佐渡・羽茂地区に伝わる「鬼舞 つぶろさし」のコミカルかつセクシャルな舞。
2019年2月12日 更新

佐渡・羽茂地区に伝わる「鬼舞 つぶろさし」のコミカルかつセクシャルな舞。

本日2月9日、東京は雪が降っております。雪の季節が終われば、春が来ると思いながら、新潟・佐渡にしか伝わっていないセクシャルな鬼をご紹介します。

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本日2月9日、東京は雪が降っております。雪の季節が終われば、春が来ると思いながら、新潟・佐渡にしか伝わっていないセクシャルな鬼をご紹介します。

鬼は目に見えない存在?

そもそも、「鬼」というのは平安時代ごろまでは「目に見えない」存在だったようです。平安中期(10世紀)ごろに編集された日本初の百科事典『和名類聚抄』には「鬼は物に隠れて顕はるることを欲せざる故に俗に呼びて穏と云うなり」と解説されておりますから。

その一方で仏教の影響を受け「目に見える」存在としての立ち位置も確立し、さらに陰陽道の影響で鬼が来る方向とされる北東「鬼門」が十二支で方向を表現した時「丑虎(うしとら)」に当たることから、牛の角と虎の皮パンツを身に着けるデザインになりました。

日本古来の信仰や仏教や陰陽道そして修験道など色々のエッセンスが混ざって今の鬼がいるのですが、そうは言っても地域の祭礼を見ると、古来の鬼(悪い存在ではない)も数多く残っている気がします。

という訳で話を戻して新潟県佐渡島。佐渡を代表する民俗芸能のひとつ「鬼太鼓(おんでこ)」に、その名の通り、鬼が登場します。

佐渡を代表する民俗芸能のひとつ「鬼太鼓」

これは佐渡各地の春祭りや秋祭りなどで行われる芸能です。その年の豊作・豊漁・厄払いのために鬼が家々を廻ります。黒頭青面の雄鬼と白頭赤面の雌鬼とが大太鼓を打ち獅子2頭がからむものが多く、その起源は江戸時代に遡ると言われております。恐ろしい風貌をした、いかにも「鬼」ですが、その役目は厄祓い。佐渡の鬼は佐渡を護っているのです。

そして、佐渡にはもう1つ、鬼が出る芸能が伝わっています。

新潟県無形民俗文化財「佐渡の大神楽舞楽」。小木・羽茂地区に伝わる4つの神楽・舞楽の総称で、いずれも古代の伎楽に性的要素が繰り込まれた文化遺産としても知られているお祭りです。

羽茂地区に伝わる「鬼舞 つぶろさし」

このうち、羽茂地区に伝わるものが「鬼舞 つぶろさし」。現地に伝わる言い伝えでは、16世紀に藤七さんが京都の祇園祭で習得してきたということで、今も6月15日の草苅神社の例祭に奉納されます。
 (2083328)

そう、これも鬼なのです。新潟県公式観光情報サイト『にいがた観光ナビ』には「役の行者が赤鬼(チラシ棒をもつ)、青鬼(金棒を持つ)を従えて大和の青野山を切り開くさまを演じ」る、とあります。

役の行者すなわち役小角は修験道の開祖で、前鬼(夫)と後鬼(妻)の夫婦の鬼が従っていたと言われており、前鬼は陰陽の陽を現す赤鬼の姿、後鬼は陰を現す青鬼の姿だったそうです。日本本来の山岳信仰に仏教や密教や陰陽道などが吸収されて成立した日本独自の宗教「修験道」に鬼が関わっていることが分かるので、これを見るだけで日本の歴史を勉強できた気持ちになったりします。

そして!これが個人的にオススメな要素。

その鬼たちの後に登場する男根様の長い棒をもった「つぶろさし」(男性役)とささらを持った「ささらすり」(女性役)が演じる内容がコミカルかつセクシャルな演技をぜひ。

佐渡の芸能~つぶろさし

「つぶろ」は男性器をさし、「さし」は「さする」の意味…後はご想像にお任せいたします(笑)ですが「ささら」は田の神の芸能「田楽』に必須の竹製の楽器ですので、子孫繁栄に併せて田の実りも祈願していることが垣間見えます。五穀豊穣と子孫繁栄への祈りであり、芸能として面白みを表現している…それをイラストでも表現してみました♪
 
厄を払い、子孫繁栄や豊作を祈る時、鬼と人間が交流している…今回は鬼が身近な佐渡のお話でした。
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