やらせ報道に思う「祭り」とは何なのか。
2018年11月24日 更新

やらせ報道に思う「祭り」とは何なのか。

最近、あるテレビ番組での祭り企画について、やらせ報道がありました。やらせの有無はともかく「祭り」とは、では何なのだろう?と、改めて思ったのでつらつら書かせていただきます。あくまでひとつの意見として。

1,211 view
最近、あるテレビ番組での祭り企画について、やらせ報道がありました。やらせの有無はともかく「祭り」とは、では何なのだろう?と、改めて思ったのでつらつら書かせていただきます。あくまでひとつの意見として。

「祭り」とは

「祭」。ざっくり言えば、ある程度限定された地縁(血縁)・信仰・周期に基づき地域共同体的に行われるものです。「1年間の中で決まった日時に、決まった場所で、地域の皆様たち(あるいは家族)が中心となって行う」ものです。普段の生活の中で行われるものです。

「季節の変わり目」で行われてきた

様が暮らす地域で伝承されているお祭りや京都の祇園祭などの著名なお祭り・・・これらは凡て決まった時期に神さまや精霊(ご先祖様など)に対して行うものです。日本には四季があり、その四季の変わり目に合うように祭りが行われることが多いのですが、暦より「季節の変わり目」で祭が行われていた、ということが本当は大事です。
 (2066145)

季節の節目には植物が花を咲かせたり実を作ったり枯れたりします。つまり、農作物にとって次のステップに移るためにパワーが欲しい時期。そして気温などの変わり目なので人間は病気になりがちなので、体力が欲しい時期。
そういう「節目」のタイミングで神さまや精霊が、大地や人間に新たなパワーをもたらし、あるいは体に溜まったケガレ(体に悪いモノ)を祓ってくれるのです。

では、神や精霊ってナニ?というお話にもなるかと思います。

「八百万(やおよろず)の神々」

日本では「八百万(やおよろず)の神々」といいますが、八百万とは「猛烈に沢山」という意味ですので、具体数ではありません。名のある神も名無しの神も色々ひっくるめて「八百万の神々」です。
地域それぞれを護る土地神や氏神や山の神、田の神、祖霊神、タタリ神・・・色々存在します。古事記や日本書紀にまとめられた神さま=名前がある神さま達も存在します。ぜ~んぶ、皆、八百万の一部です。

各地域に存在するご当地の神さまは地域のお祭りにヒョッコリ現れてきます。
 (2066148)

秋田県に「ナマハゲ」という神さまがいます。似たような荒々しい風貌の神さま、実は全国各地で年の変わり目などに現れます。石川県の「アマメハギ」や鹿児島県の「トシドン」など、みんな人ではない「異形」の姿で祭りのときだけ来訪する神さまです。そして大抵が怖いお面をつけています。

たいていが「鬼(オニ)」の面です。愛知県の「花祭」では「榊鬼」という存在もいたりします。実は、春来る鬼は日本古来の神さまなのです。年の変わり目にパワーをもたらす存在です。勿論、オニ以外の神さまもおります。「(翁面をつけた)翁」や、多分一番ポピュラーかもしれない「獅子」など、それはもう沢山。

とはいえ、オニに限定して話を戻しますと、日本最古の百科辞典とも言われる『和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』(10C)に「鬼は『隠(オン)』の音が訛ったもの」と書かれています。ものの陰に隠れて形を表すことを欲しない存在なのです。つまり、普段は「見えない」存在が姿を現す時、その表現として「鬼面」を使っているのです。仏教の獅子や金剛などの面デザインと合体した感もありますし、地獄の鬼と合体した感もあるし、結果、デザインは色々なものになっているのですが、ルーツをたどれば「見えない」存在だったのです。
そしてそのような見えないものが見える時、それがお祭り時でもあるのです。

そんな見えない存在がいる世界を古代日本では「常世(とこよ)」と表現しておりました。これまた日本古来の他界観(あの世)がありまして、これが常世。地獄でも極楽でもない「あの世=常世」です。山の向こう、海のかなたにあるとされています。これはまたいつか書かせていただけたらと思います。

お祭りより「無形文化財」という言葉が定着しているかも

最後に。

最近ではお祭りという言葉よりは「無形文化財」という言葉の方が定着しているかもしれません。日本文化(の歴史)を代表するモノに対して行政が「これは代表的なモノ」と判断、認定したモノたちを「文化財」とも表現しておりまして、文化財には「有形」と「無形」があります。有形は文字通り「形あるもの」。手で触れることができるもの…例えば仏像など神輿などです。一方の「無形」は手に持つことが出来ないものを指します。例えば芸能や技術です。このコラムでは無形文化財の中の、さらに無形の民俗文化財を中心的に取り上げるようにしております。民俗・・・つまり、普段の生活の文化についてです。普段の生活の中で行われ地域で育まれてきた無形の心…それがお祭りを支えてきたのだと、私は思います。

お祭りには目的と理由と、なにより心がある。それらが無い行事はお祭りではないと思うので、これからも、このコラムでは、そういうお祭りのコネタを取り上げていきたいなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
13 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • 住所不貞無色 2018/11/24 15:12

    新嘗祭も終わったことですし…良いタイミングの記事だと思いました
    まず一案として、祭り(祀り)の定義を折口信夫の「大嘗祭の本義」冒頭から引用してみたら如何でしょう
    のちの研究者でも流石にここを批判している者は少ない…私の知る限りでは皆無に近いと思います
    青空文庫にありますよ

    すべてのコメントを見る (1)

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

男性の象徴、その語源は中棒?珍宝??様々の呼び名の語源について。

男性の象徴、その語源は中棒?珍宝??様々の呼び名の語源について。

久しぶりの民俗コネタコラムです。ご無沙汰しております。私は日本の祭礼について大学などで講義をさせていただいておりますが、大人の皆様から一番多く質問されることは「夜這いってあるの?」「祭の日にフリーセックス的なことって本当にあるの?」などなど・・・人間味あふれる疑問についてです。
山崎敬子 | 5,548 view
お盆と言えばナスとキュウリ、そんなナスとキュウリが主役のあまり知られていない行事をご紹介!

お盆と言えばナスとキュウリ、そんなナスとキュウリが主役のあまり知られていない行事をご紹介!

夏のお盆といえばナスとキュウリですが、お盆以外の行事で見ることはあまり無い気が致します。しかし・・・日本は狭くて広い。あるんですよ、ナスやキュウリがメインの行事が。
山崎敬子 | 1,117 view
その昔日本には「経験した男性の数だけ鍋を被る祭」があったんです。

その昔日本には「経験した男性の数だけ鍋を被る祭」があったんです。

関係した男性の人数だけ鍋を頭に被る?今はもう行えない内容の祭りがかつて存在しました。5月の「鍋冠祭(なべかぶりまつり)」。滋賀件米原市の筑摩神社に伝わる祭です
山崎敬子 | 6,837 view
おみくじの種類はいくつかご存知ですか?代表的な7種以外のおみくじをご紹介!

おみくじの種類はいくつかご存知ですか?代表的な7種以外のおみくじをご紹介!

皆様が想像するおみくじは、おそらく7種類バージョン【大吉・吉・中吉・小吉・末吉・凶・大凶】が一般的なのかな?と思います。吉・中吉・小吉あたりの順番は神社によって異なると思いますが、とりあえずこの7つが現代では最も一般的なのではないでしょうか?
山崎敬子 | 22,382 view
修学旅行のメッカ、京都は八坂神社「祇園祭」の由来は祟り(タタリ)にあった?

修学旅行のメッカ、京都は八坂神社「祇園祭」の由来は祟り(タタリ)にあった?

中学・高校の修学旅行で京都に行かれた方も多いのではないでしょうか。京都の祭といえば「祇園祭」@八坂神社が一番有名かと思いますが、この祭りの「祇園」という単語は、御霊信仰(祟り=タタリ)に由来しているのです。
山崎敬子 | 1,792 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト