2017年11月20日 更新

「初心忘るべからず」オリンピックとレスリング。

社会人になると、ミスなどした時など時々「初心忘るべからず」とか諭されたり、諭したりすることがあったりします。もとは能楽に出てくる言葉ですが、能楽に限らず万事に通じる事だから現代社会でも使われるフレーズなのかな?と思うこの頃、東京オリンピックが見えてきた今だからこそ思い出す事例があります。

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「初心忘るべからず」

社会人になると、ミスなどした時など時々、「初心忘るべからず」とか諭されたり、諭したりすることがあったりします。

この言葉は室町時代に能楽を確立した世阿弥が著した「花鏡」に出てくるフレーズ。能楽という一つの芸能の為に世代を越えて役者が持つべき心構えを説いた言葉だったりします。大雑把に言うと「いつ何時も真摯に学び、これまでの演技や成功、失敗を忘れずにいる事が芸を磨く為に大切だ」と説いたフレーズです。

能楽に限らず万事に通じる事だから、現代社会でも使われるフレーズなのかな?と思うこの頃、東京オリンピックが見えてきた今だからこそ思い出す事例があります。

東京オリンピックが見えてきた今だからこそ思い出す事例

2013年2月のことでした。国際オリンピック委員会(IOC)がスイスで開いた理事会で、レスリングを2020年開催の五輪での実施が確定する「中核競技」25競技から除外することを決めた…という報道が出ました。確か世界中で「おいそりゃねーだろ(怒)」的なムーブメントが発生した記憶。
実際、その数日後の2月15日、オリンピック発祥の地ギリシャのオリンピック委員会が「オリンピックの歴史に対してだけでなく、スポーツの根幹と逆行することが明らかな決定であることは疑う余地もない」との声明を発表したほか、日本では2月26日 に有志による団体「レスリングを五輪競技に復帰させる会」が中心となってレスリングのオリンピック競技存続を嘆願する署名活動をスタートしました。当時専門紙の編集長をしていた私にも共同通信や地方紙から署名のお願いが届き、もちろん署名しました。
それは、レスリングが消えたらオリンピックにとっての初心が消えるじゃないか、という静かな怒りがあったからです。何のために近代オリンピック第1回(1896年)をギリシャ・アテネで開催したんだ、と。

レスリングはオリンピックにとっての初心

初心に話を戻します。古代ギリシャのエーリス地方オリュンピアで、エーリスの祭神・ゼウス神の神殿のもとで4年に1回行われていたオリュンピア大祭をオリュンピア祭典競技とも言います。これを「古代オリンピック」と表現しまして、紀元前 776~後 393にかけて行われました。ゼウスに捧げる祭礼性があり、かつ、ゼウスが男神という理由から、競技は女人禁制+全裸で行っていたそうなので、相当な野郎臭を感じます。

そして紀元前 708年の第 18回大会で初めて五種競技が実施されました。これは①幅跳び ②短距離競走③円盤投げ④やり投げ5レスリングを1人で選手がやりぬくもので、『日本大百科全書』(小学館)によると、当時の勝者の決め方は、(1)幅跳びの成績で5人を残し、続く3種目で1人ずつ減らし、最後に残った2人がレスリングで勝敗を決する、(2)5種目中3種目(必ずレスリングを含む)に勝てば優勝、などの説がある…とのことで、レスリングに重きが置かれていることがうかがえます。なお、レスリングは紀元前688年の第23回大会から単独の競技として実施されるようになりましたが、同大会から始まった競技にボクシングもあったりします(少年ボクシングは紀元前616年)。

という訳で、古代ギリシャにおいて、レスリングは文化を語る上でも不可欠であり、オリンピックにとっての初心だとも思うのです。

初心が消えたモノを一言で言えば、それは「形骸化」。形骸化した祭典ほど虚しいものはありません。そんなオリンピックも悲しい。結果として外れなかったので、私は嬉しかったです。

そも、ギリシャの祭礼は神との饗宴でもあります。心を飾らずに身一つで楽しむものでもあります。そんな初心を貫く集団がおります。全日本マスターズレスリング連盟の皆様です。先日、彼らの練習の見学の機会に恵まれました。
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レスリングは強者だけの競技にあらず。老若男女、様々な国籍、オリンピックメダリストもチラホラいらっしゃる中で、全員がレスリングを楽しんでいました。生涯を通し、純粋に競技を楽しまれている、そんな素敵な空間でした。ガチ文系人生な自分でもレスリングが出来そうな気持ちになれました。

最後に、「初心」について、世阿弥はこうも述べています。
『初心を忘るれば、初心子孫に伝わるべからず。初心を忘れずして、初心を重代すべし』

初心を忘れずに伝え続けることは、将来の隆盛の為に外してはいけない事だと思います。そんな事を先人も熱く語ってるぜ…という、今回は、まあ、こういうお話でした。
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