人生哲学を持ったキャラクター
次に、キャラクターに肉付けされる、性格や考え方についてみていきたいと思います。
松本零士作品の面白さは、壮大な宇宙を舞台にしたストーリー展開です。
しかし、ストーリーとは別に、ハーロックやトチロー個人のセリフが、とても実感がこもっていて、印象に残ったり勇気づけられたりしたことありませんでしたか?
架空の物語であったとしてもフィクションであったとしても、その原点になる一部分は事実でないと説得力がない。そこのところだけはどうしても勉強する必要がある。
それが抜け落ちると土台がない家みたいになる。
松本零士さんはそうした考えのもと、大切に思う人々や御自身の体験を核に、人生哲学を持ったキャラクターを作り上げていきました。
偉大な父の存在
尊敬する父親の生き方や考え方が、作品の中にも大きく影響したそうです。
父親である松本強は、陸軍士官学校を卒業後、テストパイロット、航空部隊の教官を務め終戦時には陸軍少佐にまで上った帝国陸軍の軍人。第二次世界大戦中、その父がテストパイロットをやっていた関係で、4歳から6歳まで兵庫県明石市の川崎航空機の社宅に住み、その後は母親の実家がある愛媛県喜多郡新谷村(現在の大洲市新谷町)に疎開していた。このときアメリカ軍の戦闘機や、松山市へ空襲に向かうB-29などの軍用機を多数目撃、この体験が後の作品に影響を与えたという。
作品に登場する飛行機や戦艦は、多くがプラモデルになっています。
その精巧さ、デザインの美しさが、ファンを惹きつけるのだと思います。
本当のサムライとしての父のイメージ
大戦後半、父親は第32教育飛行隊(1944年2月編成)の隊長として、特別操縦見習士官や少年飛行兵出身の新参パイロットの教育を行っていたが、課程を終え実戦部隊に転出した部下には後に特別攻撃隊の隊員として特攻していった者も少なくなかった。末期には二式複座戦闘機に搭乗し、終戦の日まで連合軍と戦っていたという。戦後、多くの元軍人パイロットが自衛隊入りしたのに対し、「敵の戦闘機には乗れない」と断固拒否。実家がある大平村での炭焼きや、小倉で野菜の行商をしながら線路脇のバラックに住み、その境遇を自ら進んで赤貧へと落としたが、家族で父に反対する者はおらず零士少年も「俺の父親は最高だ、父親と一緒にいられれば俺は満足」と行商の大八車を押したという。この「本当のサムライとしての父のイメージ」は、後にハーロックや沖田十三のモデルとして、松本作品に生かされていった。また松本自身、進駐軍兵士がばら撒くキャンディーなどを「食べたくて仕方なかったが全部下駄で踏みつけて潰した」という。
「飛行機乗り・ひげ・ハーロックという名前」を総合すると、たぶん、松本さんのお父様をイメージしていたのではないでしょうか。
当時、この役の声優を、俳優の石原裕次郎さんが務めました。
たった5分の出番に1000万円の高額なギャラが支払われたことが話題になりましたが、個人的な見解ですが、松本さんは、これだと思う最高の役者さんに、どうしても父のキャラクターを演じて欲しかったのではないかと推察します。
トチローのご先祖様にあたる設定