令和と『万葉集』と浦ちゃんと。
2019年5月13日 更新

令和と『万葉集』と浦ちゃんと。

日本は5月に入り令和元年となりました。令和の語源は日本最古の歌謡集『万葉集』。ということで、今回は万葉集にも登場し現在の私たちの誰もが知っている(であろう)伝説について。

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日本は5月に入り令和元年となりました。令和の語源は日本最古の歌謡集『万葉集』。
ということで、今回は万葉集にも登場し現在の私たちの誰もが知っている(であろう)伝説について。

KDDI株式会社が提供するau(携帯電話ですね)のCMでお馴染みの浦ちゃんこと浦島太郎。乙姫こと乙ちゃんに恋する浦ちゃんを応援したくなる人も多いかもしれません。

この浦島太郎を主人公とする浦島伝説はウィキペディアにも解説があり、そちらを引用すると
浦島太郎という人(あるいは漁師)は、子供達が亀をいじめているところに遭遇。その亀を買いとって保護し、海に放流してやる。2、3日後、亀が現れ、礼として太郎を背に乗せ、海中の竜宮に連れて行く。竜宮では乙姫が太郎を歓待。しばらくして太郎が帰る意思を伝えると、乙姫は「決して蓋を開けてはならない」としつつ玉手箱を渡す。太郎が亀に乗って元の浜に帰ると、太郎が知っている人は誰もいない。太郎が忠告を忘れて玉手箱を開けると、中から白い煙が発生し、太郎は白髪で皺老人の姿に変化する。(尋常小学国語読本、巻3)
via ※ウィキペディアより抜粋
という内容です。
この物語は気が付けば皆知っている・・・そんなお話でもありますが、この話が民間に定着したのは中世というか室町時代以降、『御伽草子』がきっかけと思われます。

定着は良いとして、ではそもそもこの伝説って最初に記されたのは何という書物でいつ頃?などと聞かれると案外「あれ?どこ?いつ?」と返事に困る可能性が大きかったりします。

実は「浦島太郎」という名前は中世に定着したお話に登場した名称でして、それ以前の文献では「浦島子」として登場しております。そう、太郎ではないのです。

浦島子の伝説

浦島子の伝説が出てくる古文献は特に3つ。

『日本書記』(養老4年(720年))と『丹波国風土記』(8世紀中には成立)、そして『万葉集』(7世紀後半から8世紀後半には成立)です。

いずれも8世紀あたりということですから、浦島伝説は相当古くから日本に存在する物語だということです。そして、この3つはそれぞれチョイチョイ内容が異なります。

例えば亀。『日本書紀』では亀が女性に変身し、浦島子さんはこの女性を妻にして蓬莱山に。『丹波国風土記』だと亀を釣り上げたところ美しい女性(亀ヒメ)になり、その亀ヒメさんが浦島子を海中の蓬莱山に連れていきます。ともに竜宮ではなく蓬莱山。さらにいうと万葉集バージョンでは亀は登場しません。海神の娘と出会い、常世(とこよ)に行きます。ここでも竜宮ではないけれども、ポイントは「常世」。これは日本古来の「あの世」を意味する言葉で「何も変わらない世界」というような意味です。ちなみに、亀の恩返しと竜宮城という流れは『御伽草子』あたりからです。

と言う感じで、3つの文献に記される内容の大筋は同じでもチョイチョイ内容は異なりますが、ザザっと自分が持っている本を利用して紹介します。

【日本書記の場合】

「雄略紀」の雄略天皇22年(478年)秋7月の条。
『日本書紀(三)』坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋 校注 岩波書店 1994 (2106072)

via 『日本書紀(三)』坂本太郎・家永三郎・井上光貞・大野晋 校注 岩波書店 1994

【丹波国風土記の場合】

「筒川嶼子」「水江浦嶼子」。
『風土記 下』 中村啓信 監修・訳注 株式会社KADOKAWA 平成27年 (2106075)

via 『風土記 下』 中村啓信 監修・訳注 株式会社KADOKAWA 平成27年
『風土記 下』 中村啓信 監修・訳注 株式会社KADOKAWA 平成27年 (2106074)

via 『風土記 下』 中村啓信 監修・訳注 株式会社KADOKAWA 平成27年
『風土記 下』 中村啓信 監修・訳注 株式会社KADOKAWA 平成27年 (2106073)

via 『風土記 下』 中村啓信 監修・訳注 株式会社KADOKAWA 平成27年

【万葉集の場合】

巻九 「詠水江浦嶋子一首」(高橋虫麻呂 作)。
『万葉集』角川書店編、平成13年 (2106066)

via 『万葉集』角川書店編、平成13年
『万葉集』角川書店編、平成13年 (2106070)

via 『万葉集』角川書店編、平成13年
細かい解説をしていくと常世(日本古来の他界観)とは何か?という話題にまで広がってしまうので、今回は触れないでおきます。しかしです。とにかく、令和の語源になった逸話は『万葉集』巻五の「梅花謌卅二首并序(梅花の歌 三十二首、并せて序)」で、この歌たちが書かれたのは天平2年(730年)ですから、『日本書記』を信じるなら令和より昔から浦ちゃんは存在することになります。

『万葉集』の時代から令和の現代まで。実は私たちはず~っと、浦ちゃんという存在を通して古代に接していたのです。国の歴史の長さを元号とテレビCMから感じ取れる、それが日本です。

最後に。『丹波国風土記』には浦島子は「容姿秀美しく(かたちうるはしく)」=イケメンと書かれておりますので、auの浦ちゃんのカッコよさは、あれで正しいと言えます。うん。単なるコネタです♪
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