大衆車からの脱却を図ったトラッド・サニー
2017年6月13日 更新

大衆車からの脱却を図ったトラッド・サニー

ラティオの販売終了で、空席となった日産の小型セダン。その座と言えば、かつてはサニーが君臨していました。特に1985年に登場した6代目は、品質やデザインにおいて、その後の方向性に大きな影響を残しました。

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「大衆車だから」を排除した高品質設計

日産サニーは1966年に発売された小型セダンで、日本の販売台数の首位を巡って、長年トヨタ・カローラと競い合ってきました。そのため、このカテゴリーは「大衆車」と呼ばれてきました。

サニーのなかでエポックとなったのが、1985年9月発売の6代目、B12型です。このモデルは「トラッド・サニー」の愛称が付けられました。特筆すべきはボディ品質です。それまではボディ剛性などの品質面で、「大衆車ならこんなもの」という暗黙の了解が設計側にもユーザー側にもありましたが、6代目では高張力鋼板、亜鉛ニッケル合金メッキを用いた防錆鋼板を採用し、ボディ剛性が大幅に高まりました。サニーの大幅な品質向上は、1987年にフルモデルチェンジをした6代目カローラにも大きな影響を与えたと言われています。

エンジンはいずれも直列4気筒で、1500cc、1300ccのガソリンエンジンのほか、1700ccディーゼルを用意。駆動方式は先代に続いてFF方式となりました。その後、1600ccツインカムエンジンやフルオートフルタイム4WDが加わり、バリエーションが充実していきました。

デザイン面では、角張ったデザインの3BOXセダンが特徴で、フロントグリルにはSUNNYの「S」をモチーフにしたシンボルマークが入れられました。ボディ剛性の大幅な向上やボクシーなデザインには、1984年から日産でライセンス生産をしていたフォルクスワーゲン・サンタナの影響が大きかったと言われています。
1985年に発売された6代目。

1985年に発売された6代目。

四角いボクシーなデザインは、「トラッド・サニー」のキャッチコピーによく似合っていた。
前期型のリアデザイン。

前期型のリアデザイン。

クルマのしっかり感がデザインからも伝わり、従来の大衆車のイメージを覆す上質なものとなった。
B15型ターボモデルの内装。

B15型ターボモデルの内装。

上級グレードには、全席パワーウインドーも装備され、バブル経済の入り口とともに、大衆車も大きな転換期となった。

Nissan Trad Sunny 01 30sCM

大衆車にありがちなファミリー層向けの作りから、ビートルズをBGMに大人感ある演出がされたB12型前期のCM。

大規模なMC(モデルチェンジ)でサニー顔が誕生

6代目サニーは、1987年9月にマイナーチェンジを受けました。前期型は、月間販売ランキングで首位に立つほど売れていましたが、このマイナーチェンジで大規模なデザイン変更を受けました。フロントでは、バンパーに付いていたウインカーがバンパー上に移されました。リアデザインでは、ナンバープレートがバンパー上から下に移され、コンビネーションランプの形状も大きく変わりました。これが、いわゆる「サニー顔」の始まりとなります。

メカニズム面では、E15型から新開発のGA15型(1500ccエンジンの場合)となり、主力エンジンの馬力は73PSから85PSに大幅に引き上げられました。サニーが元気だった時代の、意欲的なマイナーチェンジでした。

なお、6代目では4ドアセダンのほか、3ドアハッチバック、ステーションワゴンのカリフォルニア、3ドアクーペのRZ-1の4タイプのバリエーションがありました。
マイナーチェンジでいわゆる「サニー顔」となった後期型。

マイナーチェンジでいわゆる「サニー顔」となった後期型。

写真はツインカム1600ccエンジン搭載車。
マイナーチェンジで、リアデザインも大きく変更された。

マイナーチェンジで、リアデザインも大きく変更された。

NISSAN TRAD SUNNY SPLEND 新登場 図書館編 1989

大きくデザインが変わった後期型でも、センスのよいCMコンセプトは継承された。BGMは終始ビートルズだったが、大ヒット曲よりも通好みの選曲がされていた。

キープコンセプトをした7代目

1990年1月、サニーはフルモデルチェンジをして7代目・B13型となります。デザインは角に丸味があるものの完全なキープコンセプトでしたが、品質はいっそう高まりました。これにより「サニー顔」は2世代目へと突入しました。

バリエーションはセダンのみとなり、3ドアはNXクーペとして独立しました。また、ステーションワゴンのカリフォルニアは、サニーではなくADバンをベースとして生まれ変わりましたが、フロントデザインはサニー顔でした。

メカニズム面では、エンジンは引き続きGA型ですが、ツインカム化されました。当初のラインナップは1800cc、1600cc、1500cc、1300cc、1700ccディーゼルと多様でした。

1992年にマイナーチェンジを受け、フロントグリルのSマークは、日産のCIマークに変更されました。B13型は1994年1月にフルモデルチェンジを受けますが、メキシコでは「ツル」の車名でつい先日、2017年5月まで製造されていました。
1990年にフルモデルチェンジした7代目

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完全なキープコンセプトだった。
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ステーションワゴンのカリフォルニア

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ステーションワゴンのカリフォルニアは、ADバンがベースとなったが、フロントデザインはセダンに合わせられた。
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アメリカのサニーはB11型以降、セントラの名で発売。2ドアセダンのスポーティモデルもあった。

メキシコでついこの間まで製造されていた「ツル」。

メキシコでついこの間まで製造されていた「ツル」。

CM Nissan Sunny 4doors 1990 JP

デザインはキープコンセプトだが、宣伝には陣内孝則をキャラクターに起用して、CMの方向性は大きく変わった。

8代目の失敗で9代目は先祖帰り

28 件

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  • サニーレタス 2020/2/4 10:02

    カローラとまともに勝負できた最後のサニーだったように思う。

    I.O 2020/1/29 21:35

    カローラの最大のライバルがサニーで、サニーシリーズで唯一の傑作が85年秋に一新された6代目のB12型で、セダン・3ドアハッチバック・ワゴンタイプのカリフォルニアの3種とエンジンは先代後期からの流用でしたが、約半年遅れてクーペがRZ−1として復活しました。またこの代からスノードライブを楽しむユーザーが増えたため、4輪駆動車(当初はパートタイムの5速のみ・後にフルタイム4WDと同オートマチックを追加)を加え、当時シビックやハチロクレビン/トレノ等の小型DOHC車が続出し、それらに対抗するため86年8月には1600DOHCを加え、更に翌年秋には後期モデルへ一新され、主力の1500が新エンジンに換装されました。更に89年1月には最後の小変更を実施し、セダンには未設定だったニスモが加わり、オートマチック車には誤作動事故を防ぐ施錠装置(※)と後退警報装置がプラスされた後、90年1月にはB13型へ一新されます。
    (※) オートマチック施錠装置とは数年前から同ギアによる誤作動事故が多発しニュースで話題となったため、88年5月の一新時からオートマチック安全対策を実施しました。

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