イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」は、まるでミステリー小説の中にいるような怖さが…
2022年10月30日 更新

イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」は、まるでミステリー小説の中にいるような怖さが…

アメリカンロック史に残る不朽の名曲として知られる「ホテル・カリフォルニア」。難解な歌詞から様々な判断がされてきた楽曲でもあり、今再びその重い扉を開いてみることにしました。果たしてそこは楽園なのか、はたまた禁断の場所か。それとも…。

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イーグルスってどんなアーティスト?

イーグルス - Wikipedia (2466415)

イーグルスは、1971年にデビューしたアメリカのロック・バンドです。結成のきっかけは、リンダ・ロンシュタットのバックバンド。その後一本立ちをして、アメリカ西海岸を拠点に活動を開始。世界的人気を誇るバンドに成長したイーグルスは、トータルセールス2億枚を超えるまでに。主な代表曲は、「テイク・イット・イージー」・「ならず者」・「呪われた夜」・「ホテル・カリフォルニア」など。

イーグルスはたくさんのヒット曲を持つグループですが、特に注目を浴びたのが1977年に発表された「Hotel California」でしょう。ドン・ヘンリーの少しかすれた細い声と、ツインギターの美しい旋律がこの曲を際立たせています。一度引き込まれたら、中々抜け出すことのできない、魅惑的な楽曲ですね。

「ホテル・カリフォルニア」は楽園なのか

 (2466421)

この曲の歌詞をざっと読んで簡単に訳してみると、ジャンキーたちが集まる退廃的なホテルでの出来事をさらっと歌っているようなイメージになってしまいます。しかしこれでは、あまりにも想像力がなさ過ぎて名曲とは言えなくなってしまいます。これだけ有名な曲になりますと、様々な憶測や解釈が出てきているんですよね。どれが正しいとか間違っているなんて言える訳もなく、自分なりの解釈で納得しておくことにしましょうか。
Welcome to the Hotel California、Such a lovely place、Such a lovely face
ようこそホテル・カリフォルニアへ、とても素敵な場所、とても素敵な外観
果たして、「ホテル・カリフォルニア」は楽園なのでしょうか。

コリタスの温かい香り

Eagles - Hotel California (Lossless Audio)

コリタスの香りたつカリフォルニアの砂漠にあるハイウェイ。長時間の運転に疲れた主人公は、休憩のために立ち寄った小さなホテルに幾日か滞在。快適な日々を送ったのでした。これではじゃストーリーなんてあったもんじゃないですね。

実は最初に出てくる「コリタス」とは、サボテンの一種ではあるのですが、メキシコでマリファナの隠語としても使われているんですよ。爽やかな砂漠の雰囲気が、何やら怪しい方向に進んでいく予感がしますね。

「ホテル・カリフォルニア」に立ち寄った主人公は、堕落して快楽主義に溺れる滞在客たちを見て嫌気が差してきます。そこで以前の自分に戻るためホテルを去ろうとしたのですが、離れたくても離れられない…という、ちょっと怖めのミニストーリーになっています。

spirit(スピリット)は伝統的な文化や精神の象徴

 (2466422)

So I called up the Captain、“Please bring me my wine"、He said, “We haven’t had
That spirit here since 1969"
俺はマスターを呼んだ、「ワインを頼む」、するとマスターは言ったんだ「1969年から、そういうお酒は置いていないんです」と。

オーダーしたワインは、厳しい製造工程を厳守して育てられ、大切に保管され熟成したとされることから、伝統的な文化や精神の象徴とされています。1969年にそれが無くなった…。更に、spiritという単語はお酒という意味なのですが、精神という意味も含まれています。加えて一般的にワインはspiritとは言いません。spiritとは蒸留酒を指していて、これにも何か深い意味があるのでしょうか。

1969年といえば、アメリカはベトナム戦争にのめり込み、国内も反戦・ヒッピー・フリーセックスなどが若者に蔓延していた時代。映像などの技術が進んで、企業がそれまで歌や絵画といったクリエイティブで芸術的な分野にまで手を入れ、全てを
宣伝に利用しだした時代でもありますね。

2007年9月11日の英デイリー・メール紙にドン・ヘンリーが受けたインタビューの中で、ワインはスピリットではないのではと聞かれ、ワインと蒸留酒の違いを知ってる程度には、十分酒をたしなんでいるよと皮肉から始まります。多くの人がそうなんだけど、完全に歌詞の解釈を間違っていると言った後、比喩を見落としているんだとも。歌詞のその部分は、酒とは全く関係なく、社会政治的なメッセージだと述べているんです。

となると、なんとなくドン・ヘンリーの意思がわかってきますね。退廃的な若者思想、戦争に夢中になってる政府、そして設けることしか考えない企業など。このままではアメリカは立ち直れなくなるという意味が、この短い歌詞に込められているのでしょうか。

決して立ち去れない

Eagles - Hotel California (Lyrics)

歌詞の最後は、こんな環境に居続けてしまうと自分がダメになると気づいた主人公が、出口を探してホテルを彷徨っている際に、警備員に止められこう言われるのです。
We are programmed to receive. You can checkout any time you like, but you can never leave!
俺たちはお客を受け入れるように指示されているんだ。好きな時いつでもチェックアウトはできるが、絶対に立ち去ることはできないんだぜ。

という言い切りの言葉で終わり、直後にフェイドアウトになっていきます。音楽的には、聴き手に余韻を与える素晴らしい構成になっていますね。しかし、最後に絶対にホテルからは出ることがでかいと言いながら、ニヤリと笑う警備員の顔が浮かんできて、何やら悪魔の顔と重なる感じです。また、checkoutという単語は、「自殺する」という意味での婉曲表現として、北米口語で用いられているそうです。

ドン・ヘンリーの見解

ドン・ヘンリー - Wikipedia (2466425)

2007年9月11日、英デイリー・メール紙のインタビューにて、更にドン・ヘンリーは話しています。様々なこの曲の歌詞の拡大解釈については、とても驚いているそうです。歌詞の内容は、アメリカ文化の度を越した不品行とドン・ヘンリーらメンバーの知合いだった女の子達について書かれたものだったそうです。そして芸術と商業主義との道を外した関係についてでもあったのだと、ドン・ヘンリーは述べています。
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