We Are The World 世界を変えたレコーディング
2024年10月19日 更新

We Are The World 世界を変えたレコーディング

ときは来た!今こそ世界が1つになるとき!!1枚のレコードが世界中の人々の心をつなぎ、食糧、薬品、物資となって飢えた子供たちに届けられ、1枚のレコードが人々の魂を揺り動かし、多くの命を救った。

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4時、スティービー・ワンダーが2人のアフリカの女性をスタジオに連れてきて
「エチオピアからの言葉です」
と紹介。
すると1人の女性、クリッシー・キニャンジュイが、アフリカの言葉で
「故郷の人々に代わりまして、あなた方の親切に感謝します。
素晴らしい一夜でありますよう・・・」
とあいさつ。
3年前から1年の半分をでアメリカでベビーシッターとして働き、残りの半分を母国ケニアで暮らしていること。
ケニアはエチオピアの南にあって国境が接しているため、たくさん情報が入ってくること。
エチオピアは長く独裁政権で国に都合の悪いことは報じられないことなどを伝え、
「国境1つ隔てて救われる人とそうでない人がいるなんておかしいと思いました」
といった後、
「それでは英語で・・」
といって英語で同じことを話した。
もう1人の女性、エチオピア人のゼムタ・アレマヨは、英語で
「あなた方の善意あふれる行為に深く感謝します。
サンキュー・ベリー・マッチ」
といった後、涙ぐんだ。
アーティストたちは拍手。
多くのアーティストが涙を流していたが、特にアル・ジャロウは号泣。
そして全員がここにいる理由を再認識した。
「彼女たちのスピーチが歌をすばらしいものにした決定的な原因だと思うよ。
誰のために歌うかハッキリしたときのアーティストほど強いものはない」
(ケン・クレイガン)
女性たちは、スティービー・ワンダーがエチオピア人を探しているという情報を知って面接を受け、
「現場で話をしてほしい」
と頼まれ、この夜、迎えに来たリムジンに乗り、2人は、そこで初めて出会った。
「どうせスターの気まぐれでしょ」
と思っていたが、スタジオでアーティストたちが必死に仕事をする姿を目撃して驚いた。
「彼らなら、あの飢饉の悲惨さをちゃんと伝えてくれると思いました」
Just a moment... (2589524)

「準備OK!
ハッピー・ニュー・イヤー」
の声で「リードボーカル」部分の録音が開始。
前半グループ、後半グループに分かれて行われ、まず前半グループの

ライオネル・リッチー 
スティービー・ワンダー 
ポール・サイモン
ケニー・ロジャース
ジェイムズ・イングラム 
ティナ・ターナー
ビリー・ジョエル
ダイアナ・ロス
ディオンヌ・ワーウィック 
ウィリー・ネルソン 
アル・ジャロウ
ブルース・スプリングスティーン
ケニー・ロギンス 
スティーヴ・ペリー 
ダリル・ホール(「ダリル・ホール&ジョン・オーツ」)

がスタンバイ。

マイケル・ジャクソン
ヒューイ・ルイス 
シンディ・ローパー 
キム・カーンズ 
ボブ・ディラン 

はスタジオ隅の床に座って見学。 
Just a moment... (2589525)


コーラス部分の録音同様、レコーディングパートごとに録られ、何度もやり直しが行われた。
クインシー・ジョーンズは、自分が立つ指揮台を中心にU字型に配列されたマイクをみて
「こんなやり方は、ガソリンをまきながら地獄を走り抜けるみたいなもんだったよ。
誰かのおしゃべりとか外の雑音とか、笑い声だったり床がきしむ音ですら、すべてを台無しにしかねないんだからね」
と思っていた。
ライオネル・リッチーが
「自分の番が来たら前に出てくてください。
ここで(マイクの前で)ソロを歌う。
すると次の人が割り込んでくる。
デュエットのときは、この位置で(マイクから少し離れた位置で)
後ろに下がって歌ったら誰が歌っているのかわからないから、とにかく自分の番が来たら思い切り前に出るんだ。
目印よりもずっと前に出て、マイクに寄るんだ」
と説明。

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音楽が流れ、1人目のライオネル・リッチーが、
「There comes a time(時が来た)・・・」
と歌ったとき、クインシー・ジョーンズは大きく手を叩いてストップ。
「ちょっと待て!
雑音を入れるな!
録音中だぞ!!」
とスタッフに激怒。
一気に緊迫した空気にスティービー・ワンダーは笑顔で
「クインシー、怒るなって」
ライオネル・リッチーも表情を崩して、その肩に寄りかかった。
そうしている間にTAKE2が始まり、スティービー・ワンダーはマイクに笑い声入らないように口を押えた。
0:00、
シンセサイザーによるイントロの音楽が流れる。
0:26 
ライオネル・リッチーが先陣を切る。
「There comes a time when we heed a certain call
(時が来た、私たちがその声に耳を傾ける時が)」
0:31 
スティービー・ワンダーがマイクに近づき、ライオネル・リッチーと2人で
「When the world must come together as one
(世界がひとつにならなければいけない時が)」
とコーラス。
そしてソロで
「There are people dying
(命を落としている人たちがいる」

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0:41
160㎝のポール・サイモンが引継ぎ、
「Oh and it's time to lend a hand to life
(そして今こそ命に手を貸す時だ)」
183㎝、白地に青の「USA for Africa」のトレーナーを着たケニー・ロジャースが現れ、2人で
「The greatest gift of all
(何よりも偉大な授かりものに)」
ライオネル・リッチーが手を伸ばしてキューを出すとケニー・ロジャースのソロが開始、
「We can't go on pretending day by day
(誤魔化しながら日々を過ごすことはできない)」
0:59、
ジェームス・イングラムが
「That someone, somewhere will soon make a change
(誰かがどこかでもうすぐ変化を起こしてくれるのだと)」
最初、ジェームス・イングラムは緊張で声が出ず、音も外し、歌い終わると笑い声を殺してケニー・ロジャースに抱きついた。
1:06、
オスライオンのような髪形をしたティナ・ターナーが迫力のある声で、
「We are all a part of God's great big family
(私たちはみな神の素晴らしい大きな家族の一員)」
1:13、
ヒゲ面のビリー・ジョエルが、
「And the truth, you know
(そして真実はわかってるだろう)」
ティナ・ターナー&ビリー・ジョエルで
「Love is all we need
(私たちに必要なのは愛だけ)」
1:19、
すでにレコーディングされたマイケル・ジャクソンの声が流れ、
「We are the world, we are the children
(私たちは世界、私たちは(神の)子供)
We are the ones who make a brighter day
(私たちこそがより明るい日をつくる者たち)
So let's start giving
(だから与えることを始めよう)」
1:32、
マイケル・ジャクソンとのつき合いは16年以上というダイアナ・ロスが、
「There's a choice we're making
(私たちがこれからする選択がある)
We're saving our own lives
(私たちは自分たち自身の命を救おうとしている)」
1:37、
再びすでにレコーディングされたマイケル・ジャクソンの声で
「It's true we'll make a better day
(その通り、私たちがより良い日をつくる
Just you and me
(君と私こそが)」
1:48、
ディオンヌ・ワーウィックが
「Send them your heart
(彼らに気持ちを送ろう)
so they'll know that someone cares
(そうすれば誰かが気にかけていることを彼らも知ることができる)」
1:55、
ディオンヌ・ワーウィック&ダン・エクロイドで
「And their lives will be stronger and free
(そうすれば彼らの命はより強く自由になる)」
2:00、
ダン・エクロイドがソロで
「As God has shown us by turning stone to bread」
(神が石をパンに変えて私たちに示してくれたように)
2:07、
USA for Africaのスウェットと黒い革ジャンを着たアル・ジャロウが
「So we all must lend a helping hand
(だから私たちは支援の手を貸さなければならない)」
2:12、
ブルース・スプリングスティーンが目をつむりながら
「We are the world, we are the children
(私たちは世界、私たちは(神の)子供)」
2:19、
ケニー・ロギンスが
「We are the ones who make a brighter day
(私たちこそが、より明るい日をつくる者たち)
So let's start giving
(だから与えることを始めよう)」
2:26、
スティーブ・ペリーが
「There's a choice we're making
(私たちがこれからする選択がある)
We're saving our own lives
(私たちは自分たち自身の命を救おうとしている)」
2:33、
ダリル・ホールが
「It's true we'll make a better day
(その通り、私たちがより良い日をつくる)
Just you and me
(君と私こそが)」
Just a moment... (2589531)

前半グループの録音は数TAKEで終了。
コントロールルームからOKが出ると、歓声と拍手が起こり、ティナ・ターナーは
「フィッシュバーガー!フィッシュバーガーが食べたい」
とおどけた。
スタジオの床に座って待機していた後半グループ、

マイケル・ジャクソン
ヒューイ・ルイス 
シンディ・ローパー 
キム・カーンズ 

が立ち上がり、キム・カーンズは、感心した様子で
「すごいリレーコーラスね!」
といいながら位置についた。
2:40、
まずマイケル・ジャクソンが、
「When you're down and out, there seems no hope at all
(君が打ちひしがれた時、希望など全くないように思えるだろう)」
と歌った後、ヒューイルイスが気合を入れて口を開けた瞬間、音楽がストップ。
気合を入れてスタンバイしていたヒューイ・ルイスは、持っていた楽譜を落としてよろけ、シンディ・ローパーは
「真打登場だからもったいぶってるのよ」
といってなぐさめた。
2:46、
ヒューイ・ルイスが拳を握りながら、
「But if you just believe, there's no way we can fall
(でも君がひたすらに強い気持ちを持てば、私たちが負けることはあり得ない)」
2:51、
「WaWaWa」
シンディ・ローパーが体でリズムをとりながらマイクの前に躍り出て
「Let us realize, oh, that a change can only come
(みんな理解しよう、変化が訪れるのは)」
2:59、
キム・カーンズがハスキーボイスで
「When we ・・・・」
とワンフレーズを絞り出し、
3:02、
ヒューイ・ルイス&キム・カーンズで
「Stand together as one
(私たちがひとつに団結した時だけなのだと)」
シンディ・ローパーは、
「アイヤイヤヤイヤ}
と魂の叫び。
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  • 2024/10/22 19:49

    かつてプリンスの不参加は「渋滞に巻き込まれて間に合わなかった」からと言われていて、その後は何らかのトラブルで事情聴取を受けていたとも聞いた。
    結局のところ、真実は決して分からないままになった。
    もしかしたら美談の裏に思惑を感じていたのかもね、シーラEの話が表に出てなかったような。

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