日本版七夕伝説は「聞き間違いで年に1回デートになった」???
2018年6月26日 更新

日本版七夕伝説は「聞き間違いで年に1回デートになった」???

7月間近なこの頃。何となく世間が「七夕」を打ち出し中です。七夕と言えば短冊に願い事を書く、7月7日の行事です。学校や世間で聞く七夕の由来と言うと、織姫(おりひめ)と彦星(ひこぼし)のラブストーリーではないでしょうか?

1,834 view
7月間近なこの頃。何となく世間が「七夕」を打ち出し中です。七夕と言えば短冊に願い事を書く、7月7日の行事です。

学校や世間で聞く七夕の由来と言うと、織姫(おりひめ)と彦星(ひこぼし)のラブストーリーではないでしょうか?元ネタは中国由来の牛郎織女(ぎゅろうしゅくじょ)という物語ですが、まずこのラブストーリーを大雑把にご紹介。
天の神様の娘「織姫」は機織り機で美しい布を織ってばかりの勤勉なお嬢さんでした。ある日、ひたすら牛の世話に励む勤勉な若者「彦星」と出会います。惹かれあう二人。親である神様は勤勉そうな彦星を娘の結婚相手に許したのですが、二人ったらラブラブモード過ぎで働かなくなってしまい、結果、天の服は不足し、牛達はやせ細ってしまいました。

「こりゃアカン」と怒った天の神様は、織姫を西に、彦星を東に、天の川で隔てて引き離し、二人はお互いの姿を見ることも出来ないようにしちゃいます。引き裂かれた2人は落ち込みすぎで働けなってしまいます。その結果、牛は病気になり、天の服も新調されず、状況はさらに悪化しました。

「これもアカン」と困った神様は妥協案を出しました。それは「毎日真面目に働くなら7月7日だけは会わせてやる」というもの。この案を受け入れて、二人はまじめに働くようになり、毎年7月7日の夜は織姫と彦星はデートをするようになりましたとさ。
大雑把に言えばこんな感じだったかと思います。

そもそも奈良時代に中国から伝わった「乞巧奠(きっこうでん)」がルーツで、平安時代には貴族たちが牽牛星(わし座の主星アルタイル)・織女星(琴座の主星ベガ)を眺めながら管弦の遊びをしていた乞巧奠がその後江戸時代になり庶民に広まると同時に、笹竹に芸事の願いを書くようになり、やがて願う内容はなんでもアリになって今に至ります。

が。元々日本には棚機津女(たなばたつめ)の伝説がございます。『古事記』には天稚彦(あめわかひこ)が死に阿遅鉏高日子根神(あぢすきたかひこね)が来た折に詠まれた歌にある「淤登多那婆多」(おとたなばた。弟棚機)とあり、これがルーツと言われたりします。『日本書記』にも「乙登多奈婆多」という言葉が見受けられます。

古代日本にも「たなばた」という言葉はありました

この天稚彦(あめわかひこ)はどんな神様かというと、最高神の天照大神(あまてらすおおみかみ)の弟・素戔嗚尊(すさのおのみこと)が天界(高天原)を追放され地に居り所帯を持ち、その息子の大国主神(おおくにぬしのかみ)が葦原中國(あしはらのなかつくに)を作るのですが、その後神様たちが下りてきてその中國を平定する際に派遣された神様です。

細かい説明は省きますが、つまり、「たなばた」という言葉自体は古代日本にあったのです。で、簡単に言えば、それが中国由来の風習と合体して今の七夕が出来上がっているわけです。

そんな訳で中国伝来の織姫彦星が定着しているのですが、実は日本オリジナル七夕伝説というのもあるのです。今回はこれをご紹介します。

日本オリジナル七夕伝説

それは『天稚彦草子(あめわかひこそうし)』。

これは室町時代に作られた短編物語『御伽草子』の一つでして、主人公は先に述べた古事記や日本書記に登場する、あの天稚彦。それより何より7月7日だけ会うことになる理由がシュールなんです。どういう話かというと…
昔々、ある所に長者(お金持ち)がおりました。ある日、彼のところに大蛇が「嫁をよこせ」と言ってきたので、親思いの末娘が嫁ぎました。そうしたら実は大蛇は美男、天稚彦。夫婦で充実した日々を過ごしていました。

ある日、夫は「僕、ちょいと天上に里帰りしてくる。僕が居ない間にこの箱は開けないで。地上に戻れなくなるから。もし開けちゃった場合は天上に行くアイテムを使って天上に来てね」と言って天上に帰りましたが、その間にトラブルが発生し箱が開いてしまいました。

だから妻はアイテムで天上に向かい再会できたのですが、夫の父=義父(鬼)が二人の結婚を認めてくれません。無理難題の試練を妻に突きつけます。千頭の牛を飼えだの千穀の米を全部運べだの。これを妻はまわりの助けを得て解決しました。時にはアリンコが助けてくれました。というか、天上にアリンコ居るんですね。

さておき、そんな妻を義父も認め、二人が「月に1回」逢うことを許します。が!なんと!妻ったら何を聞き間違えたのか「え、年に1回!?」。義父(鬼)はシレっと「そう!年に1度。それまでは川で二人を引き離しておくから」と、川まで作ってしまいました。だから二人は天上に居ながらにして年に一度しか会えなくなりました。それが7月7日なのです。
というお話。日本人なりに7月7日ぽっきりの理由を「聞き間違い」で押し切っております(苦笑)。まさかの「聞き間違い」。個人的には聞き間違いの方がラブストーリーより親近感ありますが、皆様はいかがでしょうか。
「天稚彦草紙」

「天稚彦草紙」

ベルリン国立アジア美術館所蔵のものを別冊太陽が掲載したものです。
「天稚彦草紙」

「天稚彦草紙」

ベルリン国立アジア美術館所蔵のものを別冊太陽が掲載したものです。
11 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

桃太郎以外の鬼退治伝説はちょっと気の毒な(?)鬼のお話。

桃太郎以外の鬼退治伝説はちょっと気の毒な(?)鬼のお話。

今回は桃太郎以外の鬼退治伝説を紹介させていただきます。どれも鬼が気の毒になってしまうようなお話です。
山崎敬子 | 712 view
岡山?山梨?長崎?全国で伝承されている鬼退治伝説をご紹介。

岡山?山梨?長崎?全国で伝承されている鬼退治伝説をご紹介。

鬼というと「鬼退治」を連想する方も多いように見受けられます。今回はそれに関係するお話です。
山崎敬子 | 747 view
「鬼」という言葉の由来を辿りましょう。

「鬼」という言葉の由来を辿りましょう。

昨今の鬼ブームにあって、みなさんは「鬼」という言葉の由来を考えたことはありますか。前回に引き続き鬼の由来を辿っていきます。
山崎敬子 | 1,241 view
「鬼」という言葉の由来を考えたことはありますか。

「鬼」という言葉の由来を考えたことはありますか。

漫画「鬼滅の刃」が大ヒット。いまはまさに鬼ブームですが、みなさんは「鬼」という言葉の由来を考えたことはありますか。
山崎敬子 | 1,395 view
男性の象徴、その語源は中棒?珍宝??様々の呼び名の語源について。

男性の象徴、その語源は中棒?珍宝??様々の呼び名の語源について。

久しぶりの民俗コネタコラムです。ご無沙汰しております。私は日本の祭礼について大学などで講義をさせていただいておりますが、大人の皆様から一番多く質問されることは「夜這いってあるの?」「祭の日にフリーセックス的なことって本当にあるの?」などなど・・・人間味あふれる疑問についてです。
山崎敬子 | 5,492 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト