要するに、もうこの辺から段々ガンダム自体は、「アニメ設定に忠実に」立体化しても限界があるからという理由で、「その時代その時代の、フォーカスの解像度で、何度でも変化したガンダムが解釈可能だ」へと、“翔んで”みせたのだ。
そこでは「これはRX-78ガンダムじゃないけど、ガンダムと同じ時代に活躍していた、アニメの『機動戦士ガンダム』には登場しない別のガンダム」という設定の、『機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争』(1989年)のガンダムNT-1アレックスなどの存在も影響していて、やがてその流れはザクやドムのリファインにも繋がっていくことになる。その上で、『ポケットの中の戦争』ではあくまで当初、モビルスーツデザインを担当した出渕裕氏は上で解説したように「モビルスーツの画の解像度を上げた」だけだったというスタンスであったが、まだ1989年というタイミングでは、それはプラモデルビジネス的にバリューがなかったために、どれもこれも元のザクやゲルググとは別の機種ということにされてしまい、この辺りから一気に、一年戦争におけるモビルスーツのバリエーション概念が、根底から覆されたまま増殖するようになった。
そこでは「これはRX-78ガンダムじゃないけど、ガンダムと同じ時代に活躍していた、アニメの『機動戦士ガンダム』には登場しない別のガンダム」という設定の、『機動戦士ガンダム 0080 ポケットの中の戦争』(1989年)のガンダムNT-1アレックスなどの存在も影響していて、やがてその流れはザクやドムのリファインにも繋がっていくことになる。その上で、『ポケットの中の戦争』ではあくまで当初、モビルスーツデザインを担当した出渕裕氏は上で解説したように「モビルスーツの画の解像度を上げた」だけだったというスタンスであったが、まだ1989年というタイミングでは、それはプラモデルビジネス的にバリューがなかったために、どれもこれも元のザクやゲルググとは別の機種ということにされてしまい、この辺りから一気に、一年戦争におけるモビルスーツのバリエーション概念が、根底から覆されたまま増殖するようになった。
それを、元の出渕氏の発想にあった「解像度を上げただけ」へ戻したのが、1990年の1/144 HGガンダムであり、また1995年から始まった、「1/100スケールで、最高級(マスターなグレード)のモビルスーツプラモデルを、高解像度リファインデザインで商品化する」というキャッチフレーズのマスターグレード(MG)でもあり、ここまで書いてきたガンダムのデザインの大きな変換は、概ねMGガンダムで固まっていて現在に至っている。
その後は、時代ごとのメカデザインのトレンドを取り入れ直したり、プラモデルの素材やテクノロジーの進歩を取り入れて新たにリファインしたりする、いわゆる「Ver2.0」や「REVIVE」「RG」「RE」等の商売発想が認められるようになり、その発想を1/144に凝縮して「過去に発売したモビルスーツを、アニメデザインを尊重しつつ、今の解釈とデザインでリファインする」HGUCが開始された1999年とほぼ同じタイミングで、MGガンダムも2000年には、当初のMGガンダムの腕以外は新規造形のMGガンダムVer1.5が発売されて、その後もバージョンアップを重ねていくことになる。
そこで、やり過ぎのMGに対するリバウンドのようなものがHGUCの立ち上げに込められているという話は既にしたのだが、ことガンダムとザクに関しては、何度出し直しても確実に売れる、捌けるという目論見があり、その上で近年は安彦良和氏による(アニメ版メカデザインはカトキハジメ氏)『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』がアリバイコンテンツとなって、ことガンダムとザクに関しては、さらにバリエーション(機体の、ではなく、商品の、である)が増殖し続けている。
HGUC 021版ガンダムの話に戻せば、このキットを「発売された2001年の視点」で論ずるか、「2017年今現在から見た時の視点」で論ずるかで、位置づけが大きく異なってくるのである。
まず「発売された2001年の視点」で語るのであれば、1990年版HGガンダムが、デザインをリファインしながらも、ビジョンに技術が追い付いていなかった部分を反省し、一方でMGガンダムが、好き嫌いが別れるにせよあまりにもカトキデザイン風ガンダムとして独立した存在になってしまったため(それでもまだカトキ成分が足りないというガンプラファンの声も強く、やがてMGガンダムVe.Kaが発売されるが)、そこまでの過程で考案された、腰アーマーの分割や関節のむき出し構造など、良いと思われるところは残しつつ、一度元のアニメのデザインに極力戻し近付けながらも、可動範囲やディティールを高次元で確保しつつ、適度な価格と製作難易度でガンダムを1/144で売りなおそうというコンセプトが、HGUC版ガンダムにはあった。
そのバランス調整を最高の技術力で舵取りするために、ガンダムは栄光あるシリーズの初代主役モビルスーツであるにもかかわらず、HGUCがその技術とノウハウを蓄積しきったと判断できるまで、2年の歳月と20機のモビルスーツの発売展開の期間を我慢し続けたのだ。
一方、このHGUC 021版を「現在の視点」で受け止めるのであれば、この発売時期においては、その志とコンセプトは見事に両立出来ていて、今の目で見ても特に問題はない。
しかし、HGUC版ガンダムも、その後の15年で続々登場した、HGUC Gアーマー付属版、30周年記念版HG Ver.G30th、リアルグレード版、REVIVE版、ORIGIN版といった「1/144のRX-78-2ガンダム」商品の多さ(プラモデルだけでないなら、完成品アクションフィギュアの「ROBOT魂」でも数種類、アニメ版そのものの究極を狙った完成品玩具フィギュア『可動戦士ガンダム』などなど)の階層の中では、このHGUC ガンダムは凡庸な位置づけに堕ちてきてしまった感は否めない。
ただし、技術面ではどんどん進歩を遂げているガンプラではあるが、一方で、デザインリファインによるアシストを請けないと、可動範囲やギミックには限界が出るのも真理であり、特に初代HGガンダムで鮮烈にデビューした腰アーマーのプレート分割という斬新な概念は、ザクやガンキャノン等ほとんどのモビルスーツデザインリファインに受け継がれると共に、その他の解釈の例外を生むことは現状ではできていない。