アントニオ猪木とカール・ゴッチである
トレーニングパートナーをつとめ
ボディーガードとして海外に同行した
関節技とレスリングを学んだ
ゴッチ教室
それを「極める」にしていったのはカール・ゴッチだった
「当時、新日本プロレス
若手のコーチ役は山本小鉄さんで、
その指導は非合理的というか、
スパーリングやっていて
「これ、どうやってきめるんですか?」と聞くと、
「根性できめろ」と
もちろん非合理的な指導も必要なときもありますが、
それを聞いたときは「この人、大丈夫かな」と思いましたよ
それで入門してしばらくしてゴッチさんがコーチとしてやってきて、
その指導に接して「あ、これが本物だ」と感じたんです」
「最初は、3ヵ月ぐらい滞在してコーチしてくれたのかな
ゴッチさんは日本語もしゃべるんだけどめちゃくちゃな日本語なので
それで話されるとわけがわかんなくなる
ですから基本的には簡単な英語でやりとりしていましたよ
1日にいくつも関節技を教わるんだけど覚えきれなくなる
あるとき、ハッと気がついて
1日に1つだけ教えてもらったことをノートに克明に書き残して
それを確実に覚えていくようにしたんです
オレは頭が悪いから、
ものごとを覚えるのにすごく時間がかかるんですよ
だけど1度覚えるとずっと覚えている
高校時代のことだってちゃんと覚えている
オレは工業高校の機械科で
得意な科目は体育が5で、応用力学、機械工作が5
これはどういうことかというと
運動神経がまあまあいい上に
力学、つまりテコの原理がわかっていて
工作が上手、つまり手先が器用なんですよ
だから関節技を習得するのにピッタリだったんだな
あともう1つ
骨が太い」
「ゴッチさんの教えでいい言葉はいっぱいありますよ
「牛も倒さないと料理もできない」
「短く攻める」
あとゴッチさんが聞かれたらしいですよ
「あなたの決め技はなんですか?」と
ゴッチさんは「コンディションです」と答えたというんだ
コンディションがよくないといくら立派なテクニックを持っていても勝てないということ
あと「後ろから攻めるのはおかまだけ」とか
つまり横から攻めろということだな
まだまだいっぱいいい言葉がありますよ」
ロープワークや技の攻防といった練習はやらなくなっていった
試合当日、
客が会場に入っても構わずずっとスパーをしていた
レスリングでオリンピックに出たことがあるほどのレスラーだった
また足や脚を狙う関節技を「ジャンク・ホールド」と呼び
腕とか首を極める技を得意としていた
藤原は
アマレスをやっていないので立ち技が下手で
相撲のコテ投げや腕を取ってから投げなど数種類しか知らない
また得意技は
足、脚への関節技だった
ゴッチ・ノート
カール・ゴッチに習った技術を
毎晩ノートに書きとめた
「ゴッチさんは、技は知ってるけど教えてはくれないんだよ
だから、ゴッチさんが技を見せてくれて、“ゴッチさんは凄いな”っていうのは分かるんだけど、
“今、どうやったの?”っていう部分は全く覚えてない
だから、分かったのは“ゴッチさんは凄い”ってことだけなんだな
だから、これじゃダメだと思って、一日1つ、2つでも頭に入れてさ
後の技は知らんぷりして、毎晩遅くまで全部ノートに書いてさ
でもってスパーリングやりながら、“どうして極まるんだろ?”って考えて、考えて
全部復習してコツコツやって完成したのは10年後くらいか
誰も教えてくれないからな
教えるってことも分からないし」
「偶然俺の得意なものが高校で力学と体育だったんだな
でも、1つ覚えれば3つ、4つ分かるんだよね
(原理は)全部同じなんだ」