加藤登紀子が歌い、知られるようになった「百万本のバラ」には、全く違う歌詞の原曲がありました。
2017年2月9日 更新

加藤登紀子が歌い、知られるようになった「百万本のバラ」には、全く違う歌詞の原曲がありました。

「百万本のバラ」は、ソ連時代に生まれ、日本語にも訳され知られるようになりましたが、それはラトビアで歌われていた「マーラが与えた人生」という歌謡曲を原曲としたものでした。日本でも多くの歌手にカバーされた「百万本のバラ」の背景について振り返ります。

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「百万本のバラ」とは

「百万本のバラ」は、ラトビアの歌謡曲「マーラが与えた人生」を原曲にした、ロシア語の歌謡曲です。モスクワ生まれのアーラ・ブガチョワが歌い、ソ連崩壊まで長く愛されました。
日本では加藤登紀子がロシア語版の訳詩と歌が知られています。

ラトビア版原曲

「マーラが与えた人生」の誕生

ラトビア語での原曲は、1981年に放送局が開催した歌謡コンテストで優勝した「マーラが与えた人生」という歌謡曲でした。作曲はライモンズ・パウルス、作詞はレオンス・ブリアディスで、アイヤ・ククレとリーガ・クレイツベルガの2人が歌いました。
ロシア帝国に支配されていましたが、ソ連時代に一度は独立します。その後またソ連に併合されてしまい、この曲ができたころは、諦めにも似たものがあったようです。
ラトビアの首都リガ

ラトビアの首都リガ

世界一美しい国、バルト海の真珠と言われたラトビアは独立し、EUにも加盟しています。

「マーラが与えた人生」の内容

マーラとは、命や母性を表す女神のことです。「マーラは娘に生を与えたけど、幸せをあげ忘れた」という歌詞の中に、幾度も占領されてきたラトビア国民の哀しみが込められています。
声高に独立を歌っているわけではありませんが、思うように物が言えなかった時代の、抵抗の精神が歌に込められています。

アイヤ・ククレの歌う「マーラが与えた人生」

マーラが与えた人生 (百万本のバラの前身の曲)

ロシア語版

「百万本のバラ」の誕生

ロシア語版は、「マーラが与えた人生」の曲に、ロシアの詩人アンドレイ・ヴォズネンスキーが、グルジアの画家ニコ・ピロスマニのロマンスをもとに作詞し、モスクワ生まれのアーラ・プガチョワが歌い、ソ連崩壊まで長く愛されました。さまざまな民族が関わってできた「百万本のバラ」に、ソ連らしさを感じます。
ロシア語版を歌ったアーラ・プガチョワ

ロシア語版を歌ったアーラ・プガチョワ

現在でも旧ソ連の国々で人気のアーラ・プガチョワは、ソ連崩壊直前に最後のソ連人民芸術家に選ばれました。
ロシア語版は原曲の歌詞とは全く違う内容になっていますが、貧しい画家がすべてを投げ打って、恋した女優のために広場をバラで埋め尽くしたという歌は、多くの人々が愛する歌となりました。

歌のモデルとなった画家ニコ・ピロスマニ

ニコ・ピロスマニ(Niko Pirosmani, 本名ニコ・ピロスマナシヴィリ Niko Pirosmanashvili, グルジア語 ნიკო ფიროსმანაშვილი、1862年 - 1918年4月9日)は19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したグルジアの画家。
さまざまな職業につきながら、どれもうまくいかず、独学で学んだ絵を描くことにしました。一度は中央の画壇に紹介されましたが、モスクワでは理解されず、グルジアを放浪しながら絵を描きました。
貧困のうちに亡くなりますが、死後にグルジアで国民的画家と愛されるようになり、グルジアの紙幣にも肖像が使用されています。
ニコ・ピロスマニ

ニコ・ピロスマニ

実際に大量のバラを贈ったかどうかは不明ですが、マルガリータという女優の恋人がいたことは事実のようです。
ピロスマニの作品の中には、「マルガリータ」をモデルにした作品が何枚かあり、トビリシの国立美術館には「女優マルガリータ」が展示されています。
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思い出を語ろう

     
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  • ウインピー 2020/10/16 14:39

    歌詞は違いますが、加藤登紀子さんより先に「異邦人」の久保田早紀さんが歌っています。
    さらに、加藤登紀子さんはこの曲の企画が持ち込まれた時に久保田早紀さんが歌っているのを知っており、若い子の仕事を奪いたくないと言ってこの時は断っています。その後、久保田早紀さんが引退したのを知り、それならと歌うことにしたと、加藤登紀子さんがこの曲の思い出について新聞のエッセイで記しています。

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