【確信の逃亡劇】サニーブライアン
2016年11月25日 更新

【確信の逃亡劇】サニーブライアン

1997年のクラシック戦線を駆け抜けたサニーブライアン。それは奇跡でもフロックでもなくサニーブライアンの能力を信じた関係者の確信があった。怪我により短い競走馬人生ではあったが、その中で眩いばかりに光輝いた二冠馬の軌跡を追います。

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ジュニアカップで賞金を加算した次走は皐月賞トライアルの弥生賞であった、この弥生賞ではランニングゲイルの3着となり優先出走権を獲得した。しかし、サニーブライアンはさらに若葉Sにも出走をする。この経緯に関して、調教師の中尾は馬体が絞りにくいためだとしているが、賛否両論がある。
しかも若葉Sでは1番人気で4着と人気を裏切る形となり、その評価を落としてしまう。

皐月賞

大舞台皐月賞の前に、思うような結果を出せなかった事により、周囲では鞍上のせいという風潮がで始めていた。当時の大西騎手はベテランの域であったが成績の面ではマイナー騎手の域を出ていなかった。また、馬主の宮崎氏も毎年数頭を持つ程度の個人馬主で、この時はサニーブライアン1頭のみの所有であり、出来れば有力騎手を乗せ少しでもクラシック制覇への確率を高めたいと思うのは当たり前と思われていた。もちろん、大西騎手と師匠の中尾調教師共にその覚悟を決めていたが、馬主の宮崎氏は「サニースワローの頃からお世話になっている。いい馬が来たからと言って乗り替わりは申し訳ない」と言い、逆に激励をした。

幸運を味方に

今までの経験から皐月賞では「逃げ宣言」をしていた大西騎手は、更に枠順についても外であれば外であるほど良い、出来るなら大外でっと思っていた。一般的には逃げ馬の大外枠は出遅れたときのリスクなどが高く歓迎されないことが多いが、デビュー戦より手綱を取っている大西騎手は虎視眈々と狙っていた。そして、希望通りの18番を引く。幸運もサニーブライアンに味方し始めていた。

予想通りの展開

この年の皐月賞は1番人気にメジロライアンの初年度産駒のメジロブライト、2番人気に父にランニングフリーという渋さに鞍上が武豊のランニングゲイルと父内国産馬が人気となっていた。サニーブライアンは臨戦過程などが嫌われ、11番人だった。

理想ともいえる18番を獲得したサニーブライアンと大西騎手はスタート直後ダッシュ良く飛び出す。1コーナーでは先頭を奪いった。がここで掛かったテイエムキングオーが外から競りかけてくる。大西騎手は相手が掛かっていることを確認すると一度2番手に下げ、相手の脚が上がってきた3コーナー手前で再び先頭に立つ。有力馬は軒並み後方でけん制しあい動くに動けないなか、従順なサニーブライアンだけが理想的なレースを進めていた。4コーナーになってもやっと後続が動き出す。直線にはいり
父親譲りの豪脚で外から追い込むメジロブライト、馬場の真ん中からシルクライトニングと追い込んでくるがサニーブライアンの余力は十分。2着シルクライトニングをクビ差抑えてクラシック制覇を果たす。
口下手で成績が上がらない大西騎手にとって、デビュー18年目にして初重賞が初G1しかもクラシック戦となった。

日本ダービー

皐月賞を制したものの、11番人気での逃げ切り勝ちは「レース展開のアヤ」「フロック」とする声が多く、ダービーへの最有力候補とされることはなかった。そんな中今度はダービー前にプリンシパルSに出走する事が陣営より発表された。皐月賞馬がダービートライアルに出走する事は異例であり、また世間を騒がせた。因みにこの出走に大西騎手は反対であり、体を張ってでも止めるつもりだったと後に語っている。実際にはレース前に他の馬に蹴られ外傷を負った為、出走回避しダービーへ直行となった。

新たなライバルの登場

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日本ダービーを前に新たなライバルが登場した。サニーブライアンが出走回避したプリンシパルSを快勝したサイレンススズカだった。サイレンススズカはデビュー時より非凡なスピード能力で大差の逃げ切りを演じており、ダービーでもこの馬が逃げるのではないかと言うものもいた。皐月賞同様「逃げ宣言」をしていたサニーブライアンにとっては他のどの馬よりも同型のライバル出現は恐ろしい存在であった。

勝つための闘い

サイレンススズカというライバル出現に対し、大西騎手はあえていろいろなところで「逃げ宣言」を強調した。また、レースが近づくにつれて強気な発言を繰り返した。サニーブライアンの低評価を逆手に取ったこの作戦は思いのほか成功し、サイレンススズカ陣営は無理に競りかけることを止め、他の陣営にも余計なマークをさせず、2400mの単騎逃げを可能にしていく。
そして、皐月賞と同じく運もサニーブライアンの二冠制覇を後押しする。皐月賞同様18番枠を希望していたが、金曜日の抽選時に大西騎手自身の手で18番を勝ち取る。こうして、レース前から始まる闘いをへて、手応えを感じていた。

確信の日本ダービー制覇

こうして迎えた日本ダービー。大西騎手はパドックでサニーブライアンを見てさらに勝利への手応えを感じたという。「中間順調さを欠いたように見えない完璧な仕上がり」で、それは中尾調教師の執念に近い渾身の仕上げであった。サニーブライアンは6番人気。皐月賞馬としてはあまりに評価が低かったが、サニースワローの2着から10年、生産者の村上氏、馬主の宮崎氏、中尾調教師、大西騎手は悲願達成が近いことを感じていた。

逃げられないサイレンススズカ、後方のままの有力馬

リーディング下位が指定席となっていた騎手と厩舎。大オーナーとはいえない馬主。そして家族経営の小さな牧場で生まれたサラブレットによるチームのダービー制覇は本当に痛快でした。 サニーブライアンにはまだまだ長生きしてほしかった。
スタート後、大外からサニーブライアンが先手を奪う。続いてサイレンススズカが追う。しかし、それ以上は追いかけず抑え込みにかかる上村騎手、そして皐月賞同様後方に待機をしてけん制しあう有力馬陣営正に、レース前から始まっていた「勝つための闘い」をしていた、大西騎手とサニーブライアンにとって100%の展開となった。サイレンススズカ騎乗の上村騎手はレース後に「なぜ逃げなかったのか?」という質問に対し「サニーブライアンは絶対に退かないと思った、競りかけたら共倒れだと思った」と語っている。
3コーナーを過ぎ後続の馬たちもさすがに動き出す。しかし、マイペースで無理をしていないサニーブライアンは直線を向いても抑えたまま後続を突き放すほどの手応えだった。残り200mを過ぎラストスパートを開始し、最後外からシルクジャスティスは猛追するが半馬身迫ったところがゴールであった。寡黙な大西騎手がゴール板を過ぎ大きくガッポーズを見せた。それほどうれしいものだった。
馬主席でみていた宮崎氏、村下夫妻も抱き合って喜んだという。10年の時を経て関係者全員が喜びを爆発させ分かち合った。
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