「復讐するは我にあり」戦後最悪連続殺人事件の実際の逮捕劇の真相とは?
2021年10月21日 更新

「復讐するは我にあり」戦後最悪連続殺人事件の実際の逮捕劇の真相とは?

日本で実際にあったシリアルキラーによる殺人事件は1960年代に起こっていた!その名も『西口彰事件』。映画『復讐するは我にあり』を見るだけでは足りない事実とは?映画よりもおぞましい時間がそこにはあったその事実とは?

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『復讐するは我にあり』とは

『復讐するは我にあり』は佐木隆三氏による長編小説で第74回直木賞を受賞しています。佐木隆三氏が意識したのはアメリカンの作家・トルーマン・カポーティ著『冷血』を意識し、執筆されたと言われています。

『冷血』も実際に起こった一家殺人事件を題材にし、これまでなかった小説のジャンルに「ノンフィクション・ノベル」が加わったきっかけの作品です。実際に起こった事件をベースにプラス小説としてのフィクションを加えて現実と想像のミックス、または融合された作品が誕生したということです。

佐木隆三氏の『復讐するは我にあり』は1960年代の連続殺人事件「西口彰事件」が題材となっています。

小説『復讐するは我にあり』は映画化され、1979年4月21日に公開されています。小津安二郎の助監督を務めた経歴を持ち、映画『復讐~』が大出世作となりその後の代表作は『楢山節考(1983年)』などがあります。
映画の連続殺人鬼を緒形拳が演じています。映画化が決まった時、監督は渥美清さんにオファーをしましたが寅さんのイメージを真逆な役だったことで寅さんのイメージが崩れるという理由で断られています。映画の連続殺人犯・榎津厳を緒形拳が演じたことでよりハマり役とも言われ、よりリアリティの高い作品だと高評価を受けました。実際の事件の犯人・西口彰と緒形拳さんもどことなくリンクするその風貌も映画を見ているとピッタリ合った様に思えます。

ストーリー

昭和38年。当時の日本の人々はたった一人の男に恐怖していた。榎津巌(えのきづ いわお)。キリスト教カトリック信者で「俺は千一屋だ。千に一つしか本当のことは言わない」と豪語する詐欺師にして、女性や老人を含む5人の人間を殺した連続殺人犯。延べ12万人に及ぶ警察の捜査網をかいくぐり、78日間もの間逃亡したが、昭和39年に熊本で逮捕され、43歳で処刑された。映画ではこの稀代の犯罪者の犯行の軌跡と人間像に迫る。
映画は連続殺人犯・榎津の殺人を繰り返しながら逃亡生活の様を描いていますが、実際の「西口彰事件」の緊迫する逮捕劇の事実は描かれていませんでした。

戦後最悪の連続殺人「西口彰事件」

西口彰事件は戦後最悪の連続殺人事件と言われ世間を震撼させました。連続殺人犯は前科4犯の西口彰。事件は1963年10月福岡で男性2人の遺体が発見され、西口が指名手配となります。
その後、指名手配されていることを知った西口は瀬戸内海の連絡船で置手紙と靴を置き、投身自殺と見せかけ、逃亡を続けますが警察も偽装の判断で指名手配を続けます。

西口の逃亡は全国にまたがり、その事実が日本中を巻き込んだ犯行として恐れられていました。
捕まるまで5人を殺害しています。その中には自分と関係のあった女性も含まれていました。

事件の経緯~逮捕後経過

年月日 場所 犯行内容~経過
1963年10月 福岡県 専売公社職員、運転手の2人殺害
1963年11月 静岡県 旅館経営親子殺害
1963年12月 千葉県、北海道、東京都、栃木県 金をだまし取る
1963年12月29日 東京都豊島区 弁護士殺害
1964年1月 熊本県 未遂~通報により逮捕
1964年 死刑求刑
1964年12月23日 福岡地裁小倉支部 死刑判決
1965年8月28日 福岡高裁控訴棄却 控訴棄却
1966年8月15日 上告取り下げ 死刑確定
1970年12月11日 福岡拘置所 死刑執行
西口は自らを大学の教授、弁護士などと偽り金の搾取を続けていました。殺人の被害者に実際の弁護士がいて弁護士バッチも奪い悪用していました。

最後、逮捕されたときも弁護士だと偽りバッチもつけていたと言うことです。

連続殺人犯を家に招き入れた家族

連続殺人犯・西口彰が逃亡先であった熊本で逮捕されることになりますが、そこで訪れた冤罪被害者を救う活動を行なっていた古川泰龍氏一家の元で恐怖の一夜が舞台となる出来事がありました。これこそ、映画『復讐するは我にあり』を見るだけでは足りない事実であって、映画よりもおぞましい時間がそこにはあった事実ということになります。
すでに5人を殺害し指名手配されていた西口は、日本中どこへいっても指名手配の張り紙がされている状況の中、1964年の正月に熊本県玉名市の家族と暮らしていた古川家に東京で弁護士をしていると電話をかけます。訪問する表向きの理由は古川氏が関わっていた冤罪性のある事件の解決に向けて協力したいというものだったということです。

エリート弁護士、古川氏と親交のある大学教授や弁護士の名前も知っていたことで信用してしまうことに..。が、古川家の三女、11歳の瑠璃子ちゃんが川村と名乗るその弁護士が連続殺人犯の西口彰だと気づきます。そして西口滞在中に手配書の顔を姉や古川氏本人も確認し、川村と名乗る男が西口彰であると確信します。

そこからおぞましい時間を古川家の人々はおくることになります。連続殺人犯の西口が自分の家にいるという普通だと恐怖で一家全員でその場からすぐにでも逃げ出すところだと思いますが、古川泰龍氏は西口を家に泊まる様に促します。
その意図は?

一家殺害を免れた家族

宗教家として、自分や家族の安全よりも、西口にこれ以上の罪を犯させず確実に捕まえることが大事だと考え、連続殺人犯を自宅に泊めるという決断を下した
この決断から一家は凶悪連続殺人犯と一つ屋根の下で一緒にいることになります。ただ警察には通報し、西口逮捕のために警察官を現場に向かわせるには翌明け方までかかるというのでその時間稼ぎをすることになります。

古川氏は家族を同じ部屋に集め、うち側からカギをかけられるようにして、朝が来るのを待ちます。この古川家のこの緊迫した一夜を映画『復讐するわ我にあり』では描かれていません。
ただこの事件の中でも実はここが一番のおぞましい恐怖なのではないかとも思える状況です。

この古川家の機転で警察が明け方の古川家にやってきて西口は逮捕されます。
西口が古川家に行った目的は古川泰龍氏の資産をなげうって活動しているというその活動費だったということです。そしてその後は折を見て一家を皆殺しにつもりだったと供述しています。

西口の逮捕で12万人の捜査員よりたった一人の11歳の女の子が事件の解決をした、そして古川家の行動は多くの人に賞賛されることになります。

ただ映画『復讐するは我にあり』の作中でも明かされていない、犯人の動機はなんだったのでしょう?警察の取り調べで西口本人が語ったのは「借金の返済と、愛人に気に入られるため」だということです。

逮捕されてから約2年後に死刑確定、死刑確定から4年後に刑が執行されています。

まとめ

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