「俺は、薫さんも恵美子さんも好きだ。
どっちも同じ位好きなんだ。
自分でもどうしていいのか分からない。
どっちを取るかなんて、今の俺にはどうしても判断が付かないんだよ。
そうさ。俺はやっぱり磯崎淳一郎の息子だ。
俺の中にも親父と同じ淫蕩な血が流れているんだよ」
これを聞いて、結城は高志を殴り飛ばした。
高志は一歩も引かずに結城に叫んだ。
「殴れ。もっと殴ってくれ。
俺の中の汚れた血が残らず、残らず流れ出るまで殴ってくれ!」
それを受けて、結城は更に高志を殴った。
殴って殴って殴り続けた。
高志は無抵抗のまま結城に殴られ続け、顔中を腫れ上がらせて血を吹き出した。
薫は司を愛するようになる
こんな事、あんたに頼むなんて悔しい。殺してやりたい程悔しい。
でも、彼の事考えると……」
敬子はその場に泣き崩れた。
司「言葉は行動を説明し、付け足す為の表現だ。そして、行動は生きる姿勢。
人はその生き方によって行動が決まり、
行動によって言葉が生まれるんだ。違うか?」
それは結城の哲学だった。
敬子「私と司は深い関係だったのよ。私はあんたには負けない。男と女の体の関係はそう、簡単にきれるもんじゃないのよ。さっきも私と司は・・・」
敬子「じゃあ聞いてみたらいいわ。どうせ、何食わぬ顔してあんたに会うと思うけど・・・」
司は敬子と結婚してしまう。司は陶芸家に弟子入りし、陶芸を学びながら結婚生活を送る。
司の元彼女・津川敬子が司の子を妊娠。結局、司は敬子と結婚してしまう。
それは、敬子が妊娠したという報せであった。遅れて敬子本人がやって来た為、結城は敬子と一対一で話し合うことになった。
敬子の希望は一つだった。結婚して欲しい。それだけだ。
敬子はどうしても結婚して欲しいと言って聞かなかった。
結城がなおも断り続けていると、敬子は意を決して踏切の中に飛び込んだ。
敬子は興奮状態で絶叫した「離してよ!あなたと一緒になれないなら死んだ方がマシよ。幾ら頼んでもこの次は死んでみせるわ」
ここまでされると、結城も折れざるを得なかった。
司「敬子、お前の言う通りにしよう。産まれてくる子は力を合わせて育てよう」
とうとう、結城は敬子との結婚を承諾した。
敬子は勝ち誇った顔で答えた「あら、知らなかったの?
司はあたしと婚約したのよ。ねえ、お義姉さん。
司とあたしはもうすぐ結婚するんですよね?」
敬子に振られると、小百合は気不味そうにそれを認めた。
本気でやりかねない。生れてくる命のためにも、それだけは阻止せねばならなかった。
司「俺は愚かな男だ。敬子とは遊びだった。遊びで済むことと済まないことがあるのに、
俺は軽はずみな真似をした。
心底愛しているのは、あんた1人なのに。後にも先にもあんた1人なのに。
俺は愚かなことを……
こうなったら、敬子を愛するように努力するしかない。
俺は愛してもいない女と結婚するようないい加減な男だ。
最低の男だ。薫。忘れてくれ、俺のことは」
結城はそう言って項垂れた。薫は、思わず結城に縋り付いていた。
結城は、薫を受け止めながらなおも続けた。
「薫、俺はお前を愛してる。俺はお前を幸せにしてやりたいと思ってる。
だが、それはもう出来ない。俺のことは忘れてくれ。
俺も、忘れるようにする。これ以上話していてもお互い辛くなるだけだ。
帰ってくれ。頼む、帰ってくれと言ってるんだ!」
結城は、縋りつく薫を強引に引き離した。