世界名作劇場の主題歌の魅力
2017年3月15日 更新

世界名作劇場の主題歌の魅力

『赤毛のアン』『あらいぐまラスカル』の主題歌の歌詞から考えてみた作品の魅力を引き出す主題歌の魅力を考えてみました。

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岸田衿子先生が作詞をされたのは、『赤毛のアン』だけではありませんでした。

他に『アルプスの少女ハイジ』の主題歌『おしえて』終わりの歌『まっててごらん』、『フランダースの犬』の主題歌『よあけのみち』終わりの歌『どこまでもあるこうね』、『あらいぐまラスカル』の主題歌『ロックリバーへ』終わりの歌『おいでラスカル』も作詞をされました。
どれも歌がすぐに浮かび、作品の内容が思い浮かぶことの出来る歌ばかりです。

さて、子どもの頃に『あらいぐまラスカル』の主題歌の最初の出だしを歌おうとして苦労された経験はありませんか?英語を習った後ならば歌詞の意味が分かっても、耳で聞くと少し早くて聞き取りにくいってことはなかったでしょうか?私はそうでした。
Hidy Hidy litle Rascal 
Like the wind, O little Rascal
Hidy Hidy my friend Rascal 
Come with me, O little Rascal
Hidy! Here Rascal
via ロックリバーへ/作詞 岸田衿子
「Like the wind」には「風のように速く」という意味があり、「Come with me」には「僕についてきて、一緒に並んでおいで」という意味があります。
つまり最初の出だしは主人公のスターリングが小さいラスカルに向かって「僕のところに早く(風のように)来て、一緒に並んでいこうよ、ここだよ、ラスカル」って、語りかけていると受け取れます。
『あらいぐまラスカル』の物語で親のアライグマを殺された赤ちゃんアライグマ、ラスカルを育てた話『はるかなるわがラスカル』を原作にしていて、作者スターリング先生の少年時代の実話です。
スターリング先生はアメリカ合衆国の中西部で生まれました。
20世紀初頭の話です。
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岸田衿子先生が、歌の出だしで使った「hidy」の言葉は「howdy」「hello」と同じ意味で、アメリカ中西部の方言だそうです。
作者であり、主人公のスターリング先生がアメリカ中西部が故郷であることから、あえて方言の「hidy」の言葉を最初の呼びかけになる歌詞に選んだのかもしれません。
それを頭に入れて、スターリング先生が中西部の出身だと思うと、より最初の英語の部分のラスカルへの呼びかけが、スターリングのものとして受けとめることが出来ると思います。
その後に木の穴から出てきて、スターリングに運ばれ、スターリングが漕ぐ自転車の籠に入って、スターリングと走り、一緒に遊ぶラスカルのオープニング映像を見ていると、スターリングとラスカルが築いていく友情の大きさが伝わってきます。

作品の主人公に思いを重ねて、見ている子ども達に語りかけ、あるいは作品の『アルプスの少女ハイジ』だったら、おじいさん、『フランダースの犬』だったら、パトラッシュ、『あらいぐまラスカル』だったら、ラスカル、『赤毛のアン』だったら、想定だけど視聴者の子ども達への作品の世界を大事にした作詞を入りやすく分かりやすい言葉にのせて、物語性を持たせ、歌を歌うだけで作品の世界が目の前に広がる作詞をされた岸田衿子先生の豊かな表現と、しっかりとした作品への知識の深さを感じて、改めて、その素晴らしさを感じてしまいます。
ちなみに岸田衿子先生は『世界名作劇場』の歌の他にTBS系列で1978年~1979年に放送されたアニメ『まんがこども文庫』(『赤い鳥』で発表された童話のアニメ化)の主題歌『よんでいる』を作詞されています。
また『まんがこども文庫』は、妹の岸田今日子さんが一人で何人もの登場人物を演じていました。姉妹でこの作品に岸田衿子先生は主題歌の作詞で、妹の岸田今日子さんは声優で参加されたのです。

主題歌を『よんでる』を歌ったのは、ミッチことアニメ歌手声優でお馴染みの堀江美都子さん。
堀江美都子さんは『世界名作劇場』では、1986年の『愛少女ポリアンナ物語』で主役を演じていました。
『よんでる』は2014年に島田歌穂さんと江草啓太と彼のグループがカバーされていて作曲された宇野誠一郎の作曲作品を集めた『宇野誠一郎ソングブック1』に収録されています。

また、作詞は岸田衿子先生ではありませんが、宇野誠一郎先生は、『世界名作劇場』の前身にあたる『カルピスまんが劇場』で放送された1969年の『ムーミン』の主題歌『ねえ!ムーミン』、1971年『アンデルセン物語』の終わりの歌『キャンティのうた』1973年『山ねずみロッキーチャック』の主題歌『緑の陽だまり』の作曲もされていて、同じ『宇野誠一郎ソングブック1』に収録されています。
宇野誠一郎ソングブックI

宇野誠一郎ソングブックI

長い歴史を持っていた『世界名作劇場』名称の変遷もありましたが、今でも思い出せる歌と共に、物語やその作品を見ていた子どもの頃を思い出せます。
今回、岸田衿子先生が『赤毛のアン』を翻訳されていたことを知ってから、改めて岸田衿子先生が作詞された『赤毛のアン』の主題歌の歌詞を振り返り、子どもの頃に意味不明だった『あらいぐまラスカル』の歌詞の意味を調べてみて、馴染み易い言葉で頭に残る歌詞が持つ作品への深い気持ちが込められているのだなと感じました。
主題歌や終わりの歌、挿入歌は、作品を見た記憶を思い出す引き金になり、大きく思い出をまた広げてくれるのだと思います。
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