衝撃の鬱展開!子供がやるのは明らかに危険なナムコの異色作『スプラッターハウス』の救いのない絶望を見たか。
2018年3月5日 更新

衝撃の鬱展開!子供がやるのは明らかに危険なナムコの異色作『スプラッターハウス』の救いのない絶望を見たか。

これまで『パックマン』や『ゼビウス』『ドルアーガの塔』など主に明るいイメージがあったナムコが、ホラー映画ブームの真っ只中であった80年代に世に放ったホラーアクションゲームの紹介です。今となっては版権的にやばそうなジェイソン似のマスクを被った主人公が、パンチやキックで館に蔓延る異形の怪物をなぎ倒しながら突き進みます。本作はアクションゲームとして名作であると同時に、世代によっては「欝ゲーの代名詞」とも言える作品でもあります。

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絶望のなんたるかを思い知らされるゲーム『スプラッターハウス』

『スプラッターハウス』PCエンジン移植版パッケージ

『スプラッターハウス』PCエンジン移植版パッケージ

『スプラッターハウス』(SPLATTER HOUSE)は、1988年にナムコ(後のバンダイナムコゲームス)から発売されたアーケードゲームです。
概要
本作は、映画『13日の金曜日』のジェイソン・ボーヒーズに似た主人公・リックを操作し、さらわれた恋人ジェニファーを救出するため、館に巣喰う化け物を倒してゆくアクションゲームである。

木片で敵を壁に叩き付けたり、ナタで真っ二つにしたり、床中に血まみれの死体が転がっていたりと、残虐かつグロテスクな表現をふんだんに用いた演出が特徴となっており、これまでのアーケードゲームとは一線を画していた(アーケード版は以後、AC版と表記)。それまでのナムコの得意とした「コミカル」や「無機的(SF調)」な手法とは異なり、本作以降も残虐性・暴力性を前面に出した作品は非常に少ないため、ナムコ全体の作品内においても異色の存在といえる。

以後シリーズ化され、本作の家庭向けゲーム機などの移植版や続編作品もリリースされている。

当時の時代背景

この当時、ホラーやスプラッター(残虐な直接的表現を取り入れたホラー)、あるいはオカルトを扱った映画などがブームを起こしており、これらでは特殊視覚効果の向上により、生々しい残酷表現を特徴としていました。中には余りに残酷な表現により、映画館内で気分が悪くなってしまう人も続出しました。そんな時代でした。

これらの映画は、後に「原点回帰型」の直接的な残酷表現を減らしてストーリーの盛り上がりで勝負する純粋なホラー映画と、過剰な残酷表現により一種のナンセンスさすらかもし出した「スナッフ・スプラッター映画」、またオカルト色を前面に出して残酷な表現は省いたオカルト映画へと分化していきます。その分岐点に当たる1980年代にこの作品はリリースされたのです。

1990年代後半からはこの映画界の分化に追従する形で、次第にホラーゲームなどのジャンルが確立されていきますが、この当時は一部残酷表現を特色とするゲームはあったものの、ホラー映画を題材とし、しかもアンチヒーロー的な主人公を据えたゲームと言う点で、この当時はなおの事、現在でも珍しい内容のゲームとなっています。

ストーリー

超心理学の権威として有名な人物だったウエスト博士は、「死体蘇生」をテーマに掲げて禁断の研究に没頭し続けた末に、
その副産物である異形の怪物に襲われて自ら命を落とし、彼の住んでいた館は怪物が徘徊する恐怖の館と化してしまった。
人々はその館を「スプラッターハウス」と呼び習わし、決して近づこうとはしなかった。
大学で超心理学を専攻していた主人公リックとその恋人ジェニファーは、その話に興味を持ってウェスト館の近くへとやってきたが、
折悪しく降り始めた豪雨に追われるようにして、館に足を踏み入れてしまう。
たちまち怪物たちの魔の手が伸び、リックはなす術もなく打ちのめされ、ジェニファーは館の奥へと連れ去られてしまった。
絶望と共に薄れ行く意識の中、何者かがリックに呼びかける。その声の主は「ヘルマスク」。
太古より覇者と共にありし伝説の仮面の精霊であり、身に付けし者に強大な力を授けてきた、人智を超えた存在である。
呼びかけに応じてヘルマスクを身につけ超人的な身体能力を得たリックは、忌まわしきスプラッターハウスの奥底へ足を踏み入れる。
ジェニファーを救うべく、長い長い、悪夢の道へと……。

ちなみに

超心理学とは「超常的な力や事象の存在を明らかにする」という、実在する学問です。
主に超能力の研究が主眼ですが、心霊現象などのオカルト的領域も含むので『心理学者なのに何故にオカルト研究?』というツッコミは無用なのです。

ゲームシステム等

本作は残機制・ライフ制併用の半任意スクロール方式の横スクロールアクションゲームです。
回復アイテムが存在しないかわりにステージクリアごとにライフが1回復します。スコアエクステンドも用意されています。
ライフは初期4~最大5。ライフが0になると戻り復活となりますが、即死要素はありません。
一部を除く各ステージは複数エリアから構成され、中にはステージ道中のルート分岐が存在するステージもあります。なお、ステージのスタートエリアとボス出現エリアはルート分岐があるステージでも共通です。
永久パターン防止措置があり、長時間画面内に留まっていると画面左側から「触れるとダメージを受ける紫色の霧」が迫ってきます。ボス戦では、飛び越すことがほぼ不可能な「青色の塊」が画面右端からゆっくりと迫って来るようになっています。

プレイヤーが操作できるのは8方向レバー、ジャンプと攻撃の2ボタンです。攻撃はプレイヤーの状況によりパンチ・キック、またジャンプ中にコマンド入力でスライディングキックができます。
更に壁に設置された槍や床に落ちている鉈、石、スパナ、斧、角材、散弾銃など、場所ごとのシチュエーションに合うような豊富な種類の武器も用意されています。(槍、石、スパナは投擲武器であり1発限り。ショットガンには弾数制限があります。)
ただし、これらの武器は温存しても拾ったエリア内限定で、エリア突破時にその場に置いていくことになります。エリアやステージをまたいだ持ち越しはできず、所持した状態でミスした場合も再スタート時は丸腰になります。

実際のプレイ動画

スプラッターハウス(AC版)ノーダメージクリア

本当は結構な難易度の本作ですが、極め人は動きに一切の無駄がありませんね。簡単に見えてきます。

圧倒的絶望感を思い知らされるストーリー内容

本作はACTとして名作であると同時に、「欝ゲーの代名詞」とも言える作品でもあります。
特にプレイヤーに衝撃を与えたのが、ステージ5のボス戦からの展開でした。

ネタバレになってしまうのでこれからストーリーを楽しみたい方はご注意ください。

※ 以下ネタバレ注意

群がる怪物を薙ぎ倒し、ようやくジェニファーと再会したリック。
しかし時すでに遅く、彼女は異形の怪物に作り変えられ、ステージ5のボスとして襲い掛かってくる。時折、人間の姿に戻って助けを求めるジェニファー、その姿に困惑するリック……。

人外の肉体と化した彼女を救う術があるはずもなく、リックを待ち受けていたのは、最愛の人を救うべく振るってきたその拳で、救うべき最愛の人を葬り去らなければならないという、あまりに皮肉で、筆舌に尽くし難い、凄惨な悲劇であった。
決着が付いた後、ジェニファーはリックの腕に抱かれながら別れの言葉を遺し、塵となって消え去ってしまう。悲しみに暮れるリックを挑発するかのような怪物たちの態度に、 彼の怒りは頂点に達する。

復讐の念に駆られたリックは館の最深部へと突き進み、ウェスト館に蔓延る怪物を生み出す魔性の源「マザー」…
そして、協力する振りをして自分を利用してきたヘルマスクが乗り移った異形の怪物「ヘルカオス」を、激しい怒り、深い悲しみ、そして、ありったけの憎悪を込めて叩き潰したのであった。

最終的に全ての怪物を館と共に滅ぼし、ヘルマスクも砕け散り呪いから開放される。
しかし、ジェニファーを喪った事実は変わらない……今までの戦いはいったい何だったのか……。
炎上し崩壊する館を背に呆然と立ち尽くすリックの姿に物悲しいBGMがシンクロされ、悲壮感と寂寥感が漂うエンディングを迎える。

スタッフロールが終わると共に画面がゆっくりと下方へスクロールし、暗転したバックに砕け散ったヘルマスクが散らばる画像が映し出される。と突如、コナゴナになったはずのヘルマスクが元通りに復活。リック(と、それまでリックに感情移入しつつプレイしてきたプレイヤー)を嘲り笑うかのような高笑いを響き渡らせる。そしてENDマークと共にブラックアウト…。

先に進むほど絶望感に押しつぶされる道のりとその果てに待ち受ける結末は、前述の通りの巧みな演出と相まって、リックを実際に操作してきたプレイヤーの手と心に深く刻み込まれる。

ホラー映画ファンの心を掴んだ演出

WindowsPC向け移植版のパッケージ

WindowsPC向け移植版のパッケージ

難易度はかなりの高さですが爽快感もあり手応えある良ゲーだと思います。是非、プレイしてみてほしい一品ですが、残虐な描写が苦手な方にはおすすめできません…。残念。
往年のホラー映画的エッセンスを取り込んだ恐怖演出が前面に押し出されていた前半戦に対して、終盤は恋人を奪われたリックの怒りと憎悪の復讐劇へと転換していき、自らの暴力をもって敵を叩きのめしてゆくというバイオレンス面が強調され、それまでの雰囲気がガラリと一変します。
該当区間で攻撃アイテムが一切出現しない措置や、ステージ6BGMのドスの効いた曲調も、それをより強調しています。
ステージ6のザコキャラは赤子の姿をした怪物の幼生体のみであり、心臓の形状をした館を支える魔力の源であるボスの名称は「マザー」、更にその舞台の名は「胎内洞」。
『胎内洞を進み、群がる怪物の赤子やその母体を、己の五体を使った暴力を振るって完膚なきまでに叩き潰す』というステージ構成と演出の流れが背徳的な趣を醸しており、これがエンディングまでの雰囲気をより一層引き立てる効果的なスパイスとなっています。
本作の演出の特に優れた点として、ファンから賞賛されている部分です。
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