今でも読みたいスタイリッシュな作風、片岡義男の小説
2015年11月10日 更新

今でも読みたいスタイリッシュな作風、片岡義男の小説

片岡義男は1970年代から活躍している小説家、エッセイスト、写真家です。原作の「スローなブギにしてくれ」「メイン・テーマ」は映画化され、当時の若者の人気を独占しました。小説だけにとどまらない彼の魅力をご紹介します。

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マルチな才能の片岡義男

片岡義男

片岡義男

片岡 義男(かたおか よしお、1939年3月20日 - )は、日本の小説家、エッセイスト、写真家、翻訳家、評論家である。
1974年『白い波の荒野へ』で小説家としてデビュー。翌年には『スローなブギにしてくれ』で第2回野性時代新人文学賞を受賞し、直木賞候補となる。1970年代後半からは「ポパイ」をはじめとする雑誌にアメリカ文化や、サーフィン、ハワイ、オートバイなどに関するエッセイを発表する傍ら、角川文庫を中心に多くの小説を発表。またFM東京の深夜放送番組「きまぐれ飛行船」のパーソナリティを務めた他、パイオニアから当時発売されていたコンポーネントカーステレオ、「ロンサム・カーボーイ」のテレビCMのナレーションを担当したりと、当時の若者の絶大な支持を集めた。
小説やエッセイだけでなく、写真や翻訳、評論までこなしてしまう多彩な才能の持ち主なんですね。

今だから読みたい片岡義男の名作

スローなブギにしてくれ

スローなブギにしてくれ

内容紹介

捨てる男あれば拾う男アリ。
走ることばかりでなく、留まることも、この先の2人は。

オートバイで走ることだけにリアリティを感じている少年と
高2で家出して以来、家に居つかなくなった少女。
2人は不意に、夕暮れの第三京浜で出会う。
次々に生まれてはもらわれていき、捨てられる猫のように
よるべない時間の中を漂い、生活を積み上げることのできない2人。
しかし、決裂と思われた瞬間を超えて、彼女は戻ってきた。
これから、今までとちがう何かが始まるのだろうか。
ゆっくりと、くりかえしながら、歌いながら。
スローなブギのように。
「野生時代」新人賞受賞作にしてのちに映画化された代表作。
彼のオートバイ、彼女の島

彼のオートバイ、彼女の島

内容紹介

夏と、島と、オートバイ。
退屈を知らない日々のためには、
まずその3つが必要だ。

一度目は高原の道で。二度目は共同浴場で。
偶然の出会いが2度あった「彼女」は、
もう無関係な他人ではない。
仕事や悩みが毎日の多くの時間を占めてしまったとしても
ひとたびオートバイに乗り、歓びを分かち合う人が隣にいて
風が、道が、光が、山々が、自分と一体になってしまえば
もはやそこに退屈の入り込む隙間はない。
夏という時間、島の時間を生きる彼ら彼女らは
限りなく自由だ。
ときには星の下で眠る

ときには星の下で眠る

内容紹介

誰もが例外なく、移ろいゆくものたち。
天空の星座のように。

夏のイメージが強い片岡義男の小説にあって
この物語は明確に秋を舞台としている。
「時には星の下で眠る」という短編が先行してあり
それが北米大陸を舞台としていたのに対し、
こちらは明確に、日本の、高原の秋だ。
オートバイを愛する者同士の4年ぶりの再会を介して
人が4年、という時間を生きることの、いくつもの模様が描かれる。
そこにはいくつも死があり、不在がある。
生きている者たちも紅葉の色の変化のように確実に変わってゆく。
そして時には友とともに、星の下で眠る。
友よ、また逢おう

友よ、また逢おう

内容紹介

いつも未知のほうへ、生命のきらめきのほうへ、
ビリーは向かって行った。

ビリー・ザ・キッドといえば、アメリカ西部開拓時代のヒーローとして、
数々の小説や映画に描かれてきた。
そのビリーの生きた日々を、片岡義男が書くとどうなるか。
伝説の男による銃の早技は確かに描かれはするものの
ここにあるのは少年から青年に移ろうとする1人の男の
一日いちにちのていねいな積み重ねであり、
主人公である彼さえもがその一部になってしまう
北米大陸の圧倒的な自然、そして時代の苛烈さである。
ビリーが求めたものは栄光ではなかった。
自分を日々新たに鍛え直す、恐怖に似た未知のほうへ
彼はいつも向かっていったのだ。
吹いていく風のバラッド

吹いていく風のバラッド

内容紹介

連続しない、いくつもの美しいシーン。
そこに吹いている、すべて違う風。
そして、コーヒーは2杯だ。

長さとしては長編小説だが、一続きの物語があるわけではない。
「あとがき」が簡潔に説明しているように
エッセイのような、小説のような、様々に印象的な鮮やかなシーンを、前後の文脈なく、28編、集めている。
ごくささやかな共通項として、どの掌編にも風が、あるいは風の気配がある。
夜の、ビジネス街の、電話ボックスの、大きな公園の、少年の、別れ話の、プールの、汚染されて住めなくなった島の、その風。
風にはコーヒーがよく似合う。
できれば、たっぷりと2杯だ。

片岡義男の翻訳・エッセイ・写真集

チープ・シック お金をかけないでシックに着こなす法

チープ・シック お金をかけないでシックに着こなす法

商品説明

1975年、アメリカの2人の女性ジャーナリストによって書かれた本書は、自分自身を生かす新しいおしゃれの考え方について提案しているが、それは21世紀になった今でも十分通用するものであり、色あせるどころかかえって新鮮である。

ファッションメーカーの言いなりになり、流行に振り回されることを良しとしない著者たちにとって、服装とは自分自身で選びとり、その人自身の生き方にぴったり沿ったものでなくてはならない。その視点で語られるスタイルは、ベーシックを基本とし、その大切さを踏まえたうえで、アンティークやスポーツウェア、民族衣装などを楽しみながら着こなしていくというもの。いずれにしても、服装に無駄な時間とお金をかけないのがモットーだ。

300枚にも及ぶ実例写真は、少々古さも感じさせるが、イヴ・サンローランをはじめ、写真家やアートディレクターへのインタビューは、それぞれのファッションへのこだわりがうかがわれ非常に興味深い。
絵本ジョン・レノンセンス

絵本ジョン・レノンセンス

内容紹介

ビートルズの天才詩人が1964年に書いた“In His Own Write”の翻訳版。毒のある笑い、ルイス・キャロル的なファンタジー、言葉遊びいっぱいの詩とショートストーリーを片岡義男氏らがセンスたっぷりに翻訳した。ジョン・レノンらしい諧謔味あふれる絵が彩る。文庫化に当たり、原文を付した。
文房具を買いに

文房具を買いに

内容紹介

こんな素敵な文房具に囲まれて暮らしたい!何気ない文房具には、平凡な日常をほんの少しドラマチックに変える、はっとさせられる色や形、そして物語が隠れています。ジム・ジャームッシュが愛用した手帳に誘惑され、フランス製のボールペンにそそのかされ、昔からずっと変わらないデザインの色鉛筆にとらわれる。雑貨に秘められた魅力と、豊かで愛すべきストーリーを、極上のオールカラー写真と共に紹介するエッセイ。
謎の午後を歩く

謎の午後を歩く

内容紹介

陽ざしを受けとめる被写体。それを見る自分。そして写真機。このトライアングルの謎から、写真は始まっていく-。77枚の写真とともに書き下された片岡義男の「写真術」
ここは猫の国

ここは猫の国

内容紹介

猫を主人公にした絵本を、その表紙や裏表紙、さらにページの中の猫たちを撮った写真を添えて、オールカラーで紹介。また、著者による猫が主人公の童話「ねこが今夜もねむる」を収録。
改めて片岡義男の世界をのぞいてみませんか?
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