蒸気機関車を追うブームってどんなブーム?
2023年8月27日 更新

蒸気機関車を追うブームってどんなブーム?

約10年間、蒸気機関車が全車両廃止となる1795年まで起こったSLブームを調べてみました。

210 view

はじめに

1960年代から国鉄が無煙化政策を打ち出し、日本全国からSL(蒸気機関車)が廃車となっていきました。

このことにより、鉄道ファンはもとより、多くの人が日本から消えてゆくSLを追いかけ、別れを惜しんだというのがSLブームです。

このブームの期間は、1965年からSL全廃の1975年までの約10年間とされています。

鉄道ファンの裾野を広げた

このSLブームでは、日本の経済成長に伴い、カメラや録音機材が一般に普及したことも大きく影響し、SLを写真に収める者や線路脇から車両の音を録音する者、実際にSLに乗る者など、SLの見た目以外の鉄道ファンも増えたのでした。

そんな中、岡山県の伯備線・布原信号場(現・布原駅)や北海道の函館本線・上目名駅(現・廃駅)は有名撮影地となっており、伯備線・布原信号場では1972年までD51形3両で貨物列車を牽引する蒸気三重連の撮影名所となりました。函館本線・上目名駅は当時から鉄道でのアクセスが良く、お目当てのSLを撮影する名所となっていました。
伯備線は現在でも鉄道ファンの撮影名所であり、秋の紅葉の時期は多くのファンが訪れています。
布原駅

布原駅

動力近代化計画と無煙化計画

1959年に答申された「動力近代化計画」には、「昭和35年度から50年度までに主要線区5,000kmの電化と、その他の線区のディーゼル化を行い、蒸気機関車の運転を全廃すべきである。そして、投資額は電化施設955億円、車両関連施設その他765億円(電化費338億円、ディーゼル化費427億円)、車両3145億円(電化費1420億円、ディーゼル化費427億円)で合計4865億円としている」とありました。
この背景には、151系や101系に代表される1957年(昭和32年)以降の新性能電車の登場や、液体式変速機の実用化で1953年(昭和28年)のキハ10系以降、長大編成運転可能となった気動車の台頭などが挙げられます。
151系「こだま」 1960年 国鉄パンフレット

151系「こだま」 1960年 国鉄パンフレット

キハ10 18(加悦SL広場の保存車)

キハ10 18(加悦SL広場の保存車)

この動力近代化計画に伴い、国鉄の無煙化計画は、明治・大正時代に製造された古参の機関車と幹線用の大型機関車、次いで地方線区と支線区の中・小型機関車を電車やディーゼル車に置き換えていったのでした。

特に東海道・山陽本線は新幹線開業に伴い電化は早期に進められました。両線で使用されていた大型機関車の一部は、呉線・函館本線などの非電化の幹線に転用されたり、軽軸重化改装を施されて他の路線に転用されたりしましたが、小回りが利く小型機関車もDD16形などに代表される軽量ディーゼル機関車の登場により、存在価値を失っていったのでした。

構内入換用の蒸気機関車は後継機の開発が上手くいなかったので、後年まで生き残っていましたが、1970年代に入ってDE10形などの入換用のディーゼル機関車が登場すると、次々と置き換えられていきました。

実用機関車とSLブームの終焉

SLブーム最盛期の1972年に「鉄道100年記念」として京都に梅小路蒸気機関車館(現・京都鉄道博物館)が開館しています。これはブームに乗ってということではなく、産業遺産の保存にと建設されたものですが、SLブームを連想させる建物の一つとして挙げられますね。
梅小路蒸気機関車館

梅小路蒸気機関車館

SLの運行末期となる1973年に、小海線(山梨県から長野県を結ぶ路線)にてファンの熱意に答えた形で、国鉄がC56形の旅客列車を復活運転しました。

ですが無煙化計画は進み、SLは1974年11月に本州から、1975年3月に九州から相次いで姿を消し、1975年12月14日「さようならSL」のヘッドマークを掲げたC57 135による室蘭本線室蘭 - 岩見沢間の225列車が運行されたの最後に、蒸気機関車牽引の定期旅客列車は姿を消しました。

その後、入替え作業車両などの旅客以外のC57形・D51形・9600形は残りましたが、1975年12月24日に夕張線(北海道)をD51 241による石炭列車が運行されたのち消滅し、1976年3月2日に9600形による入換え作業を最後に国鉄から姿を消し、ブームも終焉を迎えたのでした。

知ってましか?最新国産SL

日本では通常営業しているSLは消滅していますが、実は消滅後に日本製のSLが誕生しているのです。

それは、1983年に開園した東京ディズニーランドのアトラクションである「ウエスタンリバー鉄道」の1Bテンダー機関車両です。燃料は重油専燃ですが、協三工業が製造しました。テーマパークのアトラクションですが、本物の蒸気機関車です。
トミカ 1/91 ウエスタンリバー鉄道(東京ディズニー...

トミカ 1/91 ウエスタンリバー鉄道(東京ディズニーランド)

SLの保存と観光SLの活躍

鉄道に全く興味のなかった者までSLを追いかけるようになったSLブーム。こうしたことにより、消滅するSLを保存しようという動きが生まれ、これに先駆けて行動を起こしたのが大井川鉄道(現:大井川鐡道)です。1970年8月にはSLの動態保存運転を開始しています。
C11 227

C11 227

25 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

JR西日本が保有し運行している臨時快速列車「SLやまぐち号」をデザインしたTシャツが登場!

JR西日本が保有し運行している臨時快速列車「SLやまぐち号」をデザインしたTシャツが登場!

JR西日本が保有し運行している臨時快速列車「SLやまぐち号」をデザインしたTシャツが、山口県山口市にある百貨店「山口井筒屋」で開催されている、OJICO期間限定ショップで先行販売中です。
新客車投入間近。国鉄唯一のSL「SLやまぐち号」とは?

新客車投入間近。国鉄唯一のSL「SLやまぐち号」とは?

ミドルエッジ世代が子どもの頃のSLといえば、国鉄山口線を走っていた「SLやまぐち号」でした。新しい客車の登場と、D51形の復活で再び注目を集めている「SLやまぐち号」に注目していきます。
篠田恵三 | 1,740 view
【D51】デゴイチ、44年ぶりに自力走行!!

【D51】デゴイチ、44年ぶりに自力走行!!

6月25日、あの「デゴイチ」の827号機が44年ぶりに自力走行を果たしました!子供の頃機関車に夢中になった方は必見ですよ!
隣人速報 | 1,796 view
『好奇心が原動力』高畑勲・宮崎駿両監督の先輩アニメーター『大塚康生』のワクワクする仕事術!

『好奇心が原動力』高畑勲・宮崎駿両監督の先輩アニメーター『大塚康生』のワクワクする仕事術!

『未来少年コナン』や『カリオストロの城』の作画監督で知られる『大塚康生』さん。のびのびとした画風・ダイナミックな動きを取り入れたアニメーションは、大塚さんの人生の生き方、考え方そのものが反映されていました。大塚さんの類稀なる画力、機関車・ジープへの愛情、そして宮崎駿・高畑勲両監督と過ごしてきた若き日々を知っていただけたらと思います。
山吹 | 10,186 view
”シュッシュ~ポッポ♪”は過去のモノ?「デゴイチ」の愛称で親しまれたD51形蒸気機関車。

”シュッシュ~ポッポ♪”は過去のモノ?「デゴイチ」の愛称で親しまれたD51形蒸気機関車。

デゴイチの真似をして”シュッシュ~ポッポ♪”なんて掛け声、子供の頃やりましたよね。縄跳びの紐のなかに並んで、みんなで腕を回したものです。あのとき真似したデゴイチは「D51形蒸気機関車」、ミドルエッジ世代は実際に乗ったよりも幼いころにおもちゃで手にした記憶や「銀河鉄道999」のイメージが強いかもしれませんね。
青春の握り拳 | 1,990 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト