高鳴る【VVVFインバータ】!!孤高の存在 国鉄207系900番台  その界磁チョッパ制御の魅力
2017年3月17日 更新

高鳴る【VVVFインバータ】!!孤高の存在 国鉄207系900番台  その界磁チョッパ制御の魅力

1986年に国鉄で10両1編成だけ試作された国鉄207系900番台。今でこそVVVFは当たり前になり、京急のドレミファインバータなどは一般的にも有名になりましたが、当時はうなる電車の存在はなく、非常に近未来を感じたものです。たった1編成しか制作されず、孤高の存在だが廃車になった今もなおファンの心の中に残る207系900番台についてお話します。

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この音(音楽と呼びたい)の正体は、VVVFという、省エネのために開発された電車の部品です。
国鉄では1984年(昭和59年)から北陸新幹線での本格採用を目標としたVVVFインバータ制御の研究を進め、101系を改造して試験を行いデータを取得した。次の段階として、量産に向けその結果を反映した車両を新規に製造することとなり、投入路線としては常磐緩行線が選定された。
常磐緩行線は帝都高速度交通営団(営団、現・東京地下鉄)千代田線との相互直通運転を行っており、協定を満たす高い加減速性能と、車両使用料の関係から営団車両と同等の省エネルギー性能が要求される路線であり、また同線にはすでに103系1000番台に代わって電機子チョッパ制御を採用した203系が投入されていたことから、性能の比較検討もできるので投入するに適当であるとされ、1986年11月1日国鉄ダイヤ改正での同線の所要車両数の増加に合わせて製造・投入された。製造後は同線および千代田線の営業運転にて運用し、経過を見ることにした。
つまり、実験として造られた「試作車」だったわけです。
その試作車がついこの間まで走っていたということですね。
VVVFインバータ制御(ブイブイブイエフインバータせいぎょ、スリーブイエフインバータせいぎょ)とは、交流電動機を、その特性に合わせて任意の速度、回転数で動作させるために、(静止)インバータを用いて任意の周波数と電圧を発生させる制御方式。これを一般に「インバータ方式」というが、鉄道関係ではそれを特に「VVVFインバータ方式」、あるいは「VVVF方式=可変電圧可変周波数方式」と呼んでいる。VVVFは可変電圧可変周波数を直訳した和製英語(Variable Voltage Variable Frequency)であり、 英語圏ではVFD(variable-frequency drive)と言われる。
簡単に言うと、それまでの電車を走らせるためのモーターは、うまくぴったりとした回転数を得るのが難しく、小さめのモーター出力では電車のスピードが出ないので、実際に必要な出力より大きな出力を出させて、それをわざわざ負荷をかけて弱めて使っているという状態でした。もちろん大きな出力を出すためには、多くの電力を使うため、実際に電車を走らせるのに必要な電気よりも多くの電気を使わざるを得なかったわけです。
そのため、当時から技術革新が急速に進んでいた「半導体」を使って、その電車に最適な回転数を得られるように、交流電気の周波数を制御する技術を開発したのです。
詳しい計算方法の理論は私も分かりませんが、交流電力は、50HZか60HZなので、交流モーターも、常に1秒間に50回転もしくは60回転と決まっているので、走り出す時は力が多く必要なので出力が足りなく、定速走行時は逆にモーターの力が出すぎるため、モーターが出す力をわざわざ抑える必要があったわけです。その周波数を制御することにより、その場に応じた適切な出力を出し、無駄な電力を消費しないようにしようとするわけです。

有名なVVVF-京浜急行

今では当たり前になったこの「VVVF」を、一般の人にまで広く知らしめた電車があります。京浜急行の2100系電車です。1998年に運転を開始しました。
1986年に国鉄207系900番台が制作(試作)されてわずか12年で、技術革新は大いに進み、この京急2100系は、その技術に遊び心を入れたものを採用しました。
制御装置はドイツ・シーメンス社製の VVVFインバータ制御を採用。鉄道ファンの間では「ドレミファインバータ」や「歌う電車」などと呼ばれ、音楽グループ「くるり」も、「赤い電車」という歌を歌っています。

京急の有名なモーター音車両(2100系)が引退

ニュースにもなったほど、一般の人にも知れ渡った名車ですね。

E501系ドレミファ 泉2010.04.05

こちらはJR東日本が1995年に導入した「E501系」です。ってことは京急より前なんですね。
こちらのドレミファインバータのほうが音がよく聞こえます。
しかし、この芸術的なドイツ製のインバータは、より性能のよいもの(故障などの不具合が少ないのかもしれません。)であるのか、こちらも日本(東芝)製のものに現在は取り換えられてしまったようです。

くるり - 赤い電車

くるりの「赤い電車」です。
ボーカルの岸田繁さんは鉄道ファンとしても有名ですね。

【走行音】901系B編成 モハ901-4 大船→大宮 東芝GTO-VVVF '93.11.23

「走ルンです」第1号の車両の走行音です。これもなかなか、ファンにとっては味わいのあるものです。

エピローグー207系900番台の他の系列とは違う魅力とは 

上の動画で、特徴的な音を出して発車する京浜急行2100系、JR東日本E501系、209系の試作車901系をご紹介しましたが、これらの系列にはない魅力が、207系900番台にはあります。
前述しましたように、207系900番台は、たった1編成しか製造(というか試作)されませんでした。なので、そもそも何十本と地下鉄千代田線とJR常磐線(各駅停車・緩行線と言います。)を往復している電車の中で、この207系900番台に出会える確率というのがめちゃくちゃ低いです。
なので、その「レアもの」感がまず第1の魅力です。
そして、後輩たちのVVVFは、何か「洗練」された、おとなしめ、ひかえめ、音階を奏でるなど余裕のある音であるのに対して、一番先にできた207系900番台の音は、何か荒削りの、まるで何かを主張したいような、幅の大きな音を出して、「うなりをあげて進む」ようなイメージがあります。
残念ながら現在は廃車になってしまい、見ることはできませんが、この207系900番台を生で見ることのできた世代であることに感謝したいと思います。
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