その時代ごとの世相が分かる…社会派邦楽特集【90年代編】
2017年8月22日 更新

その時代ごとの世相が分かる…社会派邦楽特集【90年代編】

バブルが崩壊し、平成大不況に突入した90年代・日本。なんとなく、世紀末の閉塞感が漂うご時世において、せめて歌だけは明るく、とでも言いたげに、ビーイング系や小室楽曲がヒットチャートを賑わす中でも、わずかではありますが、社会風刺歌はつくられていました。本稿ではその一部を紹介していきます。

5,540 view

So Let’s Get Truth(Mr.children)⇒格差社会?

『タガタメ』や『秩序のない現代にドロップキック』など、意外と社会派な歌が多いMr.children。ソングライティングのスタイルとしては、特定の事件・事故・社会問題について深く掘り下げて問題意識を提起するようなことはせず、その時々の世の中を包括的かつ散文的に表現したものばかり。ゆえに、ミスチルの社会風刺歌は、いつの時代においても、大衆の心になんとなくフィットするのです。

『So Let’s Get Truth』も、そんな、ソフトな会風刺歌の一つ。
ゴミのようなダンボール♪
そこで眠る老婆♪
だけど、素通りする素通りする素通りしたりする♪
via So Let’s Get Truth 歌詞より
上記のように、格差社会を歌ったかと思えば、「短命すぎた首相を 嘆くTV BLUES」と歌ったりと、やはり、幅広く、当時の日本の事象を歌にしています。
『So Let’s Get Truth』が収録されたア...

『So Let’s Get Truth』が収録されたアルバム『深海』

1996年6月24日リリース

平和の琉歌(サザンオールスターズ)⇒沖縄の在日米軍問題

琉歌とは、沖縄で琉球王朝時代から続く伝統的な定型詩のこと。桑田は後年、琉歌と銘打ったこの自作曲を振り返り、「にわかだった」と反省の弁を述べています。
しかしながら、沖縄人の中には「やまとんちゅ(本土の人間)の割には、良い曲を書く」と評価する声(?)も多いようで、2000年には、沖縄の歌手・ネーネーズによってカバーされたりもしています。

平和の琉歌(ネーネーズver.)

そんな『平和の琉歌』がリリースされたのは、1996年10月のこと。このわずかばかり前には、沖縄米兵少女暴行事件(1995年9月)、在日米軍兵飲酒運転過失致死事件(1996年1月)といった痛ましい事件が立て続けに発生しており、改めて、沖縄が「基地の島」として重い十字架を背負っていることが、内地の人間へ伝えられた時期でもありました。

こうした時期に、やまとんちゅとして「琉歌」を書くことは、桑田にとって難しい仕事だったに違いありません。ゆえに、その歌詞は、慎重に言葉を選んでいる印象であり、本土の人間として責任を十分に感じつつも、この島に恒久的平和が訪れることを願うような内容となっています。なおこの曲は、『筑紫哲也 NEWS23』(TBS系)のエンディングテーマにも採用されていました。
平和の琉歌 ~Stadium Tour 1996“ガー...

平和の琉歌 ~Stadium Tour 1996“ガールズ万座ビーチ”in 沖縄~

沖縄宜野湾海浜公園野外劇場にて行なわれたライブ映像とその舞台裏を収録したドキュメント作品がDVDで登場。

平和の琉歌(サザンオールスターズ)

1996年10月2日リリース

4.2.3.(中島みゆき)⇒在ペルー日本大使公邸占拠事件

現地時間1996年12月17日。ペルーの首都リマにある日本人大使館が、テロリスト14人によって占拠されました。テロリストたちは人質の解放を条件に、逮捕・拘束されている同朋全員の釈放や身代金の支払いなど、計4項目を要求。ここから約4ヶ月間人質は拘束され、事件発生から127日後の4月22日、ペルー警察当局によって掘られたトンネルから軍・警察の特殊部隊が公邸に突入し、人質1人、特殊部隊隊員2人、テロリスト全員の死をもって、この占拠事件は終焉を迎えたのでした。

ペルー日本大使公邸人質事件 1/4

そんな在ペルー日本大使公邸占拠事件をモチーフに書かれたのが、中島みゆきの『4.2.3.』です。
蟻のように黒い人影が走り込む 身を潜める 這い進む 撃ち放つ♪
どうせTVの中のことだと考えることもできず 考えないわけにもいかず♪
via 『4.2.3.』歌詞より
このように、テレビの中で繰り広げられるリアルと、テレビの眼前に自分がいるリアル。2つの現実の狭間で、揺蕩っているみゆきの戸惑いが描写されています。

さらには、こう続きます。
リポーターは日本人が手を振っていますとだけ嬉々として語り続ける♪
担架の上には黒く煤けた兵士♪
via 『4.2.3.』歌詞より
みゆきの批判的な視点が冴えを見せ、「日本と名のついていないものにならば いくらだって冷たくなれるのだろう」と結びます。
『4.2.3.』が収録されたアルバム『わたしの子供にな...

『4.2.3.』が収録されたアルバム『わたしの子供になりなさい』

1998年3月18日リリース
26 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

1982年の邦楽ヒット曲 ランキング。売上枚数「年間ベスト10」はこの曲だ!

1982年の邦楽ヒット曲 ランキング。売上枚数「年間ベスト10」はこの曲だ!

1982年にはどのような曲が流行っていたのか?売上枚数で見るリアルな年間ベスト10です。改めて振り返ると、聞き覚えのある曲ばかり演歌からフォークまでバランスよく売れているんですよね!
obladioblada | 2,942 view
聴きなおしシリーズ!【1992年・平成4年】のヒット曲ベスト10を振り返る

聴きなおしシリーズ!【1992年・平成4年】のヒット曲ベスト10を振り返る

この1992年のヒット曲は、私にとってドンピシャな年でして、知ってる曲が多い年になります。皆さんにもきっとヒットする曲がランクインされていると思いますので、是非一度聴きなおしてみて頂きたいと思います(^^)/
つきねこ | 6,316 view
聴きなおしシリーズ!【1982年・昭和57年】のヒット曲ベスト10を振り返る

聴きなおしシリーズ!【1982年・昭和57年】のヒット曲ベスト10を振り返る

1982年のTOP10には、あのジャニーズの大御所が3曲ラインインしていました!また、サザンオールスターズやあみんなど、時代を象徴するアーティストもランクインされています。さっそく聴きなおしてみましょう(^^)/
つきねこ | 2,782 view
最高視聴率30%を超えたドラマの主題歌だった8センチシングル10選

最高視聴率30%を超えたドラマの主題歌だった8センチシングル10選

「僕は死にましぇ~ん!」「同情するなら金をくれ!」「ロンバケ現象」他、流行語や社会現象になった人気ドラマの主題歌だった8センチシングル10曲をジャケや歌詞、曲にまつわるエピソードをピックアップしながら紹介!
忌野清志郎、加藤和彦、小田和正、財津和夫、森山良子…伝説のプロデューサーが愛情豊かに綴る『アーティスト伝説』が発売決定!

忌野清志郎、加藤和彦、小田和正、財津和夫、森山良子…伝説のプロデューサーが愛情豊かに綴る『アーティスト伝説』が発売決定!

新潮社より、忌野清志郎、加藤和彦、小田和正、財津和夫、森山良子などのプロデューサーとして知られる新田和長氏による書籍『アーティスト伝説 レコーディングスタジオで出会った天才たち』が発売されます。
隣人速報 | 108 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト