Chernobyl 1986 チェルノブイリ原発事故 みえない放射能 英雄の戦い  国の理論
2021年7月4日 更新

Chernobyl 1986 チェルノブイリ原発事故 みえない放射能 英雄の戦い 国の理論

1986年4月26日の早朝、ソ連(現:ウクライナ)のチェルノブイリ原発4号機が爆発。人類史上最悪の放射能汚染が引き起こされた。そして25年後、東京電力福島第一原発で事故が発生。事故原因は異なるものの、事故直後、体を張った現場の人たち、被害者への補償が不十分なまま再稼動させようとする原発産業と政府という構図は重なってみえる。

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Surviving Disaster Chernobyl Nuclear Disaster

目にみえない放射能は、未だ不透明

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放射能は、宇宙初期に星の爆発によってつくられた。
地球は星のチリが集まってできたものなので、放射性物質は人類がこの地表にカビのように現れたはるか前から存在していた。

1789年、
マーチン・ クラプロートがウランを発見。
1895年、
レントゲンが、陰極線の実験で紙を透過し蛍光板を光らせる何かが発生していることを発見。
正体がわからないので「X線」と名づけた。
1896年 、
ベクレルが、ウラン鉱石からX線と同じようなものが出ていることを発見
(放射能の発見)
1898年、
キュリー夫妻が、1tのウラン鉱石から0.1gのラジウムを抽出。
ウラン鉱石の中には、ウラン以外にラジウムやポロニウムのような放射性物質が含まれていることを発見。

このように人類が放射能を発見したのは19世紀の終わり。
その正体はわからなかったが、20世紀に入ると、その力を利用し始めた。
 (2285046)

1905年、
アインシュタインが「特殊相対性理論」で、世界で最も有名で最も美しい公式といわれる「E=mc2」を発表。

Eはエネルギー。
mは質量。
cは光の速度。
「物質が運動して光の速度に近づけば、そのエネルギーはだんだん最大に向かっていく」
「質量はエネルギーに変わり得る」
ということだが、突きつめれば
「質量には膨大なエネルギーが閉じ込められている」
ということになり、やがてこの方程式は、「原子力」という驚くべき力を暗示していることがわかった。

1912年、
ラザフォードが「原子核」を発見。
1932年、
チャドウィックが「中性子」を発見。
1934年、
ジョリオ・キュリーが人工放射性元素を合成。
1938年、
ハーン、シュトラスマン、マイトナーがウラン核分裂を発見。
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1942年10月、
第2次世界大戦中、アメリカ、イギリス、カナダは、ドイツより先に原子爆弾を開発するために科学者、技術者を集め「マンハッタン計画」をスタート。
1945年7月16日、
アメリカ、ニューメキシコ州の砂漠において人類史上初の核実験「トリニティ」が行われ、成功。
8月6日、
日本の広島に原子爆弾「「Little Boy(リトルボーイ)」投下。
8月9日、
同じくの日本の長崎に原子爆弾「Fat Man(ファットマン)」が投下。
合計数十万人が犠牲となった。
第2次世界大戦終了後、
ソ連を中心とする共産・社会主義(東側)とアメリカを中心とした資本・自由主義(西側)に世界は二分され冷戦が勃発。
目には目を、核には核をと大量の核兵器を突きつけ合う事態となった。

このように46億年といわれる地球の歴史の中で、人類が放射能の存在を知って、100年程度。
まだまだ未知のシロモノだった。

原子 アトムとウラン

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紀元前の哲学者:デモクリトスが
「元になっている粒子がくっつき合って、この世のすべてのものをつくり上げている」
といい、
「アトム(Atom、「これ以上分けることができない」という意味のギリシャ語)」
と名づけたように、すべての物質は「原子」という直径1/1億cmという小さな粒が集まってできている。
原子の中心には原子核があり、その大きさは、原子が甲子園球場だとすると1円玉くらいとさらにさらに小さい。
原子核の周囲は、電子、陽子、中性子が取り巻いている。
現在、確認されてる原子は118種類。
そのうち地球の自然界を構成しているのは92種類で、例えば、

水素 1個
ヘリウム 2個
炭素 6個
酸素 8個

というように原子の種類は陽子の数で決定する。
ウランは、92個の陽子を持つ自然界で最も重たい原子。
ウランは、1789年にドイツの化学者:マーチン・ クラプロートが発見し,1781年にドイツの天文学者:ウィリアム・ ハーシェルが発見した天王星(Uranus)に因んで名づけられた。

1gのウランが、石炭3t、石油2000ℓ分のエネルギーとなる原子力

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例えば、水素が燃えると水素が酸素と化合し水になる。
(2H2+O2→2H2Oという化学反応)
水は蒸発すれば水蒸気になり凍れば氷になる。
二酸化炭素が凍ればドライアイス。
炭素が燃焼すると2酸化炭素が発生する。
このように原子と原子がくっついて気体、液体、固体、別の物質になることはある。
このとき原子はビクともせず、新しくできたり,別の原子に変わることはない。
この普通は「ビクともしない」原子核を分裂させてエネルギーを取り出す技術が「原子力」だった。
これは一般的な化学反応などとは本質的に違う現象で、 実際、(大昔に地下で生じた痕跡があるが、)地球上で自然に生じることはない。
科学が進み、こういう反応ができることを物理学者が気づき、核分裂の連鎖反応が人工的に実現された。
きっかけはウランだった。
化学において、物質はすべて不変な原子から構成されているという物質観が支配的で原子の変換は否定されてきた。
しかしそれはウランや放射能の発見などが契機となって、その不変性が崩されていった。
ウランは、原子核が中性子を吸収すると、2つ以上の別の原子に分裂するという性質があった。
これを「核分裂」という。
ウランが核分裂が起こすと

・中性子を放出する
・ヨウ素、キセノン、セシウム、ストロンチウムなど2つ以上の放射性物質と割れる(割れ方、何になるかは決まっていない)
・膨大な熱エネルギーが発生する

放出された中性子が、別のウラン原子核へ飛び込んで核分裂を引き起こし、さらに中性子が放出され・・・と核分裂の連鎖を引き起こし、熱エネルギーを得ることを「原子力」という。
1gのウランは、石炭3t、石油2000ℓ分のエネルギーとなる。
(石油の燃焼は、炭素(C)が燃焼し2酸化炭素(CO²)になる化学反応。
このとき熱エネルギーが生じるのは、反応の前後で質量差が生じているからで、その質量変化は1/100億程度。
一方、ウランの核分裂による質量変化は1/1000程度。
1000万倍もエネルギー転換効率が優れ、少ない資源量で多くのエネルギーを得ることができる)

放射性物質と放射線

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ウランが核分裂を起こすと2つ以上の放射性物質となる。
電球が光を発するように、放射性物質は放射線を出す。
放射線は、原子核が壊れるときなどに放出される視覚では捉えられない高速の粒子や高エネルギーの電磁波で、目にみえない光線のようなもの。

・昼も夜もほぼ一定の強さで宇宙から地球に降り注ぐ放射線(宇宙線)、約0.38ミリシーベルト/年
・大地に含まれる放射性物質(ウラン、トリウム、ラジウム、カリウムなど)が絶え間なく出す放射線、年間約0.46ミリシーベルト/年
・飲食で体内に取り込まれる射線、約0.24ミリシーベルト/年
・空気中から呼吸によって受ける放射線、約1.30ミリシーベルト/年

というように場所によって差異はあるものの、地球上どこにいても自然放射線を受けている。
また

・工場での製品の検査
・病院でのX線検査、ガン治療
・農業での害虫駆除や品種改良
・研究分野での物質の検査や年代測定
・発電
・軍事

など人工放射線が様々な分野で利用されている。

放射線が体に及ぼす影響

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目にみえない放射線は光の速さで進み、ほとんどの物質を通過する。
生物の細胞にぶつかると、その分子を破壊し、その際、「フリーラジカル」と呼ばれる分子のかけらが飛び散る。
フリーラジカルは強い毒性があり、これが他の分子を破壊してゆく。
生物は、一定量を超える放射線に対して防衛機能を持っておらず、短時間に多量の放射線を浴びると細胞、組織が破壊されてゆく。
放射線はDNA(遺伝子)も傷つけるため、その本人の肉体だけでなく、その子孫への遺伝的悪影響も危惧される。
DNAは、対になる2本の紐がらせん状に組み合わさった構造になっていて、どちらか一方の紐が損傷しても、もう一方が修復の設計図として機能する。
残された正常な紐をみれば欠けた部分の構造がわかるため、DNAの一部が欠けるとすぐに修復作業が行われる。
DNAの修復機能は必ずしも完璧ではなく、ミスが生じ、突然変異が起きることもある。
突然変異を起こした細胞は死んでしまう場合もあれば、そのまま増殖を続けることもある。
ちなみに「ゴジラ」は、放射能を浴びて突然変異したという設定である。
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