将棋界の七不思議を追う 「竜王戦の謎」
2018年6月6日 更新

将棋界の七不思議を追う 「竜王戦の謎」

勝負の世界に偏りはつきもの。しかし偏り過ぎると不思議なもの。古今東西将棋の奇妙、誰が呼んだか七不思議。かつてあったもの今もあるもの、ここに紹介。

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〝不思議〟の実情

 竜王戦の各組の優勝者が誰で、どういうスコアでタイトル戦が終わったか――ということについては以下のページにまとめられていたりします。
《各組での予選→予選通過者による決勝トーナメント→挑戦者決定戦→番勝負》という流れを採用している竜王戦。
 〝不思議〟にある《1組優勝者が挑戦者になったことが無い》というのは事実なのですが、その前段階であるはずの〝挑戦者決定戦にすら顔をださない〟という一面があったりします。

 1組優勝者が挑戦者決定戦に絡んでくるのは第18期、19期、20期、22期、24期、27期とこんなもの。
 今でこそ振り返ってみればそこそこの登場回数になっているものの、本来は〝タイトル挑戦大本命であるはずの1組優勝者〟が〝大会開始18年連続で本戦決勝に姿を現さない〟というのは競争の激しさを物語っている気がします。



 ……ところで前回の「将棋界の七不思議を追う」では謎の理由のひとつとして《55年組》をピックアップしましたが、今回そういうのは〝特にありません〟

竜王戦ドリーム

 というのも寂しいので、せっかく竜王戦の話題になったことだし《竜王戦ドリーム》についてご紹介したいと思います。

 《竜王戦ドリーム》はどういうものかと申しますと、
将棋の最高位のタイトル戦ながら、若手にもタイトル奪取のチャンスがあり、アマチュアや女流棋士も参加できる。
 というもの。ドリームチャンスとか言うと急に宝くじっぽくなる。

 で、実際に若手が優勝して竜王位に就位することが多いのですが、なかなか個性的なメンバーで構成されていたりします。

島朗の場合

 予選3組2位から出てきた挑戦者。
 鳴り物入りの《初代竜王》。伝説の始まりと言っても過言ではないこの人は〝棋界の伝説的研究会 島研〟の主催者であったりもします。
島朗九段

島朗九段

 当時の島さんはわりあいヤンチャ(?)で、着物での対局が多かったタイトル戦において〝アルマーニのスーツ〟を用いたオシャレさん。
 これには対局者の米長邦雄氏も思うところがあったのか「俺もアルマーニで対局したいよ」と言ったとか言っていないとか。

 他にも、
〝対局中断後にホテルのプールで遊ぶ〟
〝竜王戦前夜祭で花束をくれた女性と結婚〟
〝賞金はファッションと車に消えた〟
〝(翌年同大会も)対局中断後に対戦相手とモノポリーで遊ぶ〟

 など伝説多数。

〝竜王戦勝者としての存在感〟として右に出る者はいないという気がします。
 シンデレラボーイという異名があったとかなかったとか。

羽生善治の場合

 3組優勝からの参戦。
 今なお覇者として君臨する彼の、タイトル戦初登場がこちら第2期竜王戦。1990年のこと。

 研究会の師匠格であるところの島竜王を破り、彼の呼び名は挑戦者《羽生六段》から《羽生竜王》へと変化します。
 それから現在に至るまでの28年間、〝常にタイトルを持っていたので《羽生n段》と段位呼びされることが無かった〟という状態になります。まさしく伝説の始まり。たまげたなあ。

 なお対局中断後に島竜王とモノポリーで遊んでいたのは彼です。

佐藤康光の場合

 同じく羽生世代より。1組2位からの参戦。1993年のこと。
佐藤康光

佐藤康光

 現在は連盟会長でもある彼のタイトル獲得も《竜王》からのようです。竜王戦初登場にもかかわらずあっさり奪取。しかも相手は羽生さん。こちらもなかなかのドリーム力。

 羽生さんというのはタイトル獲得期数もすごいんですが、〝連覇の鬼〟という一面も持っていまして、王座戦に至っては〝19連覇〟とかいうちょっとよくわからないスコアを叩き出したりしています。
 のですが、竜王戦とは相性があまり良くなかった様子。

 最も佐藤さんも竜王獲得自体は1期のみ(他のタイトルはいくつか取っている)なので相性良しと言えるかは謎です。

藤井猛の場合

 4組優勝からの参戦。1998年のこと。
 自身の代名詞でもある《藤井システム》を武器に、

〝決定戦で羽生善治を破って挑戦者に〟
〝番勝負では谷川竜王に4連勝のストレート勝ち〟
〝そのまま3連覇〟

 というドリーム力を発揮してくれました。
 色々とネタ的な話題の尽きない藤井先生ですが、

・同じ振飛車党の強豪・鈴木大介からの挑戦に対して〝振飛車を封印して防衛成功〟
・〝竜王在位中に新人王戦で優勝〟
・ついでのように〝早指し将棋選手権でも優勝〟
・羽生さんの挑戦を受けて竜王戦七番勝負を展開。一方で自身も挑戦者として羽生王座相手に王座戦五番勝負に登場。季節が重なっていたので実質〝12番勝負〟を展開(結果は両者防衛)。

 と実力者としての話題も豊富。
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