グラム・ロックに咲いた伝説のバンド、T・レックス
2016年10月23日 更新

グラム・ロックに咲いた伝説のバンド、T・レックス

グラム・ロックと呼ばれるムーブメントの中心であった、マーク・ボラン率いるT・レックス。そのあまりに強烈だった光と影。

11,598 view
アルバム・ジャケットを元ビートルズのリンゴ・スターが撮影していることでも話題となりましたが、当時のT・レックス人気はもの凄いものがありました。

この年には初来日を果たし、日本武道館などで公演しています。
ザ・スライダー - The Slider

ザ・スライダー - The Slider

(1972年発売)
'72年、T.Rex全盛時のアルバムです。
'71~'72年のイギリスのアーティストとその廻りを取り巻くプロデューサーやエンジニアの音楽表現に対する探求心と自己表現に対する向上心、またロックファンのレベルの高いニーズなど当時の環境が生み出したといえるアルバムです。
この時代のアーティスト、EL&Pの「TARCUS」、第2期JEFF BECK GROUPの「ROUGH AND READY」、DEEP PURPLEの「MACHINE HEAD」なども同様に生み出されたような印象があり、アーティストの”力”以上のものが内に入れ込まれていて、絶対的な存在意義を感じます。
T.Rexはシングル制作に対するコマーシャルな方向性とアルバム制作での音楽表現の追及、と方向分けが明確にコントロールされていて、アルバム作りに真摯に取り組んだ結果がそのままアルバムに反映しています。
単純なブギのリズムとコード展開で、幅広い音世界を作りだしてる本作は、とてもシンプルで心地よく感じます。

タンクス - Tanx

前作があまりにも煌びやかだったこともあり、落ち着いた感じがするアルバムです。
原因のひとつには「ブロークン・ハーテッド・ブルース」や「レフト・ハンド・ルーク」といった素晴らしいスローバラードが入っていてその印象が強いからかもしれません。
タンクス - Tanx

タンクス - Tanx

(1973年発売)
「電気の武者」「スライダー」と連続して名アルバムをリリースしたあとに出たアルバムです。時期的には名曲「20センチュリーボーイ」とだいたい同じ時期に出たアルバムです。前作との音での一貫性というものも少し感じます。特に際立って新しいことをしているわけでもなく、かといってマンネリしている感じもしない、非常に創作意欲があり、マークボラン自身の安定期に作られたアルバムだと思います。

ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー

この時期、T・レックスは低迷期を迎えていました。
トニー・ヴィスコンティがプロデュースした最後の作品にして、オリジナル・メンバーとしても最後となった作品です。
ひとつの時代が終わろうとしているといった印象を受けます。
ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー - Zinc ...

ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー - Zinc Alloy And The Hidden Riders Of Tomorrow Or A Creamed Cage In August

(1974年発売)
彼自身がこの当時流行し始めていたブラックミュージックを最も取り入れたアルバムです。これ以降の彼のアルバムでも随所に見られ始める女性コーラス。これは以前の彼のアルバムではそれほど見られなかったものです。(コーラスといえば大抵低い男性コーラスだった)
「電気の武者」などのシンプルで素晴らしい曲と比べると、若干女性コーラスが煩わしく聞こえる人もいるかもしれません。しかし、このアルバムでの女性コーラスは大変重要な役割を果たしていると思います。
若干ディスコティックな感じがする曲もあるのですが、彼がやるとそれも不思議と全く別な「ありそうでない音楽」に聞こえるのです。

地下世界のダンディ - Dandy In The Underworld

「ズィンク・アロイと朝焼けの仮面ライダー」の頃から、どっぷりと低迷期に入ってしまったT・レックス。
「ブギーのアイドル」、「銀河系よりの使者」とコンスタントにアルバムを発表していますが、どうしてもグラム・ロック終焉とともにT・レックスも終わってしまうのかという感が拭えませんでした。
しかし、そんななかメンバーも一新して心機一転、起死回生のアルバムを発表します。
地下世界のダンディ - Dandy In The Un...

地下世界のダンディ - Dandy In The Underworld

(1977年発売)
前作までのイメージを完全に払拭した正に新生T.Rexという感じの作品です。実際にボラン以外のメンバーは一新されています。シンプルで引き締まった演奏は新メンバーの力量も大きいのでしょうが、今聴いても全く古さを感じられないほど洗練されています。使用されている楽器・・・特にキーボード類の変化が曲そのもののイメージの変化にも大きな影響を与えています。従来ならメロトロンや生のストリングスが被せてあるであろう部分はソリーナに変わり、リードやベースなどではミニムーグと思われるシンセが頻繁に出てくるのですが、この音色のセンスがすこぶる良い。シンセと気が付かないほどうまく使用されています。珍しいところでは曲によってはクラビも登場してきます。ハモンドやサックスも従来とは聞こえ方が全然違います。やはり無駄な音を省いたことが良い結果を生んだのでしょう。変則的なリズムを取り入れた Jaaon B. Sad や従来通りのブギ、I Love To Boogie など全曲に変化があって、かつ統一感があるという典型的な名盤ですが、今までの重圧なアレンジがされていない (いわゆるT・レックスのイメージとはちょっと違う) のでこれがT・レックスの代表作とは言いにくいのですが、それでもどこをどう聴いても紛れもないT・レックスのサウンド。特にT・レックスの食わず嫌いの人にお薦めしたいと思います。
このアルバムで、人気・評価は徐々に持ち直しつつあったのですが、残念ながら発売の年に自動車事故で亡くなってしまいます。

しかし、いつ聞いても全盛時のT・レックスはキラキラとしていて素晴らしいですね。

T.Rex - 20th Century boy

Yet another brilliant track from the same album
マーク・ボランは若い頃、フランスで魔女と同棲していて、その魔女に“あなたは若くして大成功を収めるが、30歳までに血まみれになって死ぬだろう”と預言された。ファンタジーの大好きなマークらしい作り話であると大方の取り巻きは信用しなかったのだが、現実は小説より奇なりの言葉通り、その預言は現実のものとなる。
 30歳になる2週間前の’77年9月16日、内縁の妻であったグロリア・ジョーンズが運転する紫のブリティッシュ レイランド/275Gが木立に激突し、マークは還らぬ人となった。
39 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

永遠の名曲「マイ・シャローナ」に泣いたザ・ナック

永遠の名曲「マイ・シャローナ」に泣いたザ・ナック

ザ・ナックのことを知らなくても「マイ・シャローナ」、それもイントロだけで聞き覚えがあるという方は多いと思います。あまりにも印象的な曲を出したがために、その後は茨の道を歩くことになったザ・ナックの物語!
obladioblada | 7,280 view
ピンク・フロイドの素晴らしすぎるジャケット・デザイン

ピンク・フロイドの素晴らしすぎるジャケット・デザイン

ロック界での名声を欲しいままにしているピンク・フロイド。毎回爆発的なセールスを記録したアルバムですが、音楽同様に話題となったアルバム・デザインは、ヒプノシスというデザイン集団が制作したものです。
obladioblada | 21,074 view
【ヴァン・ヘイレン】「ジャンプ」の大ヒットで80年代を代表するロックバンドへ!

【ヴァン・ヘイレン】「ジャンプ」の大ヒットで80年代を代表するロックバンドへ!

 1978年、「ユー・リアリー・ガット・ミー」(キンクス・カバー、シングル)でデビュー。その後、マイケル・ジャクソンの「ビート・イット」ではエドワード・ヴァン・ヘイレンのみ参加、そして、「ジャンプ」で一躍、世界的大ヒットを生み出した偉大なバンド。特に「ジャンプ」収録のアルバム「1984」を中心にまとめてみます。
Yam | 21,295 view
ロック界の女王『ジャニス・ジョプリン』の魅力!

ロック界の女王『ジャニス・ジョプリン』の魅力!

1970年27歳の若さで亡くなったロックスター『ジャニス・ジョップリン』!60's〜70'sロックを語る上で欠かせない存在です!その魅力を振り返ってみましょう!
ロングアゴー | 6,312 view
クイーン フレディの4オクターブが凄かった!

クイーン フレディの4オクターブが凄かった!

ロック御三家の中の唯一の英国バンド 実は日本から人気に火がついたことをご存じでしたか? フレディが亡くなりましたがまだクイーンとして活動は続いています。
momoko | 7,984 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト