ヨーロッパツアーの最終公演のみを収録した「リアル・ロイヤル・アルバート・ホール 」というアルバムも同時にリリースされています。
リアル・ロイヤル・アルバート・ホール

リアル・ロイヤル・アルバート・ホール

収録曲

  1. シー・ビロングス・トゥ・ミー
  2. フォース・タイム・アラウンド
  3. ジョアンナのヴィジョン
  4. イッツ・オール・オーバー・ナウ、ベイビー・ブルー
  5. 廃墟の街
  6. 女の如く
  7. ミスター・タンブリン・マン
  8. テル・ミー・ママ
  9. アイ・ドント・ビリーヴ・ユー
 10. 連れてってよ
 11. 親指トムのブルースのように
 12. ヒョウ皮のふちなし帽
 13. いつもの朝に
 14. やせっぽちのバラッド
 15. ライク・ア・ローリング・ストーン
このアルバムはロイヤル・アルバート・ホール での公演を収録しているのですが、タイトルに何故リアルと付いているかといいますと、このツアーのフリー・トレード・センターで録音された音源が流出し、「ロイヤル・アルバート・ホール」と誤ったタイトルでブートレッグとして広く知られていました。
あまりにも有名なブートレッグだったからでしょう、1998年にブートレッグ・シリーズ第4弾として正式にこの音源をリリースする際にも「ロイヤル・アルバート・ホール」としていたのです。シャレてますよね。
ロイヤル・アルバート・ホール

ロイヤル・アルバート・ホール

Disc 1
1. シー・ビロングズ・トゥ・ミー
2.フォース・タイム・アラウンド
3.ジョアンナのヴィジョン
4.イッツ・オール・オーバー・ナウ、ベイビー・ブルー
5.廃墟の街
6.女の如く
7.ミスター・タンブリン・マン
Disc 2
1.テル・ミー・ママ
2.アイ・ドント・ビリーヴ・ユー
3.連れてってよ
4.親指トムのブルースのように
5.ヒョウ皮のふちなし帽
6.いつもの朝に
7.やせっぽちのバラッド
8.ライク・ア・ローリング・ストーン
実際にはフリー・トレード・センターで収録された「ロイヤル・アルバート・ホール」と、その10日後に実際にロイヤル・アルバート・ホールで収録された「リアル・ロイヤル・アルバート・ホール」。収録曲を比べると分かるとおり、同じです。

このツアーは前半がアコースティック・セット、後半がエレクトリック・セットとなっているのですが、この2枚も当然同じ構成です。アコースティック・セットは好意的に受け止められていて、エレクトリック・セットの方はブーイングが飛び交っているというののも同様です。

ではなぜ、ロイヤル・アルバート・ホール(フリー・トレード・センターの方です)が有名になったかといいますと、演奏の良さ、音の良さとは別に、「やせっぽちのバラッド」を歌い終わった後に客席から「ユダ‼(裏切り者の意)」の野次が飛び、ボブ・ディランが「お前なんて信じない。お前は噓つきだ」とやり返し、「でかい音でやろうぜ」の掛け声とともに「ライク・ア・ローリング・ストーン」が始まるという何ともスリリングな、何ともロック的な一コマが記録されているからです。

One Too Many Mornings

1966年のツアーで目を引くのがエレクトリック・セットで最初に演奏されている「テル・ミー・ママ」です。ものすごくカッコいいロックンロールですが、スタジオ・レコーディングはされていないためこの時のツアーでしか聴くことができません。

それからもうひとつ注目したいのが同じくエレクトリック・セットで演奏される「いつもの朝に」です。
オリジナルは、1964年にリリースされた3枚目のアルバム「時代は変わる」に収録されている曲です。
時代は変わる

時代は変わる

収録曲

1. 時代は変る
2. ホリス・ブラウンのバラッド
3. 神が味方
4. いつもの朝に
5. ノース・カントリー・ブルース
6. しがない歩兵
7. スペイン革のブーツ
8. 船が入ってくるとき
9. ハッティ・キャロルの寂しい死
10. 哀しい別れ
フォーク界の貴公子だのプリンスだのともてはやされていた時の作品ですが、曲自体は名曲「時代は変わる」や「ハッティ・キャロルの寂しい死」などに埋もれている特にどうということのない印象の薄い曲です。アルバムをリリースするため、数合わせのために録音された曲と言えなくもありません。

それから僅か2年!ギターの弾き語りの地味な曲が、これほどカッコよくなるなんて。アレンジがどうのという問題ではなく、もう別物となっています。

One Too Many Mornings (1966, Dublin Ireland)

ロイヤル・アルバート・ホールに収録のものとは別テイクですが、基本同じです。
ボブ・ディランのアレンジャーとしての才能が全開しているわけですが、天才というのはこういうものなのでしょう。アレンジすればいいというものではありませんが、、この時期の、ザ・バンドとの「 いつもの朝に」は素晴らしすぎます。

こうした曲が収められているからこそ1966年のツアーの模様はブートレッグでもてはやされたのでしょう。

そして、時は流れて1975年。ボブ・ディランは「ローリング・サンダー・レヴュー」と名付けられたツアーを行います。その時も「いつもの朝に」を歌っており、その模様はライブ・アルバム「激しい雨」に収録されています。
激しい雨

激しい雨

収録曲

1. マギーズ・ファーム
2. いつもの朝に
3. メンフィス・ブルース・アゲイン
4. オー・シスター
5. レイ・レディ・レイ
6. 嵐からの隠れ場所
7. きみは大きな存在
8. アイ・スリュウ・イット・オール・アウェ
9. 愚かな風
1976年にオフィシャルとしてリリースされたこのライブ・アルバムもまた名盤とされていますが、驚くべきは「いつもの朝に」がまた違ったアレンジになっており、しかも更にカッコよくなっていることです。
こんなことが起こり得るのかと、にわかには信じがたい思いがしますが、これこそがまさにボブ・ディランなんですね。あまりの素晴らしさに呆れるしかありません。
24 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

ボブ・ディランの日本仕様のベスト盤が12・7に緊急発売!代表曲・風に吹かれてなど35曲を収録!

ボブ・ディランの日本仕様のベスト盤が12・7に緊急発売!代表曲・風に吹かれてなど35曲を収録!

2016年のノーベル文学賞に選ばれた米シンガー・ソングライターのボブ・ディラン(75)の、受賞記念ベストアルバムが日本国内で緊急発売されることが分かった。日本仕様の2枚組ベスト盤「ザ・ヴェリー・ベスト・オブ・ボブ・ディラン」として12月7日にリリースされる。
小田和正率いる、多くのヒット曲を生み出し、時代を代表するビッグ・グループバンド『オフコース』

小田和正率いる、多くのヒット曲を生み出し、時代を代表するビッグ・グループバンド『オフコース』

オフコースは、テレビ番組にはほとんど出演せず、レコード制作とコンサートに力を注いでいました。そんな彼らの曲は、今だに沢山の人達に聴かれ続けています。
星ゾラ | 9,993 view
あの「イカ天」がついに30周年!記念スペシャルライブ「にしあらイカ天」が10月8日に開催!

あの「イカ天」がついに30周年!記念スペシャルライブ「にしあらイカ天」が10月8日に開催!

80年代後半から90年代前半にかけて若者の間で爆発的にヒットした「三宅裕司のいかすバンド天国」。1989年の放送開始から来年で30周年となるのを記念し、西新井ギャラクシティ・西新井文化ホールにて、スペシャルライブ「にしあらイカ天」の開催が決定しました。
隣人速報 | 3,418 view
1970年。この年、フォークの神様“岡林信康”は、“はっぴいえんど”を従えてロックの王様になったのだ!

1970年。この年、フォークの神様“岡林信康”は、“はっぴいえんど”を従えてロックの王様になったのだ!

フォークの神様として祀り上げられることを嫌った岡林信康は、新たな道を模索することになります。結果、それは、はっぴいえんど をバックにしたエレクトリック化として結実します。1970年のことです。
obladioblada | 988 view
ジュンスカがデビュー30周年ツアーを開催中!ツアーファイナルが行われる「ジュンスカ伝説の地」とは?

ジュンスカがデビュー30周年ツアーを開催中!ツアーファイナルが行われる「ジュンスカ伝説の地」とは?

1988年のメジャーデビュー以来、常に第一線で活躍を続けてきたJUN SKY WALKER(S)。今年でデビュー30周年を迎えます。それを記念したアニバーサリーツアー「30th Anniversary Tour FINAL 〜全部このままで〜」が9月29日より幕を開けました。
隣人速報 | 613 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト