実話を基にした小説を、今村昌平が映画化した残虐な逃亡劇「復讐するは我にあり」
2019年10月2日 更新

実話を基にした小説を、今村昌平が映画化した残虐な逃亡劇「復讐するは我にあり」

1963年に日本中を震え上がらせた連続強盗殺人事件がありました。その事件が小説となり、その小説がまた映画となりました。本稿で特集する映画版は数々の映画賞に輝いた名作であり、今村昌平約10年振りの映画復帰作でもありました。

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出演者の演技が映画を引き立てた

緒形拳そして父親役榎津鎮雄を演じた三国連太郎。
父と息子、この二人の確執、神への信仰そして欺瞞、愛憎といった人間の業、暴力の裏に潜む弱さ、人間であるがゆえの原罪にまで迫る演技は何度見ても凄まじい。
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複雑な親子関係を、緒形拳、三國連太郎が見事に演じました。
榎津巌(緒形拳)が、千枚通しで男を滅多刺しにするシーンの不気味さが脳裏に焼きついて離れない。
大抵の映画にあるような、アクションシーンとしての暴力場面ではなく、いかに生々しく殺人が行われたかを白けた視点で描いてある。
まだ動いている相手を袋詰めにし、何度も千枚通しを振り下ろす。
殺害した後、おもむろに立小便をして、その尿でもって返り血を浴びた手を洗うという暴挙すら平気でやってのける。
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緒形拳
血だらけで迫真の演技

数々の賞に輝く

第3回日本アカデミー賞作品賞・監督賞・脚本賞・助演女優賞、キネマ旬報賞作品賞・脚本賞・助演男優賞・助演女優賞、毎日映画コンクール優秀賞・脚本賞・監督賞、ブルーリボン賞作品賞・助演男優賞・助演女優賞ほか映画賞を総ナメ!

作品データ

監督 今村昌平
脚本 馬場当、池端俊策
俳優 緒形拳、三國連太郎、倍賞美津子等
公開  1979年(昭和54年)
配給 松竹
時間 140分
日本犯罪史に残る残虐な犯行をシリアスに追った本作。
徹底的なリアリティを求めた作品でもありました。

前述の千枚通しでの殺害シーン後に、榎津巌(緒形拳)が立小便で手を洗うシーンは、本当に立小便をしているそうです。
また、実際の殺人のあった雑司ヶ谷のアパートで撮影する等のこだわりもありました。
(それらのこだわりの影響か検閲に引っ掛かり、カットされたシーンが多いようです。)

今となっては、そこまでエゴイスティックにこだわる映画監督はいないでしょうね。
そういった製作環境でもないと思います。

昭和らしい重厚な雰囲気に溢れた名作でした。
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