証明しているのは人間だけじゃない!松田優作が名優であった事を証明した森村誠一の代表作「人間の証明」を特集する
2017年1月31日 更新

証明しているのは人間だけじゃない!松田優作が名優であった事を証明した森村誠一の代表作「人間の証明」を特集する

森村誠一の「証明」シリーズの記念すべき第一作。当時は珍しかったアメリカでのロケも大迫力の大サスペンスです!

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小説家・森村誠一の代表作と名高い「人間の証明」を松田優作主演で映画化!

松田優作とハナ肇による異色のコンビ(と言っても松田優作...

松田優作とハナ肇による異色のコンビ(と言っても松田優作は一匹狼のようでしたが・・・)

森村は代表作と見なされる本作について「代表作とは読者が決めるものであるが、自分にとって相当に重要な作品である」と語っている。
数々のヒット作品を持つ森村誠一をしてこう言わしめた作品です。

「人間の証明」のあらすじ

年少の頃の、目の前で父親がアメリカ兵による集団リンチで殺されるという原体験から、棟居(むねすえ)刑事は自分しか信じられない人間になってしまった。
 
 その棟居が本庁に抜擢されてすぐ、黒人の青年・ジョニー=ヘイワードが殺されるという事件が起こる。棟居らの必至の捜査も虚しく、ようとして容疑者が浮かばなかった。そこで、ジョニーの住んでいたアメリカ南部へ捜査の手を伸ばした棟居は、ジョニーが日本へ来たのは、日本人の母親に会うためだったと知る。

 黒人差別が凄まじいディープサウスで極貧生活を送っていたジョニーにとっての唯一の心の支えは、いつの日にか、幼い頃に優しくしてくれた、生き別れになった母に会うことだった。そして、その思いは、日が経つにつれ、生活が苦しくなっていくにつれ、押さえがたいものになった。

 そんなある日、ジョニーは雑誌で、日本でデザイナーとして大成功している母の写真を偶然見た。そこで、ジョニーの父は、息子の願いを叶えようと、自らの命を投げ出して、日本への旅費を作る。父の遺志も汲んで日本へ来たジョニーであったが、ジョニーを待っていたのは、母の非情過ぎる拒絶であった。ジョニーの母・八杉恭子にとって、黒い隠し子は、忌まわしい過去の亡霊であったのだ。

 恭子はジョニーへの殺意を固め、ジョニーをひとけのない公園へ呼び出した。夢にまで見た母との再会を喜ぶジョニーの胸にナイフを突き立てる恭子。いかに邪魔な存在とはいえ、そこは我が子。震える手で刺したナイフは、ほんの少ししか入らなかったのだった。

 しかし、それで母の気持ちを知ったジョニーは、「ママにとって、僕は邪魔な存在なんだね」と、自らの手でナイフを胸の奥深くに刺した。続けざま、「僕はママが安全なところに逃げるまで絶対に死なない。早く逃げるんだ、ママ!」と絶叫する。ジョニーは瀕死の状態にありながら15分も歩き続け、ホテルニュー大倉の前でついに力尽きる。意識が消える寸前のジョニーの目に映ったのは、麦わら帽子(英語でストーハ)に見えたホテルのネオン。ストーハ…。それがジョニーの最後の言葉であった。

 ほどなく棟居は、「ストーハ」が、ジョニーが日本に持ってきた詩集に載っていた言葉だと知る。さらに、詩集に読まれていた高原に、20年ほど前にジョニーら親子3人が来ていたこともわかった。つまり、「ストーハ」は、親子3人の最初で最後の高原旅行の際に、恭子がジョニーに読んで聞かせた、母を想う詩に出て来る言葉だったのだ。

 恭子をジョニー殺しの犯人だと確認した棟居は、恭子に人間としての情が残っていることに賭け、自供させることを決意したのであった…。
戦争。忌まわしい過去。
全てが闇に消えていきそうでしたが、松田優作演じる棟居刑事によって解決の糸口をつかんでいきます。真相に迫っていくその様がまさにハードボイルド!

作品データ

麦わら帽子が飛んでいくシーン。まるで麦わら帽子が泣いて...

麦わら帽子が飛んでいくシーン。まるで麦わら帽子が泣いてるように見えてしまいます・・・。

原作 森村誠一
監督 佐藤純彌
脚本 松山善三
出演 岡田茉莉子、松田優作、ハナ肇、夏八木勲、新見隆、ジョー山中等
公開 1977年(昭和52年)
配給 東映
時間 133分

松田優作演じる「刑事・棟居(むねすえ)弘一郎」とはどのような人物か?

棟居弘一郎は、戦後の混乱の中、小学校教員である父の手一つで育てられた。
母は、早くに父を見捨てて若い将校と駆け落ちし、棟居は顔すら覚えていない。
にもかかわらず、父は愛情をもって棟居を大切に育て、棟居もそんな父に唯一の安らぎを見出していた。

だが、4歳の時、父は棟居の目の前で駐留の米兵によってなぶり殺しにされ、返らぬ人となってしまう。
荒くれの米兵たちに暴行されかかった若い日本女性を救おうとしたのが原因だった。

父が瀕死の重傷を負っても、周りに居た人々は巻き添えを恐れて手一本出さず、警察も力にはなってくれなかった。
そして、暴行から救われた若い女性は、父に礼を言うことも、助けを求めることさえせず、我先にその場から逃げだしてしまう。
上記の事件を原体験として、棟居少年の心に正義とは?人間とは?とゆう大きな疑問が突き刺さります。
成長の過程で、人間に対して葛藤を抱えながら生きてきた棟居は、やがて刑事となる事を選びます。
その後の鬼気迫る捜査方法は軋轢を生み、孤立していきます。
そうして出来上がってしまった他者との距離感は、彼が人間とゆう存在を拒絶し、また観察しているようにも見えました。

実の母に殺された異国の息子

母のいる日本に行ける事になって喜んでいたのもつかの間でした!

母のいる日本に行ける事になって喜んでいたのもつかの間でした!

哀しい時ー!
もの心ついたかつかないころ、父親と母親に連れられて行った霧積は、ジョニーの記憶に焼き付けられた。
おそらく彼の想い出の中で最も貴重で美しいものだったでしょう。

実の母によって胸に刺し込まれたナイフ。
これがはるばる日本へ母をたずねて来て得たものか。
ジョニーはどんなに絶望的なおもいでナイフを受けとめたことだろう。

それを八杉恭子は保身のために虫のように殺してしまったのだ。
自分の腹を痛めた子供を殺したんだ。
私はあの女が憎い。彼女は人間じゃない。母親の仮面を着た獣なんだ。
あの女には、人間の心なんかないんだ
棟居の胸に、父と自分を見捨てた生みの母への憎しみが交錯する。
生まれながらに不幸を背負っていたんですね。
人間を不幸にする人間を許さない棟居。徹底的に犯人・八杉恭子を追い込んでいきます。

追い込み屋 棟居刑事

執拗に追い込みをかけます!怖いです、ぶるぶる {(><;)}

執拗に追い込みをかけます!怖いです、ぶるぶる {(><;)}

「彼女の中に人間の心が残っているかどうか賭けてみましょうか」
「人間を賭ける?」
「八杉恭子にもし人間の心が残っていれば、必ず自供せずにはいられないように追い込んでみるのです」
「どういう風にするつもりだ?」
「麦わら帽子を彼女にぶつけてみたいのです。
私も、幼いころに母親から捨てられたのです。私は、自分を捨てた母が憎い。でもその憎しみの底に、母を信じようとする心があるのです。いや、母を信じたい。八杉恭子の中にも、きっと母親の心があるはずです。私はそこに賭けたいのです。人の子の母ならば、きっと自供するはずです。私は、自分を捨てた母親と対決するような気持ちで、八杉恭子と対決してみたいのです」
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