昭和の無責任男『植木等』。ゴマすり・ホラ吹き何でも来い!だまって俺について来い!
2016年11月8日 更新

昭和の無責任男『植木等』。ゴマすり・ホラ吹き何でも来い!だまって俺について来い!

バンドにジャズ、音楽とともに歩み続け、そしてクレイジーキャッツで音楽とコメディを融合させて、一躍時の人となり、バラエティや映画で昭和の日本を笑いの渦に巻き込んだ植木等。本当に無責任男なんでしょうか?

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黄金期と後退期

こうしてクレイジーキャッツとともに、植木等は1960年代のトップコメディアンとしての黄金期を迎えます。
1969年に発売した「ウンジャラゲ」は、志村けんが1988年にカバーしてヒットしました。
映画に歌にステージに大忙しのスケジュールをこなしていくのですが、70年代に入るとドリフターズの台頭等により徐々に人気が落ち、メンバーの単独での活動が目立つようになり、クレージーキャッツとしての活動が激減していきます。
そんな中植木等は、違う道を切り開いていくのでした。

ウンジャラゲ/ハナ肇とクレイジーキャッツ

個性派俳優へ

転機は、1977年の東京宝塚劇場公演『王将』で坂田三吉を演じたことだった。
このあと1990年頃まで毎年のようにスクリーンに出演し続け、テレビにも多数のドラマに出演し、名わき役・性格俳優としての地位を築いていきます。
中でも、黒澤明監督最後の時代劇となった「乱」には、監督からのラブコールで出演を果たしています。
1985年には「東宝撮影所でいつもすれ違っていて、そのたび映画に出て欲しいと思っていたのに機会に恵まれなかった」と語る黒澤明の熱烈なラブコールを受けて、『乱』に助演した。
世界の黒沢にラブコールを送らせるなんて、大したものですねぇ。
そのうちなんとかなっちゃったって感じですねぇ。
 (1778942)

1986年には木下恵介監督の「新喜びも悲しみも幾年月」で日本アカデミー賞助演男優賞、キネマ旬報助演男優賞等を受賞、役者として円熟期を迎えることになるのでした。

人情の師匠との師弟愛

芸能通の間ではかなり有名な話しですが、植木の付き人を務めたのが小松政夫。
「小松政夫」の名付け親も植木等。
そして、世に送り出したのも植木等。
植木等の知られざる一面を、小松政夫が語っています。
 (1778968)

それは、植木が出演していた生放送の『シャボン玉ホリデー』でのショートコントの最中のことであった。
 植木の付き人であった小松が勘違いして、出番前ではないのに「出番です」と植木に言ってしまった。
植木はつい舞台に出てしまったのだが、当然周囲は植木の登場に唖然・・・その瞬間に植木は機転を利かせて「あ、お呼びでない?・・・こりゃまた失礼いたしました」とアドリブを放った。これが大受けとなり、以後、毎回のように使われるようになった。
 このことについて植木は、番組関係者に「小松が間違えてね、あのギャグが生まれたのよ」と言って回った。

 このエピソードについて小松は、「聡明な植木が間違いをするはずがありません。私を売り出すために作ってくれたエピソードなんです・・・本当に感謝しています」と語っていた。
しばし声が途絶え、ハンカチを目にしながら・・・
付き人兼運転手からタレントに転身する際、植木からかけられた言葉は
「お前、明日からもう俺のところには来なくていいからな」というあまりに突然なものだった。
この言葉に小松は驚くとともにクビなのかと一瞬当惑したが、続けて植木は「実はな、社長と話してお前を正式にタレントとして一本立ちさせてやりたいってお願いしたんだ」「そうしたら社長も大賛成でな、お前のマネージャーも給料も、全部決めてきたから」とその真意を語った。
また植木の逝去直後、TBSテレビで放送された追悼特番では、付き人時代から小松単独での番組出演オファーがあった時期のことを
「自分は当時まだ勉強中の身でありながら、番組に出るなんてとんでもないと思っていたんです。しかしそれを植木さんに相談したら、すごく喜んで頂いて『結構なことじゃないか。行って来い。行って勉強してきなさい』と、笑顔で背中を押してもらいました。一人で番組に出ることを咎められたことはありませんでした。あの優しさは今も忘れられませんね」と懐古している。
植木等さんは2007年3月27日、80年の人生に幕を下ろしました。

無責任男のキャラクターとして昭和のトップコメディアンとなり、また個性派俳優としても数々の映画やドラマに出演し、ファンを楽しませてくださいました。
キャラクターイメージとは違う、温厚で人情味のある男は、自身のイメージに随分葛藤したことでしょう。
そんな男だからこそ、ファンを魅了し、一世風靡できたのではないでしょうか。
ありがとう、植木等さん。
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