【後編】『昭和の中坊』誕生から次世代へ~中坊生活、昭和から見るか平成から見るか、男性から見るか女性から見るか~
2018年5月1日 更新

【後編】『昭和の中坊』誕生から次世代へ~中坊生活、昭和から見るか平成から見るか、男性から見るか女性から見るか~

時間の流れが早い。 子供のころはもっとのんびりしていた。馬鹿なことを考える余裕があったと、通勤時間に思うあなた。“あの時代”を懐かしむ漫画から、今回、吉本浩二先生の名作『昭和の中坊』(原作・末田雄一郎)に着目する。また、昭和の漫画界の名物編集長を追う『ルーザーズ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~』もご紹介。吉本先生の漫画への愛情を平成の世に引き継いだ新鋭、地球のお魚ぽんちゃん先生の人となりにも触れたい。さあ、夕焼けの彼方へ旅立とう。

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吉本
ちょっと古めの映画が好きでして。

ぽん
それから駅に置いてある有害図書を捨てるポストからエロ本を盗もうとする話(第15話「ポストと嘘と有害図書」)のラストシーンがとても好きです。駅員さんに見つかっちゃって。ニゴシは「漫画が捨ててあるって聞いたんで、拾いに来たんです!」と嘘をついて逃れようとするんですよね。ところが駅員さんが「大人」で、ニゴシにいらない漫画雑誌をあげるんです。その中には大人の漫画雑誌も混ざっていて、ニゴシは大人漫画の世界を知るんです。その姿が、『昭和の中坊』を知り、「漫画アクション」を知り、世界が広がった当時の私の姿と被るんです。

大学生当時の記憶が甦る、ぽんちゃん先生思い出のシーン

大学生当時の記憶が甦る、ぽんちゃん先生思い出のシーン

吉本
そうでしたか……。そんな風に読んでいただけるなんて、うまく言えないのですが、とても嬉しいです。

尊敬する吉本先生への緊張も解けてきて、ここからエンジン...

尊敬する吉本先生への緊張も解けてきて、ここからエンジン全開になるぽんちゃん先生

ぽんちゃん担当
(急に話しに入ってきて)、ぽんちゃん、「今日は長年知りたかったことをいっぱい聞くぞ~」って張り切ってたじゃないですか。どんどん質問しましょうよ!

ぽん
あ、はい、まずは29話「丸木正一郎屋上事件」の扉のイラストなんですが、なんで丸木が胴上げされているイラストなんですか?

問題の扉イラスト

問題の扉イラスト

吉本
あ、はい、これは丸木が初めてヒロインの岩渕と話しをして、男泣きする回ですね。

編集長
「漫画アクション」掲載時には、「丸木、おめでとう! とにかくおめでとう! 何がめでたいのかは、お話を読んでね」というキャッチが入っていたんですね。

ぽん
あ、そうだったんですね……。あとそれから……(この後ぽんちゃん先生からたくさん質問がありましたが、マニアックすぎるので割愛させて頂きます)

吉本
(ぽんちゃんの熱量に圧倒されて)……すごい読み込んでいただいてありがとうございます。すみません、僕も忘れてしまったことがあったりして、アタフタしてしまって……。こんなに『昭和の中坊』について話す機会はもう二度と無いんじゃないでしょうか……。

ぽん
(感動している吉本先生を無視して完全に自分のペースになり)最後にもう一つだけいいですか? ギター弾きの加勢ヨーと変わり者のまたろうがバンドを組む回(第47話「シンガー・ソング・中坊」)なんですが、ラストシーンが頭に焼き付いていて……。またろうの歌う形相が異様で……。これは絶対何か意味があるコマなんじゃないかと思ってまして。このコマに込めた思いを教えてください。

このコマから何らかのメッセージをぽんちゃん先生は受け止めた

このコマから何らかのメッセージをぽんちゃん先生は受け止めた

吉本
……これは、ええと……。

編集長
覚えてますか?(笑)

吉本
(編集長の顔を見ながらやや不安そうに)……『オールド・ボーイ』……ですよね?

編集長
そうです、正解です。これも吉本さんのアイデアですよ(笑)

吉本
(ホッとしながら)当時平田さんが担当していた『オールド・ボーイ』という作品が韓国で映画化されて、話題になっていたんです。

編集長
≪敵≫の柿沼が少年時代に一生懸命歌を歌うシーンが物語の核心なんですが、そこから持ってきました。(同席していた編集部員に)『オールド・ボーイ』の8巻持ってきて。

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