現代日本における「絵本」の起源と推移
日本では古くは平安時代より絵物語が存在しましたが、いまの日本で親しまれる絵本の形が出来てきたのは1900年代になってからのことです。西洋の新しい印刷技術が導入されて多色印刷が普及したこと、西洋の近代的な児童観の思想を反映した幼児教育制度が整ったことが、その背景にあったとされています。
1936年には、出版最大手の一社である講談社が「講談社の絵本」シリーズを創刊しました。全203冊からなるこのシリーズのフォーマットが以後の日本の絵本に大きな影響を与えました。私たち世代には学研の「ひみつシリーズ」にも似たフォーマットに映るかもしれませんね。
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1945年、太平洋戦争を終えた日本にあって出版界は自由と民主主義という新しい価値観のもとで再出発を果たします。物資が不足する中、粗悪な紙で作られた雑誌や本が飛ぶように売れる時代がやってきました。貧しい日常下で国民が文化を渇望していた時代背景に後押しされて、絵本の歴史は本格的な歩みを始めることとなるのです。
民主主義の国を目指し子供に未来への夢と希望を届けようとする機運の中、「子供の広場」「赤とんぼ」など児童向け雑誌が次々に創刊され、数多くの出版社が誕生します。「二度と戦争を繰り返さず、平和な国を建設する」その担い手になる子供を育てたいという情熱で作家、画家、編集者を志す人が増えていきました。
1949年には新潮社「世界の絵本」シリーズが創刊。1953年には岩波書店「岩波の子どもの本」が創刊し「ちびくろ・さんぼ」や「ひとまねこざる」など外国絵本の名作が翻訳されるとともに、日本国内の昔話「ふしぎなたいこ」や「おそばのくきはなぜあかい」などの絵本が刊行されました。
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1956年、現代では児童書出版の最大手の一社である福音館書店から月刊の物語絵本「こどものとも」が創刊。これは月ごとに一冊の絵本を創るという試みが画期的でした。テーマは実に幅広く、絵も洋画家や日本画家、漫画家に彫刻家など様々なジャンルから個性豊かな描き手を起用して、絵本の幅を広げることとなります。
「岩波の子どもの本」「こどものとも」は、ともにその後の日本の絵本作りに大きな影響を与えることとなりました。
「岩波の子どもの本」「こどものとも」は、ともにその後の日本の絵本作りに大きな影響を与えることとなりました。
1960年代、高度経済成長に沸いた日本では至光社や童心社、こぐま社、偕成社など児童書専門の出版社が次々に誕生します。各出版社が、明確なコンセプトを持って絵本作りに取り組むようになったのはこの時代からです。
1973年には絵本の専門雑誌「月刊絵本」が創刊され作家、画家、編集者たちが真剣に絵本とは何かを模索し、実験的な絵本も次々と出版されます。日本国内では環境問題など急激な経済成長の歪み、世界では戦争が絶えないなか、子どもには物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさを教えたいという意識が絵本に色濃く反映されていきます。
1973年には絵本の専門雑誌「月刊絵本」が創刊され作家、画家、編集者たちが真剣に絵本とは何かを模索し、実験的な絵本も次々と出版されます。日本国内では環境問題など急激な経済成長の歪み、世界では戦争が絶えないなか、子どもには物質的な豊かさだけでなく、精神的な豊かさを教えたいという意識が絵本に色濃く反映されていきます。
その間、絵本出版に携わる出版社は増加の一途を辿り、絵で展開する絵本、文字なし絵本、読者を子どもに限定しない絵本など、様々な新しい試みが誕生します。さらには、物語は作家が書き画家が絵を描くという分業から、画家が物語も絵本も創作するスタイルが登場してきます。
後に「絵本ブーム」と呼ばれた1960~70年代には、累計発行部数で600万部を超えるベストセラー絵本「いないいないばあ」を始め、「スーホの白い馬」「キャベツくん」「ふきまんぶく」など、現代にも読み継がれる絵本が数多く生まれました。
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1980年代、子どもを取り巻く環境は大きく変化していきます。日本経済はバブル景気を迎え消費社会化が進む一方で、1970年代の反戦や社会運動の動きは衰退していきます。この時代には多くの絵本が出版されては次々に消えていきましたが、自然破壊が進み核家族が一般化する中で、いわむらかずおの「14ひきのシリーズ」が人気を博しました。
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1990年代になると、数多くの絵本作家や画家たちが活発な絵本評論を展開するようになり、絵本について幅広く研究する絵本学会も設立されました。国内には次々と絵本美術館が誕生し、絵本原画展も数多く開催されるなど、絵本が文化の一つとして広く認識されるようになりました。
21世紀にはいると、1960~70年の「絵本ブーム」をリアルタイムに体験した世代が作家や編集者となって、コンピュータの普及と相まって絵本表現の多様化がすすんでいきます。
経済、利便性が十分に進化した現代。しかしながら絵本が与えてくれる独特の温もりや暖かい気持ちは、いつまでも大事に紡いでいきたいものですね。
21世紀にはいると、1960~70年の「絵本ブーム」をリアルタイムに体験した世代が作家や編集者となって、コンピュータの普及と相まって絵本表現の多様化がすすんでいきます。
経済、利便性が十分に進化した現代。しかしながら絵本が与えてくれる独特の温もりや暖かい気持ちは、いつまでも大事に紡いでいきたいものですね。
絵本のチカラは偉大!発行部数200万部超えの絵本たち。 - Middle Edge(ミドルエッジ)
カセットやCDなどと違い、長年に渡って売れ続けるのが絵本。世代を超えて共感できるし、インターネットが普及しても手に取って読んであげたくなるのも絵本の魅力です。ベストセラーの絵本のなかでも実に200万部超えを果たしている絵本たちをご紹介します。
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