2019年2月7日 更新
『転校生』日本映画では特異な地位を占める大林宣彦監督作品
この日本映画『転校生』は大林宣彦監督の尾道三部作と呼ばれる中の一つです。この作品は、少年少女向けのいわゆるジュヴナイル・ファンタジーと呼ばれるものです。大林宣彦監督は日本映画のなかでこのジャンルを確立し、尾道三部作の他の2作品『さびしんぼう』『時をかける少女』の他にも『ふたり』などがあります。男と女のカラダが入れ替わるという設定が当時思春期の若者達の好奇心を惹きつけたものです。
斉藤千恵/入江若葉
一美の母。
娘の中身が入れ替わってるとは知らず、言動が男の子みたいになったので作中では「もっと女の子らしくしなさい!!」などとよく注意している。直子とは対照的に都会的な主婦。焼きおにぎりが得意らしく、作中では一美から「遠足とかでよく作ってくれたの」と言われており何度か作っている。
大野光子/志穂美悦子
一美と一夫のクラス担任。数学担当。快活で朗らか、さばさばした性格の女性。生徒たちが取っ組み合いのケンカをしていると身を挺して仲裁するなど度胸がある。
ストーリー
挨拶をする転校生の斉藤一美
ある日、一夫のクラスに「斉藤一美」という名の、ちょっとキュートな少女が転校して来た。
その日の帰り道のことだった、一夫はつきまとってくる一美をめがけて空き缶を蹴飛ばし、それに驚いた一美は階段から落ちそうになった。
一夫は落ちそうになっている一美を押さえようと抱き付くがそのまま転げ落ちてしまった…
御袖天満宮
しばらく経って、二人は意識を取り戻し、それぞれ家に帰ろうとするとお互いの身体が入れ替わっていることに気づき愕然となった。
一美は男の子の体になってしまったことで泣き出したが、ひとまずお互いの家族、友人たちの中で生活を始めた。
2人は徐々に惹かれ合っていった…
やがて一夫が父の転勤の都合で横浜に引っ越すことになったが、未だに元の体に戻っていない2人は絶望的になり、一美は自殺を考えるほど追い込まれてしまった。
そして物語はエンディングへ
動き出すトラックの助手席から追ってくる一美を8ミリで撮る一夫。
実はお蔵入りになっていたかもしれない作品
この映画を製作した大林宣彦監督はもともとCMディレクターとして活躍していて、映画界へ転身してきました。今回の『転校生』は映画監督として6作品目でしたが、キャリアとしてはさほどの実績がないとの評価から一度は製作が決まったものの、製作費を出資してくれることになっていたサンリオが「男女の身体が入れ替わる」というアイディアをいかがわしいとして、撮影2週間前に出資を取りやめると言いだし一度は映画製作自体が頓挫しかけました。幸い新しい出資者が現れ、無事に製作することができ、こうしてこの日本映画『転校生』が完成したのです。
当時は歓迎されなかった尾道ロケ
「さびしんぼう」や「時をかける少女」等でその後も続く尾道ロケ作品ですが、実はこの転校生が完成した当初は、尾道ロケの評判はあまり良くなかったのです。
本作品に出てくるのは「観光名所」や「近代的に開発された町並み」などではなく、「近所の民家」やら「ひび割れた瓦屋根」「今にも崩れ落ちそうな土壁」「路地裏」など、尾道のそのままの姿。そのため尾道における完成披露の試写会では終わった時に拍手も起きなかった。日本中が絵葉書のような観光地になっていった時代、「ゴミ箱のような尾道の恥部が映っている。これではとても観光客誘致にはとてもならん。上映中止に出来ないか」「金が有れば直ぐにでも直したい、恥ずかしい場所ばかり映し出されたのでは、アンノン族など見向きもせんわ!」などと、きわめて評判が悪かった
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