左遷はサラリーマンの大敵ですが、由来を紐解くとポジティブに解釈することが出来ます。
2018年11月7日 更新

左遷はサラリーマンの大敵ですが、由来を紐解くとポジティブに解釈することが出来ます。

私は会社員でもありまして…人事の時期になるとグサグサ刺さる言葉があります。それは「左遷」。この言葉の由来は、司馬遷が編纂した中国の歴史書『史記』(紀元前91年頃成立か)に書かれているのですが、解釈によってグサグサどころかポジティブになれます。

14,149 view
11月3日は文化の日でした。今私たちが使う意味での「文化」という言葉は幕末以降に作られた和製漢語です。

和製漢語というのは「広告」や「自由」など明治期に欧米語の翻訳語として作られたものが多いのですが、それはさておき、「文化」という言葉自体は江戸時代、日本の元号の一つとして存在します。期間としては1804年3月22日から1818年5月26日まで。

この時代の天皇は第119代天皇・光格天皇と第120代天皇・仁孝天皇、江戸幕府将軍は第11第将軍・徳川家斉です。日本史的には、高校の日本史の授業で江戸の町人文化が栄えた時期(化政文化)として教わっているかな、と。

新しい言葉があれば昔からの言葉もある。今回はその話。

「左遷」

私は会社員でもありまして…人事の時期になるとグサグサ刺さる言葉があります。
それは「左遷」。
 (2062069)

この言葉の由来は、司馬遷が編纂した中国の歴史書『史記』(紀元前91年頃成立か)に書かれているのですが、解釈によってグサグサどころかポジティブになれます。

一般的に「左遷」の意味というと
官職をそれまでよりも低い位置に下げられること、転じて一般に、高い地位から低い地位に落とされることをいう。古く中国で、右を尊んで上位とし、左を下位としたところから出たことばで、朝廷の内官から外官に下げられること、あるいは中央から地方へ移される(流される)ことなどをいう。
via 『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)
と書かれることが多いかと思います。
この文章の中の「中央から地方に流される」…この由来が結果的にポジティブなのです。

左遷の語源

これは先に書いた『史記』に、項羽(項籍。紀元前232年~紀元前202年)と劉邦(?~紀元前195年)のやりとりの中に登場します。時にして紀元前206年。

『史記』に記されている内容を大雑把にまとめると、秦を倒して“西楚の覇王”を名乗りだした項羽が、諸侯に対して領地分配を行った時の話です。分配の時、項羽は、秦打倒の本当の立役者である劉邦に約束した関中(当時「関中」というと統一以前の秦の領土を指す意味もあった)を与えたくなかった。

約束しておきながら理不尽な話ですが、項羽は劉邦に、へき地として知られていた漢中を与えました。漢中は咸陽の西、地図上では左にあたるため「劉邦を左に遷す」と言ったということで、これが左遷の語源になったのです。

これは本来の実績に見合わない人事ですから、ここだけ読めば、現代社会の「左遷」と大差ないですよね。勿論、劉邦は不満と怒りの感情に満ち満ちます。ですが、彼の参謀の張良(ちょうりょう。 ? - 紀元前186年)はそのまま漢中に行く事と、そして、漢中と中央を繋ぐ陸路の要である桟道を焼くことを進言しました。

項羽は劉邦を警戒しており、何かの口実で劉邦を討伐する可能性が高かったのですが、張良はこの不当人事を利に転換することを進めたのです。具体的には、道を焼くこと=通行を困難にすることで謀反の意思がないことを示すと同時に、項羽から攻め込まれる危険を回避したわけです。

左遷は「不尽さを利に変える知恵を持て」というメッセージ

つまり「納得できない不便な場所でも、逆に考えれば中央(項羽)の目が届かないところで力を蓄えることできる」ということです。物は考えようで、やりくりで利に変わります。事実、結果として、劉邦は力を蓄えることができ、楚の項羽を倒して天下を取れたわけです。

左遷という言葉は「不尽さを利に変える知恵を持て」という先人からのメッセージかもしれないなあ…と思うことにしております。

小難しい話を文章で読むのが面倒な場合、個人的には横山光輝さんの漫画『史記』をオススメします♪

という、中国由来のコネタでした。次回は日本固有のコネタをご紹介したいな~、と思います。
11 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

桃太郎以外の鬼退治伝説はちょっと気の毒な(?)鬼のお話。

桃太郎以外の鬼退治伝説はちょっと気の毒な(?)鬼のお話。

今回は桃太郎以外の鬼退治伝説を紹介させていただきます。どれも鬼が気の毒になってしまうようなお話です。
山崎敬子 | 738 view
岡山?山梨?長崎?全国で伝承されている鬼退治伝説をご紹介。

岡山?山梨?長崎?全国で伝承されている鬼退治伝説をご紹介。

鬼というと「鬼退治」を連想する方も多いように見受けられます。今回はそれに関係するお話です。
山崎敬子 | 801 view
「鬼」という言葉の由来を辿りましょう。

「鬼」という言葉の由来を辿りましょう。

昨今の鬼ブームにあって、みなさんは「鬼」という言葉の由来を考えたことはありますか。前回に引き続き鬼の由来を辿っていきます。
山崎敬子 | 1,265 view
「鬼」という言葉の由来を考えたことはありますか。

「鬼」という言葉の由来を考えたことはありますか。

漫画「鬼滅の刃」が大ヒット。いまはまさに鬼ブームですが、みなさんは「鬼」という言葉の由来を考えたことはありますか。
山崎敬子 | 1,424 view
男性の象徴、その語源は中棒?珍宝??様々の呼び名の語源について。

男性の象徴、その語源は中棒?珍宝??様々の呼び名の語源について。

久しぶりの民俗コネタコラムです。ご無沙汰しております。私は日本の祭礼について大学などで講義をさせていただいておりますが、大人の皆様から一番多く質問されることは「夜這いってあるの?」「祭の日にフリーセックス的なことって本当にあるの?」などなど・・・人間味あふれる疑問についてです。
山崎敬子 | 5,549 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト