【ジョージ・フォアマン】45歳で世界ヘビー級王者に返り咲いた伝説のボクサー
2020年2月7日 更新

【ジョージ・フォアマン】45歳で世界ヘビー級王者に返り咲いた伝説のボクサー

象をも倒すといわれたパンチ力で最強と呼ばれながら『キンシャサの奇跡』でモハメド・アリに敗れたジョージ・フォアマン。 一度は引退するもカムバックを果たし、20年ぶり45歳で世界ヘビー級王者に返り咲いた伝説のボクシング王者について栄光から挫折そして復活の経歴、モハメド・アリやマイク・タイソンとの比較、ヘビー級最強説を紹介。

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復帰したジョージ・フォアマンのファイトスタイル

1987年3月9日に下馬評を覆し4RTKOでスティーブ・ゾウスキーに勝利し復帰戦を飾ると、かつてのようにコツコツと勝利を積み上げていく。

元々スピードがあったタイプでは無いフォアマンは老いと体重増でさらに動きが遅くなり、「象をも倒す」と言われたパンチもスローに見えることがあった。

体格を生かしてプレッシャーをかけ、重い左ジャブと丸太のような剛腕から繰り出す左右のフック、もぐりこむ相手にはショートアッパー。
こうした基本的な戦術は若い頃と変わっていない。

だが、むやみに拳を振り回しスタミナを浪費することはなくなり、時にはディフェンスを駆使する理知的な戦い方をするようになっていた。
相手をじっくり見ながら、ベタ足で牛のようにノシノシと追い込む姿は若い頃とはまた違った迫力を感じさせる。

痩せるべきだという声に対して、フォアマンは「体重を減らそうとした事もあったけど、気が変わって皆に言ったのさ。ライオンに猫と闘う為に体重を減らせとは言わないだろう。減らす必要なんてないね。俺は大男なんだからさ。山を倒す事はできないだろう。」と考えを述べている。

アーチー・ムーア譲りのクロスアーム・ブロック

フォアマンの若い頃からサポートをつとめていたアーチー・ムーアは、フォアマンが復帰してからは特に重要な参謀役として活躍した。

両腕を胸の前で交差させるクロスアーム・ブロック、別名『アルマジロ・スタイル』でじわじわとフェイントをかけながら前進、少ない手数で強打を爆発させる戦術は、まさにフォアマンが師匠ムーアから継承したスタイルである。
フォアマンのクロスアーム・ブロック

フォアマンのクロスアーム・ブロック

フォアマンの太い腕を交差するとボディから顎まで拳の入る隙間は無く、フォアマンより背の低い対戦相手は打つ場所を失ってしまう。
アーチー・ムーアのクロスアーム・ブロック

アーチー・ムーアのクロスアーム・ブロック

アルマジロのようにガードを固め、隙をついて右強打を叩き込むスタイルでKOの山を築いた。
129とも141とも言われる通算KO回数はいずれにしても史上最多であり、今後も抜かれることのない記録だと言われている。
アーチー・ムーアは世界ライト・ヘビー級の王座を39歳で獲得し、なんと49歳まで王座を保持していた。
フォアマンに破られる前の最高齢王座獲得記録を保持していたのはムーアであり、ベテランボクサーに必要なディフェンステクニックやスタミナ配分、駆け引きなどを惜しみなく愛弟子に注ぎ込んだ。
※ムーアの生年については諸説あり1~2年程度の幅がある。

後にフォアマンが起こした奇跡は、このアーチー・ムーアなしでは起こりえなかった。

衰えを感じさせない驚異のKO率

一般的なベテランボクサーと異なり、フォアマンは40歳を超えても、ポイントを稼ぎ判定勝ちを狙うようなボクシングはしなかった。

ガードの上からでも効かせる大振りパンチ、相手の隙をみて急所に叩き込むコンパクトなパンチ。
二つをうまく組み合わせ巧みにダウンを奪っていった。
手打ちに見えるようなパンチであっても剛腕から繰り出された拳がクリーンヒットすると、ヘビー級の猛者たちが面白いように倒れていく。
若さとスピードを失っても『象をも倒す』パンチは健在だったのだ。

そして、復帰から約4年を掛け24戦無敗(23KO)95%を超えるKO率を引っ提げてフォアマンは世界王座に挑むことになった。
ガードを固めた相手にも…

ガードを固めた相手にも…

コンパクトなモーションから繰り出されたパンチは、ガードの隙間を掻い潜り一発で相手を倒す威力を持っていた。
背中パンチでダウン!

背中パンチでダウン!

フォアマンの強打から逃れようと屈んだ相手の背中にパンチ。
こんなダウンシーンは見たことない…。

1991年4月19日、王者イベンダー・ホリフィールドに挑戦

時のチャンピオンは、あのタイソンを倒したジェームス・ダグラスを3ラウンドKOで破ったイベンダー・ホリフィールド(当時28歳)であった。
世界挑戦資格を得ていたフォアマンは、王者イベンダー・ホリフィールドの初防衛戦の相手に指名される。
42歳のフォアマンにとって16年ぶりの世界タイトルマッチが決定した。

ジョージ・フォアマン vs イベンダー・ホリフィールド

フォアマンがいかに連勝を重ねていても、The Real Deal(ザ・リアルディール、本物)の異名をもつテクニシャン・ホリフィールド前では相手にならないだろうと思われており、『ベテランボクサーの記念挑戦』とまで報道された。
しかし、誰もが予想しなかった白熱した展開に…。
前半、王者ホリフィールドは卓越したスピードとディフェンス技術でフォアマンの強打をことごとく躱して、素早いコンビネーションで反撃。
フォアマンのブロックを突き破り、何度もクリーンヒットを当てていく。
だが、フォアマンは下がらない。まるで山のようにそびえ立ち、何事もなかったのように大砲でホリフィールドを追い込む。

中盤以降はお互いに正面から打ち合うシーンが多くなる。
フォアマンの重い一発をくらっても、ひるまずスピードある連打を打ち込むホリフィールド。
9Rにはフォアマンをダウン寸前のところまで追いつめた。
フォアマンも必死に応戦、これまで多くの相手をキャンバスに沈めてきた剛腕で王者を何度もグラつかせるシーンを見せた。

終盤になっても全く衰えない元王者と現王者の闘志は観客たちの心を打ち、スタンディングオベーションの中、試合終了のゴングが鳴り響いた。

結果は3-0でホリフィールドの判定勝ち。
だが、敗れたフォアマンの健闘を称える声は、勝者を讃辞する声を遥かに上回っていた。
「老いは恥ではないのだよ。」
via ジョージ・フォアマンの名言
ホリフィールドとの激闘を終えた『戦う宣教師』フォアマンは、挑み続ける精神こそが最も重要で年齢は関係ないと語った。

この試合を見たものに、その言葉を疑う者はだれ一人いなかった。

世界王座を諦めず挑戦を続けるフォアマン

ホリフィールド戦で健闘し「もう十分戦ったから引退してもいいのではないか」という声も出たが、フォアマンは現役を続け、3連勝すると1993年6月7日、トミー・モリソンの持つWBO世界ヘビー級王座に挑戦。
善戦したが、またも判定負け。

今度こそ引退かと噂されたが、そこから半年後ホリフィールドを破ったマイケル・モーラーの持つWBA・IBF世界ヘビー級王座に挑戦した。

復帰後3回目の世界王座挑戦で奇跡を起こしたフォアマン

1994年11月5日、WBA・IBF世界ヘビー級王者マイケル・モーラーに挑戦。

王者モーラーにとっては、人気のあるフォアマンは単なる客寄せパンダという認識で、負けるリスクが無いおいしい挑戦者としての指名したという。

モハメド・アリはフォアマンは勝てるか?との問いに小さく首を振り「オールドマン(もう老人だよ)」とだけ答えた。

この試合フォアマンはどことなくこれまでと様子が違っていた。
練習を非公開にしたり、復帰後は穏やかだったフォアマンが記者会見でモーラーに食ってかかるシーンも見られた。
ピリピリとしたオーラを発するフォアマンはまるで以前の『獰猛さ』を少し取り戻したようだった。
試合当日には、「これは初めてのことだが、今日だけは自分のために戦う」とコメントしている。
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