実話を基にした小説を、今村昌平が映画化した残虐な逃亡劇「復讐するは我にあり」
2019年10月2日 更新

実話を基にした小説を、今村昌平が映画化した残虐な逃亡劇「復讐するは我にあり」

1963年に日本中を震え上がらせた連続強盗殺人事件がありました。その事件が小説となり、その小説がまた映画となりました。本稿で特集する映画版は数々の映画賞に輝いた名作であり、今村昌平約10年振りの映画復帰作でもありました。

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事件当時、世間を戦々恐々とさせた「西口彰事件」。
事件を題材にした佐木隆三の直木賞受賞作、ノンフィクション小説「復讐するは我にあり」。

その小説を1979年に巨匠・今村昌平監督が映画化しました。
綿密なシナリオ製作からロケハン等、こだわりの結晶として完成した映画版 「復讐するは我にあり」。

見応え十分の犯罪逃亡劇となっておりました。

今村昌平が10年振りにメガホンを取った力作

黒木和雄、深作欣二、藤田敏八らと競った末に今村昌平が映画化権を取得。
映画は松竹と今村プロダクションの共同製作、配給は松竹。1979年4月21日に公開された。
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DVD 「復讐するは我にあり」
実際に存在した連続殺人犯の軌跡をもとにしたもので、今村昌平にとって約十年ぶりの劇映画だったそうです。

題材は、1963年に起きた「連続強盗殺人事件」

西口彰事件

1963年10月、福岡県内で2人の運転手が殺害されるという事件が起こった。
警察は目撃証言や指紋などから、窃盗などの前科があった西口彰(当時37歳)を指名手配した。西口はその後も逃走しながら殺人と詐欺を繰り返したが、64年1月に熊本の女子小学生の直感により逮捕された。

事件を基にしたノンフィクション小説は直木賞を受賞

1963年に起こった西口彰連続強盗殺人事件を取材し書かれたノンフィクション小説。

第74回直木賞受賞作品
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小説 「復讐するは我にあり」
本作は、実際に起こった連続殺人事件を基に傍聴マニアとして名高い佐木氏が再構成したもの。「復讐するは我にあり」という言葉は聖書からの引用で「復讐は人間の手によってではなく、神の手によって行なわれる」という程の意味。

あらすじ

日豊本線築橋駅近くで専売公社のタバコ集金に回っていた柴田種次郎、馬場大八の惨殺死体が発見され、現金41万円余が奪われていた。やがて、かつてタバコ配給に従事した運転手・榎津厳が容疑者として浮かんだ……。
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主人公 榎津巌(えのきづ いわお)

主演は緒形拳(おがたけん)
警察が専売公社雇人殺しの容疑で榎津を全国指名手配にするなか、榎津は裁判所で被告人の家族に近づき、弁護士を装って保釈金を預かる手口で詐欺を働き、仕事の依頼と称して老弁護士に近づき、殺害して金品を奪って逃げ続ける。

浜松の旅館に大学教授を装って投宿し、宿の女将ハルと懇ろになる。
ハルの母親は元殺人犯で収監された経歴を持ち、ハルの情夫で旅館のオーナーでもある男の機嫌を取りながら、競艇に明け暮れる日々を送っている。

ある日、榎津とハルが映画館へ入ったところ、館内の映像ニュースで榎津の指名手配が流れ、ハルは榎津の正体を知る。
榎津に惚れていたハルは榎津を匿い、逃走を手助けする。それを知ったハルの母親は榎津を競艇に誘い、当てた金を榎津に渡して、自分たちの前から消えてくれるよう頼む。
榎津はハルと母親を殺害し、質屋を旅館に呼んで二人の所持品を売り払う。
榎津を以前客に取ったことのある売春婦が、質屋と一緒にいる榎津を目撃し、指名手配の犯人であることに気づき、警察に通報する。

2011-0086 - YouTube

予告

今村組の撮影

「あのパトカーの護送シーン、あれは苦労しましたよ」
チーフ助監督をつとめた新城卓氏は当時を思い出して懐かしげに笑った。
新城さんの話では、パトカーの走る山間の道の上空に幾重のものロープを張り、カポックの雪を降らせたのだという。厳寒の冬の夕暮れ、カポックを入れた篭をロープに吊るして走り来るパトカーに合わせて雪を降らせる。夕暮れの短い時間の中での作業は困難を極める。ぶっつけ本番で、NGならば翌日に回さなければならない
「チャンスは一日1度、やぁ、緊張しましたよ」
今村組の撮影ではいつも事前の準備が大変なのだ。
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走るパトカーに雪を降らせるシーンを準備
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