「緋の稜線(ひのりょうせん)」昭和激動時代を生き抜いた女性の物語
2016年5月25日 更新

「緋の稜線(ひのりょうせん)」昭和激動時代を生き抜いた女性の物語

1998年にTVドラマ化された「緋の稜線」は昭和元年に生まれた瞳子(とうこ)とその家族たちの激動の物語です。戦前・戦中・戦後に生きた女性たちの強さと弱さが余すところなく描かれています。登場人物たちのセリフには、読み手が「ハッ」とさせられる深い言葉がたくさん出てきます。人生の半ばを迎えたミドルエッジにぜひ読んでほしい作品なので、ご紹介したいと思います。

46,681 view
 (1655045)

瞳子の心の奥底にずっとあった愛人の子である望恵への溝を埋められないまま、望恵は交通事故で生死を彷徨うことになります。その時になってやっと芙美香(ふみか)との心の中での決着を付け心の底から望恵の母親でありたいと願う瞳子の祈りが通じたのか、望恵は奇跡的に一命を取りとめました。そしてその後、15年間行方不明だった昇吾の乗った飛行機が森林で見つかるのでした。

それから数年後、各務家の人々が集まるその日に昭和という時代が終わります。健吾、昇平、望恵にもそれぞれ子供が生まれていて、瞳子は空港に望恵を迎えに行く車窓を眺めながら、昭和の終わりを実感していくというラストでした。

「緋の稜線(ひのりょうせん)」最大の魅力

 (1655067)

「緋の稜線(ひのりょうせん)」最大の魅力は、登場人物ひとりひとりの苦悩とその乗り越える心の過程が、時間の経過とともに詳しく描かれていることだと思います。

あまりにも登場人物が多いので、一人一人については詳しく書きませんが、たとえば主人公の瞳子は夫の愛人である芙美香の赤ちゃんを、自分が妊婦のフリをしてまで自分の子であるように見せかけて育てます。深い愛情を持って育てていきますが、けれど年を重ねるごとに芙美香に似てくる望恵をだんだん直視できなくなってきます。

そもそも芙美香が瞳子に似ていたので、周りから見れば自分にそっくりなのですが瞳子の心の中では違っていました。そしてその自分の心の闇に望恵を失いそうになって初めてきちんと向き合い、女として母として芙美香に負けていたと悟った上で望恵を自分の子供と出来たことに「これ以上のものはない」と涙するシーンがあるのですが、同じ女性として母としてすごく考えさせられる場面でした。

血のつながりより大切なもの

 (1655081)

「緋の稜線(ひのりょうせん)」では血が繋がっていない子供たちが多数登場します。瞳子のところでは長男の健吾は父の昇吾と血のつながりはありませんが、誰よりも昇吾に似ていると言われます。

二男の昇平は唯一瞳子と昇吾の子供ですが、あまりに2人に似ていないので幼少時代は自分が貰われっ子だと疑っていました。成人してから父の昇吾に似てきます。

望恵は瞳子と血の繋がりはありませんが、実母の芙美香が瞳子の若い頃にそっくりだったので周囲から見れば見た目もそっくりと言われますが、一番似ているのは瞳子の人を惹きつけるところだと菱屋百貨店で言われています。

また瞳子の姉の寿々子は戦争孤児を引き取って養子にしているのですが、全く血の繋がりのない市子(いちこ)は誰よりも寿々子に似ていて、同じ新聞社に勤め、後に小説家になっています。

「緋の稜線(ひのりょうせん)」をもう一度読みたくなったらこちら!

緋の稜線 全16巻完結セット (文庫版) 【コミックセット】 | | 本 | Amazon.co.jp

Amazon公式サイトで緋の稜線 全16巻完結セット (文庫版) 【コミックセット】を購入すると、Amazon配送商品なら、配送料無料でお届け。Amazonポイント還元本も多数。Amazon.co.jpをお探しなら豊富な品ぞろえのAmazon.co.jp
「緋の稜線(ひのりょうせん)」を全巻読んで、瞳子たちが生き抜いた激動の昭和時代を体感してみませんか?
31 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

大人の女子にとってはどれも懐かしい!女子に人気の記事・スレッド一覧

ラブストーリーの名作!りぼんっ娘のハートをわしづかみにした月の夜星の朝

ラブストーリーの名作!りぼんっ娘のハートをわしづかみにした月の夜星の朝

少女漫画の金字塔として輝く『月の夜星の朝』80年代、りぼんに掲載されていたこのマンガ。正直羨ましいほどモテモテ&なんでも出来るりおと遼太郎の恋模様に胸キュンキュンしたあの頃…少し振り返ってみませんか?
bllack-mymerody | 3,587 view
天使なんかじゃない、ご近所物語、NANA…矢沢あいの展覧会『ALL TIME BEST 矢沢あい展』が開催決定!!

天使なんかじゃない、ご近所物語、NANA…矢沢あいの展覧会『ALL TIME BEST 矢沢あい展』が開催決定!!

人気漫画家・矢沢あいの展覧会「ALL TIME BEST 矢沢あい展」が、2022年夏に第1会場となる東京・新宿髙島屋を皮切りに、大阪髙島屋、横浜髙島屋で開催されることが決定しました。
隣人速報 | 705 view
少女漫画界のレジェンド!いくえみ綾さんの80年代・90年代作品を振り返ろう!

少女漫画界のレジェンド!いくえみ綾さんの80年代・90年代作品を振り返ろう!

おしゃれで独特の雰囲気があるいくえみ綾さんの作品。青春時代に読んでいた(むしろ今でも読んでいる)という人も多いのではないでしょうか。現在でも複数の連載を持って活躍されていますが、今回は80年代から90年代の作品を振り返ってみましょう。
saiko | 2,896 view
感動をふたたび!涙腺崩壊しちゃう『赤ちゃんと僕』を振り返る

感動をふたたび!涙腺崩壊しちゃう『赤ちゃんと僕』を振り返る

漫画雑誌『花とゆめ』にかつて掲載されていた『赤ちゃんと僕』。不慮の事故で母親を亡くした拓也とその弟である実との兄弟愛、拓也の友達との友情、そして家族愛などとにかく涙腺崩壊必須の感動漫画でしたね!もう一度読みたくなること必至。振り返ってみたいと思います。

関連する記事こんな記事も人気です♪

少女漫画、ファンシーグッズ、占いなど昭和ガーリーカルチャー大集合!『ゆかしなもんの'80sガーリーカルチャーガイド』5月発売!!

少女漫画、ファンシーグッズ、占いなど昭和ガーリーカルチャー大集合!『ゆかしなもんの'80sガーリーカルチャーガイド』5月発売!!

グラフィック社より、書籍『ゆかしなもんの'80sガーリーカルチャーガイド』が、2023年5月に発売されます。少女漫画、おもちゃ、アニメ、ファンシーグッズ、占い……など、当時を知る人には懐かしく、知らない人には新鮮に映る可愛さ満点のアイテムがたっぷり紹介されます。
魅惑のなつかし少女漫画ファッションを特集した『かわいい!少女マンガ・ファッションブック』が好評発売中!!

魅惑のなつかし少女漫画ファッションを特集した『かわいい!少女マンガ・ファッションブック』が好評発売中!!

立東舎より、昭和30〜40年代の少女漫画や雑誌などに掲載されていた「ファッション画」を特集した書籍『かわいい!少女マンガ・ファッションブック 昭和少女にモードを教えた4人の作家』が現在好評発売中です。
隣人速報 | 1,138 view
【訃報】少女漫画家の美村あきのさん、死去。「すくうるでいず」「伝説の少女」など

【訃報】少女漫画家の美村あきのさん、死去。「すくうるでいず」「伝説の少女」など

「すくうるでいず」「伝説の少女」などの作品で有名な少女漫画家・美村あきのさんが7月30日に死去したことが、本人のTwitterなどで明らかとなりました。60歳でした。
隣人速報 | 1,687 view
崖での特訓は当たり前!あの「バレエ星」の谷ゆき子による超展開バレエ漫画に第2弾「まりもの星」が登場!!

崖での特訓は当たり前!あの「バレエ星」の谷ゆき子による超展開バレエ漫画に第2弾「まりもの星」が登場!!

株式会社リットーミュージックの面白レーベル「立東舎」より、谷ゆき子著のバレエ漫画『まりもの星』が現在好評発売中です。果たして今回はどんな超展開を見せてくれるのでしょうか?
隣人速報 | 1,113 view
数十年ぶりのサイン会!「王家の紋章」50周年カウントダウン開始記念として、細川智栄子あんど芙~みんがサイン会を実施!!

数十年ぶりのサイン会!「王家の紋章」50周年カウントダウン開始記念として、細川智栄子あんど芙~みんがサイン会を実施!!

2026年9月に連載50周年を迎える秋田書店刊行の漫画「王家の紋章」の50周年まであと1年のカウントダウンが開始されるのを記念し、現在大好評開催中のイベント「ACN ラムセス大王展 ファラオたちの黄金」にて、著者・細川智栄子あんど芙~みんによるサイン会が開催されます。
隣人速報 | 23 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト