30年近く愛されるボクシング漫画の金字塔『はじめの一歩』
1989年より『週刊少年マガジン』(講談社)で連載している、森川ジョージ原作のボクシング漫画『はじめの一歩』。母子家庭のいじめられっ子の主人公・幕之内一歩が、ひょんなきっかけからプロボクサーを志し、競技者としても人としても成長していくという、ビルドゥングスロマン的物語は、多くの人を惹きつけてやみません。
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憎たらしくて、強い…“理想的な悪役”として人気のブライアン・ホーク
とりわけ本作における大きな魅力となっているのは、主人公たちの前に立ちはだかる個性豊かな対戦相手たち。中でも抜群の存在感で、鮮烈な印象を残している悪役ボクサーが、ブライアン・ホークです。
ニューヨークのスラム街出身で、人を殴るかセックスをしていないと落ち着かない制御不能の野生児。傲慢不遜で、礼儀知らず、試合前日の記者会見で「「日本の女たちを差し出せ!」と挑発するという、絵にかいたようなヒールキャラです。
主人公格の一人・鷹村守と繰り広げたジュニアミドル級のタイトルマッチは、長きに渡る『はじめの一歩』の歴史の中でも、屈指の名勝負として知られています。
ニューヨークのスラム街出身で、人を殴るかセックスをしていないと落ち着かない制御不能の野生児。傲慢不遜で、礼儀知らず、試合前日の記者会見で「「日本の女たちを差し出せ!」と挑発するという、絵にかいたようなヒールキャラです。
主人公格の一人・鷹村守と繰り広げたジュニアミドル級のタイトルマッチは、長きに渡る『はじめの一歩』の歴史の中でも、屈指の名勝負として知られています。
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トリッキーなファイトスタイルには、モデルが存在した
そんなブライアン・ホークは、極度の練習嫌い。ほとんど、まともなトレーニングもしないまま、天性の喧嘩の才能だけで世界王者にまで上り詰めたという、『グラップラー刃牙』の花山薫ライクなキャラクターとして描かれています。野生児であるため、ファイティングスタイルはかなりトリッキー。
特に、相手のパンチを、ノーガードで上体を大きくスウェー・ディフェンスした体勢から、カウンターで反撃するという描写は、いかにも漫画的。「こんなのあり得ないだろ!」と言いたくなります。しかし、このボクシングスタイルにはモデルが存在するというのです。
モデルの名前は、ナジーム・ハメド。90年代に活躍したイギリス出身のプロボクサーです。
特に、相手のパンチを、ノーガードで上体を大きくスウェー・ディフェンスした体勢から、カウンターで反撃するという描写は、いかにも漫画的。「こんなのあり得ないだろ!」と言いたくなります。しかし、このボクシングスタイルにはモデルが存在するというのです。
モデルの名前は、ナジーム・ハメド。90年代に活躍したイギリス出身のプロボクサーです。
37戦36勝31KO…圧倒的強さを誇っていたナジーム・ハメド
「クソがっ…!どっから手が出てくるか分からねぇ…!無茶苦茶な打ち方しやがって…!」
『はじめの一歩』の作中、ホークと戦った鷹村がこんな所感を吐露しています。おそらく、ナジーム・ハメドと対戦したボクサーたちも、同じようなことを思ったに違いありません。
『はじめの一歩』の作中、ホークと戦った鷹村がこんな所感を吐露しています。おそらく、ナジーム・ハメドと対戦したボクサーたちも、同じようなことを思ったに違いありません。
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腕をだらりと下げてガードをしない、ジャブを打たない、ジャンプしてパンチを打つ…。
いずれも、近代ボクシングにおいてタブーとされる戦い方です。こんなやり方、通常であれば、トレーナが許すはずありません。というか、試合に勝てません。ところが、ハメドはこのスタイルで勝ってしまうのです。それも、事もなげに、ひょうひょうと…。
積み上げた勝利の数は、37戦36勝(1敗)。しかも、164センチと小柄ながらパンチの威力は強烈で、キャリアにおけるKO率は、80%以上を誇っています。
いずれも、近代ボクシングにおいてタブーとされる戦い方です。こんなやり方、通常であれば、トレーナが許すはずありません。というか、試合に勝てません。ところが、ハメドはこのスタイルで勝ってしまうのです。それも、事もなげに、ひょうひょうと…。
積み上げた勝利の数は、37戦36勝(1敗)。しかも、164センチと小柄ながらパンチの威力は強烈で、キャリアにおけるKO率は、80%以上を誇っています。
via tofight.ru
軟体動物のような動きで相手を翻弄する
比類なき強さを誇ったハメドですが、先述のような変則的なファイトスタイルにより良識あるボクシングフリークから邪道扱いされ、多くの批判にさらされたものです。
しかし、そんな非難をあざ笑うかのように、試合中ダンスのような軽快なステップを踏み、ノーガードのまま薄ら笑いを浮かべながら対戦相手へ近づくハメド。対戦相手の強打も、軟体動物のようなスウェーバックでかわし、通常ならば体重が乗せられない体勢にも関わらず、強烈なカウンターパンチを的確に急所へ打ち込み、強敵たちをマットに沈めていきました。
そんな彼は「悪魔王子」「狂気のプリンス」などと呼ばれ、常にブーイングと歓声、両方が巻き起こったものです。
しかし、そんな非難をあざ笑うかのように、試合中ダンスのような軽快なステップを踏み、ノーガードのまま薄ら笑いを浮かべながら対戦相手へ近づくハメド。対戦相手の強打も、軟体動物のようなスウェーバックでかわし、通常ならば体重が乗せられない体勢にも関わらず、強烈なカウンターパンチを的確に急所へ打ち込み、強敵たちをマットに沈めていきました。
そんな彼は「悪魔王子」「狂気のプリンス」などと呼ばれ、常にブーイングと歓声、両方が巻き起こったものです。
なお、その奇抜なファイトスタイルとは裏腹に、常日頃から努力を怠らない勤勉実直なタイプのファイターで、ブライアン・ホークとは真逆の人物像だったといいます。