確かにこのガンダムトレーラー。
これ一台あれば、誰もが思いつく『ガンダム大地に立つ』の名シーンを簡単に再現できる。というか、そのシーンを再現する以外に使い道がほぼ皆無な代物を、3000円というマスターグレードレベルの価格で売り出してきた辺り、確かにこの時期バンダイグループ(系列会社のバンプレスト含む)は、ミニフィギュアや食玩やプライズ商品で「マ・クベの壺」とか「テム・レイ回路」とか、正気の沙汰とは思えない商品化を連発していたので、それと比較すればまぁまともな選択肢なのかもしれないとは思わせられる。
これ一台あれば、誰もが思いつく『ガンダム大地に立つ』の名シーンを簡単に再現できる。というか、そのシーンを再現する以外に使い道がほぼ皆無な代物を、3000円というマスターグレードレベルの価格で売り出してきた辺り、確かにこの時期バンダイグループ(系列会社のバンプレスト含む)は、ミニフィギュアや食玩やプライズ商品で「マ・クベの壺」とか「テム・レイ回路」とか、正気の沙汰とは思えない商品化を連発していたので、それと比較すればまぁまともな選択肢なのかもしれないとは思わせられる。
しかし、冷静に考えればやっぱりこの商品化チョイスと価格設定の強気さは正気じゃなかったわけで、EXシリーズはその後『ガンダム』の戦艦やルッグン、シーランス、サムソントレーラーから、『機動戦士ガンダムSEED』(2002年)の戦艦群まで、出オチのようなメカから、落ち葉拾いまで、無軌道に商品化を続けた結果、そんなシリーズの定期ファンが定着するはずもなく、2007年に35番目のシリーズ商品「MP-02A 駆逐モビルポッド オッゴ」を発売して終了する。
EXシリーズ終了間際の2006年からバンダイは、EXシリーズの概念にさらに「既存のミリタリープラモデル要素を組み込むため、今までは小サイズでしか発売できなかった兵士用武装を、1/35スケールで超精密再現して商品化する」というコンセプトを足しっぱなしにした「HG U.C. HARD GRAPH」というシリーズを展開開始。
そのHG U.C. HARD GRAPHシリーズも、果敢に1/35スケールでジオン兵やコア・ファイターまでキット化させたかと思えば、当たり前のように数点の商品化で行き詰った挙句、いきなり既存のHGUC版ザクや陸戦型ガンダムキットの色替えに、オマケパーツやオマケキットを付属させてみたりと、見事な迷走をみせてくれて、2009年にはたった3年の短い生涯を終えてみせてくれた。
そのHG U.C. HARD GRAPHシリーズも、果敢に1/35スケールでジオン兵やコア・ファイターまでキット化させたかと思えば、当たり前のように数点の商品化で行き詰った挙句、いきなり既存のHGUC版ザクや陸戦型ガンダムキットの色替えに、オマケパーツやオマケキットを付属させてみたりと、見事な迷走をみせてくれて、2009年にはたった3年の短い生涯を終えてみせてくれた。
話をガンダムトレーラーEXモデルキットに戻せば。
確かに一方で「これ一つあるだけで、ガンダムファンの誰もが胸に刻み込まれた、ガンダム初起動のシーンが再現できる」というバリューはあるにはあるのだが、考えてもみてほしい。
そもそものガンダムトレーラー自体が、別にその後レギュラーで活躍するガンペリー的な立ち位置メカでもなければ、Gアーマーのような、当時商品化前提で設置されたガンダムサポートメカでもないのだ。
非情だが現実をいえば、『ガンダム』制作当時においてガンダムトレーラーは「第1話だけに登場する、ガンダムを乗せたトレーラー」それ以上でも以下でもなく、言ってしまえば書割り背景みたいな存在なので、一応設定画は存在するが、非常にシンプルかつ分かりやすいレベルで「ガンダムを乗せるトレーラー」が、70年代後半のSFアニメ基準で設定画を起こされているだけで、車輪らしきものや運転席らしきものも配置されているが、実際に『機動戦士ガンダム』第1話で登場したトレーラーには、このキットでメイン情報量を担うカタパルトデッキのようなハイディテールな代物どころか、寝かせたガンダムを固定しておくバーもアームもない、トレーラーの上面は「ただの平たい土台」でしかないのだ。
確かに一方で「これ一つあるだけで、ガンダムファンの誰もが胸に刻み込まれた、ガンダム初起動のシーンが再現できる」というバリューはあるにはあるのだが、考えてもみてほしい。
そもそものガンダムトレーラー自体が、別にその後レギュラーで活躍するガンペリー的な立ち位置メカでもなければ、Gアーマーのような、当時商品化前提で設置されたガンダムサポートメカでもないのだ。
非情だが現実をいえば、『ガンダム』制作当時においてガンダムトレーラーは「第1話だけに登場する、ガンダムを乗せたトレーラー」それ以上でも以下でもなく、言ってしまえば書割り背景みたいな存在なので、一応設定画は存在するが、非常にシンプルかつ分かりやすいレベルで「ガンダムを乗せるトレーラー」が、70年代後半のSFアニメ基準で設定画を起こされているだけで、車輪らしきものや運転席らしきものも配置されているが、実際に『機動戦士ガンダム』第1話で登場したトレーラーには、このキットでメイン情報量を担うカタパルトデッキのようなハイディテールな代物どころか、寝かせたガンダムを固定しておくバーもアームもない、トレーラーの上面は「ただの平たい土台」でしかないのだ。
いくら「これさえあれば、ガンダムの初登場シーンを再現できます!」でも、さすがにアニメ版そのままの造形品だけでは、腕に覚えのあるモデラー辺りからは「ふざけるな。これだったらプラ板積層削り出しで、自作できるわ。なんでこんなもんに3000円も出さなきゃいけないんだ」と言われるだろうし、かといってそこでいつもの「解像度を上げる」ディテール追加を行ってしまうと、そもそもがシンプル過ぎるデザインだけに「これはそもそもなに? どこがガンダムと関係あるの?」という代物になってしまう。
それでなくとも、シリーズ初弾なので、このキット一つで「EXシリーズとは」をユーザーに印象付けなければならない。
そこでバンダイが攻めに出た手段とは?
それでなくとも、シリーズ初弾なので、このキット一つで「EXシリーズとは」をユーザーに印象付けなければならない。
そこでバンダイが攻めに出た手段とは?
「メインの構造を、平たい土台のアニメ版トレーラーと、EXモデルオリジナルのジャッキアップデッキとの二層構造にする」だった。
このキットは、だから、デッキ部分がトレーラーに固定されるようには仕様が出来ておらず、デッキは完成したトレーラーの上に乗せるもよし、乗せないもよし。その上で、トレーラー自体は極力『ガンダム大地に立つ』で描かれた設定画や作画版に忠実に立体化しつつ、今風ハイディテールな要素を全部デッキに詰め込んで、それをオプション扱いすることで、デッキを用いれば今風の、用いらなければ1979年作品に準拠した、個々の需要に準じた「ガンダムを乗せるトレーラー」が出来上がるという案配に落ち着いた。
このキットは、だから、デッキ部分がトレーラーに固定されるようには仕様が出来ておらず、デッキは完成したトレーラーの上に乗せるもよし、乗せないもよし。その上で、トレーラー自体は極力『ガンダム大地に立つ』で描かれた設定画や作画版に忠実に立体化しつつ、今風ハイディテールな要素を全部デッキに詰め込んで、それをオプション扱いすることで、デッキを用いれば今風の、用いらなければ1979年作品に準拠した、個々の需要に準じた「ガンダムを乗せるトレーラー」が出来上がるという案配に落ち着いた。
なんというかもう、頓智みたいだねという感想しか出てこないのだが、大河さんとしては『ガンダム』再現の上で、このアイテムの存在はありがたい小道具として重要なので手に入れて、そのまんま『ガンダム大地に立つ』再現で使用したというお話。
一応キットは成型色はパーツ単位で大まかにはわけられているので、今回はそのまま組んで、塗装も車体側面の三つの丸を黒く塗ったりした程度。
なんていうか、バンダイさんもいろいろ苦労した上で、なかなかクレバーな商品仕様に着地したけれども、結局は「ものすごく、買う人を選ぶ商品」になってるよなぁとしか言えない。
出オチだよね、やっぱこれ……。
一応キットは成型色はパーツ単位で大まかにはわけられているので、今回はそのまま組んで、塗装も車体側面の三つの丸を黒く塗ったりした程度。
なんていうか、バンダイさんもいろいろ苦労した上で、なかなかクレバーな商品仕様に着地したけれども、結局は「ものすごく、買う人を選ぶ商品」になってるよなぁとしか言えない。
出オチだよね、やっぱこれ……。
市川大河公式サイト
光の国から愛をこめて
フリーランスライター・脚本家・演出家・元映画助監督・制作進行
市川大河が語る、ウルトラマン、ガンダム、日本のカルチャー