ちなみに、ここに紹介した新聞記事の画像は、筆者のスクラップブックに保存されていた、当時の貴重な資料だ。これらの記事を見て頂くだけでも、当時の熱気を感じて頂けると思う。
今見返すと、ラストに登場する黒い戦闘服姿の仁さんを、公開当時からメインに扱っており、当時から「日本版マッドマックス」として宣伝されていたために、その辺も「マッドマックス」のフォロワーとしての印象を受けやすくしていたのではないだろうか。
若くして逝った名優、山田辰夫よ永遠に!
本作で主人公の仁さんを演じたのが、当時23才の新人俳優だった山田辰夫。惜しくも2009年に53歳の若さで急逝してしまったが、一般的には彼のキャリアの後年にレギュラー出演していたTVドラマ、「はるちゃん」での支配人役としての認知度の方が高いのではないだろうか。
その役柄は多岐に渡り、暴走族からやくざ、時代劇からゴジラ映画、さらには晩年に出演した「おくりびと」や「沈まぬ太陽」のような人間ドラマまで、その演技の幅広さには実に驚かされる。
そんな彼のスクリーンデビュー作が、実はこの「狂い咲きサンダーロード」であり、とにかく「狂犬」のように暴れ周り、己の信念を貫いて決して妥協しようとしない主人公を、デビュー当時から見事に演じている。本作の主人公がこれだけ長い間愛され続けているのも、小柄な体に甲高い声、狂暴でありながらも、どこか可愛らしさを内包した彼のキャラクターがあってこそだと言えるだろう。
自分の行く先に死と破滅が待つと知りながら、それでも相手の喉笛に喰らい付いて相打ちを狙うかのような主人公「仁さん」の原動力は、いったいどこから来るのだろうか?
単なる勝利や、守るべき物のための戦いなどでは無く、自分の存在理由と真の自由のために反逆することを止めない彼の姿!
狭い籠に閉じ込められた自由より、たとえ囲まれた壁にぶち当たろうとも、外へ出て本当の自由を勝ち取ろうとする仁さんの勇姿には、男と産まれたなら絶対に感情移入せずにはいられない。
単なる勝利や、守るべき物のための戦いなどでは無く、自分の存在理由と真の自由のために反逆することを止めない彼の姿!
狭い籠に閉じ込められた自由より、たとえ囲まれた壁にぶち当たろうとも、外へ出て本当の自由を勝ち取ろうとする仁さんの勇姿には、男と産まれたなら絶対に感情移入せずにはいられない。
映画のラスト、サンダーロードの町を舞台に展開する、暴走族+スーパー右翼の連合軍対、仁さん達たった3人の市街戦は本作最大の見せ場だが、ここには「リオブラボー」などの西部劇やマカロニウエスタンと、片腕を奪われてからの復讐という点で、1978年日本公開の「ローリングサンダー」からの影響が強く見られる。
「スターウォーズ」や「サタデーナイト・フィーバー」などが公開された1978年を境に、次第に若者や女性向けに移行しようとする映画界の流れに反逆する様な本作の内容こそ、実は主人公の姿そのものなのではないだろうか?
「スターウォーズ」や「サタデーナイト・フィーバー」などが公開された1978年を境に、次第に若者や女性向けに移行しようとする映画界の流れに反逆する様な本作の内容こそ、実は主人公の姿そのものなのではないだろうか?
まるで、豊かでファッショナブルな80年代へと向かう時代の流れに、あえて逆行するかの様なその姿は、間違いなく70年代の東映実録路線の遺伝子だと言える。
言うなれば、60~70年代に男たちが熱狂したアクション映画の系譜、その灯を守ろうとする熱意と強い意志こそが、本作の主人公「仁さん」の怒りであり原動力だと言えるのではないだろうか。
言うなれば、60~70年代に男たちが熱狂したアクション映画の系譜、その灯を守ろうとする熱意と強い意志こそが、本作の主人公「仁さん」の怒りであり原動力だと言えるのではないだろうか。
初公開から既に36年という年月が経過しようとも、スクリーンの中で吼える山田辰夫の姿は若々しいままであり、我々当時の少年たちに今でも力と勇気を与えてくれる。