笑いの神に魂を売った男 明石家さんま 自身、過去最高という高校時代
2022年2月16日 更新

笑いの神に魂を売った男 明石家さんま 自身、過去最高という高校時代

国民的お笑い怪獣,明石家さんま。24時間ずっと面白く、底抜けの明るさで日本を明るくし続けている男が、最高に面白かったというのが高校時代。この後、プロの世界に入るわけだが、最強の素人時代を振り返る。

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デート当日、映画館はガラガラで、2人はやや後方の席に陣取った。
女の子はさんまが脱いだ制服をキレイにたたんで自分の膝に置いた。
「この世に女神っていたんだと思うくらい、天使が舞い降りたと思うくらいかわいかった。
もう勃起してるわけよ」
スクリーンでは予告編が終わり本編の上映が始まろうとしたそのとき、後方から聞き覚えのある笑い声が・・・・
振り返ってみると最後列に峠、長岡、大西、戒井たちが座っていた。
「ちょっとすまん」
そういってさんまは彼らのところへいった。
「お前ら何しとんねん」
「何しとんねんて心配やからついて来たんやないかいい」
彼らは詰襟を内側に折ってスーツ風にしていた。
「背広みたいでカッコええやろ。
マネしてええぞ」
「ほんまアホやな。
もうええから早よ帰れ」
「手ぇつなげよ」
「もうええっちゅうねん」
「男になれ!」
さんまは売店でジュースを2つ買って席に戻った。
「すまんなあ。
勝手についてきよったんや」
「大西君?」
笑いながらいう女の子。
スクリーンの映画に集中し、何気なく手すりに手を置くとそこに女の子の手があった。
その手に触れた瞬間、さんまの体は電流が走りイスから立ち上がってしまい、女の子は真っ赤な顔でうつむいてしまった。
硬直する2人に、後ろから笑い声と声援を送られた。
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映画館を出た2人は夕暮れの奈良公園を歩いた。
さんまは後ろを確認したがついてきていない。
2人はベンチに座った。
大西との予行演習ではここでキスを迫ることになっていた。
女の子の話を聞きながら
(次の沈黙で・・)
(次の沈黙で・・)
を機会をうかがった。
すると草むらから大西が顔を出し、投げキッスのジェスチャーでGOサイン。
さんまはそれに応じず
「今日はすまんかったな」
「ううん、映画も面白かったし楽しかったよ」
「そやな」
「うん」
と言葉を交わして立ち上がり駅に向かって歩き出した。
翌日、大西はさんまが制服を脱ぐ度、大西はそれを畳んで膝の上に置き、さんまに触れる度に飛び上がって驚いた。
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ある日、全身にトイレットペーパーを巻きつけたさんまは、ロープで吊るされて2階から1階へ降下。
「ミイラ男だ」
と叫び、1階の生徒の視線を一身に浴びた。
すると学校で1番怖い教師、乾井が現れたので逃走。
運動場を全身のトイレットペーパーをなびかせながら逃げる姿に校舎中から笑いや声援が起こった。
乾井は頑丈そうな体と厳格そうな顔を持つ体育教師。
鉄拳による体罰も辞さない指導で全校生徒から恐れられ、笑わせるためなら他人の迷惑など顧みないさんまにとっては天敵だった。
運動会では、まず徒競走でスタートと同時に逆走し、笑いをとったが、乾井に怒られた。
クラス対抗リレーでは、自分だけ封筒を置いて借り物競走のフリをして靴を探しに行って、乾井に怒られた。
クラブ対抗リレーでさんまはサッカー部のアンカー。
第1走者から、サッカー部と陸上部がデッドヒートを繰り広げ、後のクラブは団子状態。
そしていよいよアンカーが登場し、バトンを受け取ったさんまは勢いよく走りだした。
しかし来賓席の前あたりでスローダウン。
後続のクラブもそれに従い、最後はみんなで手をつないで歩きだした。
「杉本ぉ走れぇ~」
乾井が拡声器で怒鳴ったが、さんまは涼しい顔で歓声に応えていた。
「運動会中止じゃー!
ピィー」
笛を吹きながら乾井が鬼の形相で向かってくるとアンカーたちは一目散に逃げ出した。
この間、グラウンドは歓声と笑いで揺れていたが、さんまが捕まった瞬間、静まり返った。
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運動会は中断となって、8人の
アンカーたちはグラウンド中央で正座。
「お前ら何考えとるんじゃ!
パシーン、パシーン、パシーン・・・」
静かなグラウンドに乾井が竹の棒で頭を殴る音が響く。
さんまの横の生徒の順番になり、竹の棒が勢いよく頭に振り下ろされたが、なぜか
「ポコン」
とおかしな音がして、さんまは笑いをこらえきれず両手で顔を覆ってうつむいた。
体を小刻みに震わすさんまをみて乾井は地面に置いていた拡声器を取り
「杉本は泣いて反省しとる。
みんな許したってくれるか?
みんなが力を合わせて一生懸命準備してきた運動会を台無しにしたことを許したってくれるか?」
と熱く語りかけ、
「杉本、お前からも一言みんなに謝れ」
とさんまに水を向けた。
するとさんまは顔を隠していた手を開き、おどけたポーズ。
グラウンドに笑いが広がり、ア然とする乾井のスキをついて逃げ出した。
「杉本ぉ~ピィーーー」
拡声器はハウリング。
怒り狂う乾井は、ものすごいスピードで先回り。
ジョージ・ベストばりのフェイントでかわすさんま。
しかし最後は捕らえられ、新聞部はその瞬間をカメラに収め、後日、学校新聞に大きく掲載した。
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「最初はプロや。
プロにいかなカンアカン。
なんも知らんかったら女に恥かかせる。
男っちゅうのはベッドの上で女に恥かかせたらアカン」
兄、正樹の言葉を、母親のブラジャーで外す練習をしていたさんまと大西は羨望のまなざしで聞いていた。
そして2人はパチンコで稼いだ6000円を持って大和郡山東岡町にあった非合法の遊郭にいった。
「学生さん?
ええ子いてるよ」
中年の女性に引き込まれた店の名は「あずまや」
さんまの相手は30代半ば、色白の女性で、無事、気持ちよく初体験を終えた。
男として一皮むけたさんまが外で待っていると大西が肩を落として出てきた。
「最悪や。
俺の相手、さっきここで水まいてたオバちゃんやった」
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昼間は常に
「何やって笑かそ」
と考え、家に帰ると
「明日は何で笑かそ」
が宿題。
テレビやラジオでネタを仕入れ、ノートに書いた。
そして登校すると、落語、漫談、登場人物を1人でこなす「ひとり巨人の星」、声なしでスポーツ選手の動作を真似る形態模写などを時間の限りやり続けしゃべり続けた。
文化祭では教室1つを使って、2時間の公演を開き
『いやあ京子ちゃん、パーマ当てたん?』
「違うの、昨日、脱水機に頭から突っ込んだの」
『いやあ京子ちゃん、かわいいブレスレットして
「違うの、いま警察に捕まってるの」
『いやあ京子ちゃん、パンツはいてへんやろ?』
「なんでわかるの」
『スカートはいてへんもん』
と新作、京子ちゃんシリーズをリリース。
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英語教師、坂本は、ときどき授業を中断し、さんまに新作を発表させた。
そして
「杉本、お前、吉本に入れ」
といった。
「芸人って売れへんかったら悲惨ですよ」
「お前は絶対イケる。
俺が保障したる」
「売れんかったら先生の養子にしてもらうで」
「それだけは勘弁してくれ」
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高3になった春、体育館で新入生に向けてクラブ説明会が行われ、サッカー部副キャプテンのさんまは、1番目最初に登壇。
ペーパーなし、完全アドリブで笑いをとりながらサッカー部を紹介。
大きな拍手を浴びて降壇した。
すると2番目のバスケットボール部のキャプテンが
「杉本、バスケット部の紹介もやってくれへん?」
というので
「おお、ええよ」
と引き受け、再び壇上へ。
「えーバスケットボール部の杉本です。
バスケットボールに君の青春をかけてみないか?」
爆笑をとって降りると
「俺んとこも頼むわ」
とテニスキャプテンに頼まれた。
「よっしゃ、まかせとけ」
3回目からはさんまが登壇するだけで笑いが起きた。
「そろばん部の杉本です。
よろしくお願いします」
「俺はー相撲部の杉本じゃー」
口調やキャラクターを変えながら結局、21あるクラブのすべてを紹介。
新入生は疲れるほど笑い、さんまにとっても人生で1、2を争うほどのウケだった。
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ある日の放課後、さんまが教室でしゃべっていると、サッカー部の後輩が飛び込んできた。
「殴りこみです」
サッカー部員が他校の生徒をトラブって、相手の学校が仲間を引き連れ校門前まで来ているという。
(俺関係ないやん)
さんまは内心そう思いながら、後輩の手前、校門へ向かった。
(多分、殴られるんやろうなあ。
痛いやろうなあ。
でもガマンしよ。
手ぇ出しても絶対にやられるから絶対抵抗せんと、そのうち誰かが助けに来るやろう。
冷静に冷静に)
と自分に言い聞かせながら校門に近づくとあちこちから
「おお!杉本や」
「杉本先輩よ!」
という声が聞え、それに相手の高校の眉毛を剃り落とした男が反応し睨んできた。
「お前、誰や!?」
「杉本いうもんやけど」
「杉本?」
相手はなにやら相談し始めた。
「杉本ってヤーちゃんの知り合いの杉本か?」
「ヤーちゃんて吉田のヤーちゃんのことかいな?」
「おお」
「まあ知り合いやけど」
吉田のヤーちゃんとは中3のときに相撲大会の決勝で戦った吉田のことで、その後、奈良の総番長となっていた。
「自分かいな。
ヤーちゃんと相撲でええ勝負したいうんは・・・
よう聞いとるわ。
まあほんなら帰るわ」
といって男たちは去った。
心臓はバクバクと音を立、足はガクガクと震えていたさんまは、胸をなでおろし、振り返った瞬間、学校中から拍手が起こり、笑顔で両手を挙げて応えた。
この一件の後、新聞部が全校生徒を対象に行ったアンケートを行ったところ「好きな男性芸能人部門」で郷ひろみ、西城秀樹、野口五郎らアイドルに並んでさんまは7位にランクイン。
他校の女生徒がさんまの顔をみるためにやってきて、さんまは自分のサインを50円で売った。
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このとき笑福亭松之助は48歳。
22歳で笑福亭松鶴に入門し、いつもいかに目立つかを考え、タキシードに半ズボンとサンダル、あるいはシャツにネクタイをしめて上から着物を羽織って高座に上がったこともあった。
落語だけでなく、宝塚新芸座(芸人を中心とした軽演劇集団)、吉本ヴァラエティー(新喜劇の前身)、松竹芸能の劇場でも役者や作家として活躍し、テレビや映画にも出演するなど落語家としてハミ出した活躍をしていた。
「この人の弟子になりたい」
直感的に思った18歳のさんまは、秋、京都花月の裏の公園で入り待ち。
やがて姿を現した笑福亭松之助に声をかけようとしたが緊張して声が出ない。
気づかず楽屋口に向かう笑福亭松之助に思わず
「ちょっとちょっと」
と大声で呼び止めてしまった。
「なにか?」
「あのぉ、奈良から来た杉本という者ですけど、弟子にしてくれませんか?」
「落語やりたいの?」
「はい、あのぉ・・・」
「ほな今からワシ、舞台あるからちょっと待っとき」
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  • (^吉本^) 2022/2/17 07:43

    昭和のころ”いいとも!”コーナー「日本一の最低男」でイントロのとき「しゃんまーパァ~」といって
    親からいやがられた

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