女の嫉妬はなぜこんなにややこしいの?――『あさきゆめみし』から解く、六条御息所の自己肯定の弱さからくる嫉妬に燃え尽きてしまった恋物語
2020年2月29日 更新

女の嫉妬はなぜこんなにややこしいの?――『あさきゆめみし』から解く、六条御息所の自己肯定の弱さからくる嫉妬に燃え尽きてしまった恋物語

80年代の月刊誌『mimi』にてあざやかに展開された『あさきゆめみし』。六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)は年上の才女でしたね。教養深く筆も達筆で和歌もうまい。そんな気高い完璧な女性がなぜ年下の源氏の君に翻弄され挙句、自滅してしまったのでしょうか。そのわけを探っていきたいと思います。

2,407 view

あさきゆめみしとは…

『源氏物語』54帖がおおむね忠実に描かれています。
作者の大和和紀さんが平安朝の生活様式などを詳しく調べ、独自に解釈しその上で緻密に漫画化を実現しており、古典の中でも特にベストセラーな『源氏物語』の世界を漫画という形で簡易に視覚的描写を助け、古典への興味を持たせた功績は今なお大きいです。
大手予備校の書棚に置かれるなど(!)特に受験生必携の書ともなっています。
また瀬戸内寂聴さんも高くこの物語を評価しております。
 (2029566)

あさきゆめみし あらすじ

――いつの御時のことでしたでしょう。
帝(みかど)の寵愛(ちょうあい)を一身に受けた美しい人がおりました。
その人は愛だけに生き、その生命は絶ったのも、また愛であったと……。
千年の時を超えて鮮やかによみがえる、古典の最高峰「源氏物語」を、大和和紀の華麗なタッチで体現した物語です。

あさきゆめみし 登場人物

光源氏

 (2029582)

幼い頃に、母・桐壺更衣と死別。亡き母の面影を追い求め、華やかな女性遍歴を重ねていく。
美男。教養が高いので、言葉のおしゃれあり、ウィットにも富んでいる。
また楽にも秀で、書にも秀でてるし、弓にも秀でている。
「一体おまえは何者なんだ!?」っていうくらいのあり得ない美男(イケメン)キャラクターのため、数多の女を魅了し、進んで取って食う男でもある。
現実にいたら女にとってゲスな男だと思う。うん。

六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)

源氏物語最凶のヤンデレともいうべき存在。
才色兼備でプライドの高い上流階級の女性だが、7歳年下の光源氏の餌食に。
光源氏にとっては遊び相手程度の感覚だったが、彼女自身は完全に光源氏の虜となってしまう。
やがて嫉妬心が高まると無意識に生霊化し相手を呪い殺す力が発現してしまうんです。
まず自分より身分が低いにも関わらず光源氏と逢瀬を重ねる夕顔を無意識下に呪い殺してしまう。
その数年後には、色々あってプライドをズタズタにされた相手の葵の上をも無意識下に呪い殺してしまうんですよね……。
この一件の後、出家しますが、
娘の後見を光源氏に頼むと、「絶対に手出すなよ(意訳)」と遺言を遺し往生した。
……けども死後も怨霊と化しヒロイン達を苦しめる。

なんとも可哀そうな源氏の被害者となってしまったお方。( ノД`)

とりあえず、手を出さない方がいい男も世の中にいるわけで

先の春宮妃。
教養高く優雅な貴婦人だが、
源氏への愛と恨みから怨霊となって女君たちに祟るとなってしまったキャラクター。
先の春宮妃からして、彼女は男の知らぬ初心な女性ではないことは確か。
時代が時代なだけあって、この時代は通い婚でしたので、
女性はどうしても受け身にならざるを得ない。
(男の人が女の家の元に通ってこそ、成り立つ恋愛がメインだった)
なのでやっぱり男を知る機会がやっぱり少なかったのではないのでしょうか。
また、女性は操を立てるのが当然だったこの時代、
いろいろな男との関係を積むのも厳しかった時期。
「それは手を出したらあかん毒キノコや!」
というセンサーを働くだけの男性経験がなかっただけにこんな苦しい思いをせねばならなかったのかもしれません。

嫉妬にかられたがイメージ先行して勘違いを受けやすいキャラクター

 (2029802)

ほんとは源氏の君に甘えてしだれかかり甘えたかったのでしょう。
でもそれはプライドがどうしても許せなかったのかもしれません。
甘えるということは弱いほんとうの自分をさらけ出すことでもありますから…。

美しく誇り高く、本当は傷つきやすいひとなのです。
なぜなら“葵祭”での、彼女のプライドがズタズタに引き裂かれた後、
魂が体から抜け出し、取れない芥子の匂いに、
自分が生霊になったことを知り、
彼女は自分自身に恐怖し、誰も殺したくないと強く願うシーンもあります。
ただ、”表の感情” と ”腹の底の本音” はかみ合わず、
死んだ後も「源氏」への愛が深すぎるあまり「紫の上(事実上の正妻)」や「女三宮(妻)」に取りついて苦しめています。
「源氏」本人が「彼女はめちゃくちゃイイ女だった」
といっているように、薄っぺらい「源氏」の態度さえなければ最高の女性になっていたかもしれませんね…。
それか。
愛されるのに値する「格上の女である」と胸を誇ればこそ、
他の女に現を抜かす「源氏は馬鹿者」だと鼻で笑えるだけの器量があればこそ、
強い自己肯定があれば六条御息所は最高の女だったかもしれません。
でもやっぱり、いい女で完璧すぎる六条御息所
「こんな自分なんだけどほんとは自信ないの……」
と自分をさらけ出し、可愛く甘える技術があれば……と思うと泣けてきます。(´;ω;`)ウゥゥ

でも割と人気な六条御息所

そんな六条御息を題材にして文学作品が生まれるのもありました。
30 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

大人の女子にとってはどれも懐かしい!女子に人気の記事・スレッド一覧

少女漫画、ファンシーグッズ、占いなど昭和ガーリーカルチャー大集合!『ゆかしなもんの'80sガーリーカルチャーガイド』5月発売!!

少女漫画、ファンシーグッズ、占いなど昭和ガーリーカルチャー大集合!『ゆかしなもんの'80sガーリーカルチャ...

グラフィック社より、書籍『ゆかしなもんの'80sガーリーカルチャーガイド』が、2023年5月に発売されます。少女漫画、おもちゃ、アニメ、ファンシーグッズ、占い……など、当時を知る人には懐かしく、知らない人には新鮮に映る可愛さ満点のアイテムがたっぷり紹介されます。
女の嫉妬はなぜこんなにややこしいの?――『あさきゆめみし』から解く、六条御息所の自己肯定の弱さからくる嫉妬に燃え尽きてしまった恋物語

女の嫉妬はなぜこんなにややこしいの?――『あさきゆめみし』から解く、六条御息所の自己肯定の弱さからくる嫉妬に燃え尽...

80年代の月刊誌『mimi』にてあざやかに展開された『あさきゆめみし』。六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)は年上の才女でしたね。教養深く筆も達筆で和歌もうまい。そんな気高い完璧な女性がなぜ年下の源氏の君に翻弄され挙句、自滅してしまったのでしょうか。そのわけを探っていきたいと思います。
me*me | 2,407 view
上部のボリューム感を追及したバストケアボディクリーム【セルノート】

上部のボリューム感を追及したバストケアボディクリーム【セルノート】

特濃豪華成分の配合ベストバランスを追求し、独自の最新深層ケア技術を新開発!選び抜かれた有用成分を角質内部へ届ける驚愕の角質浸透力が魅力のバストケアボディクリーム【セルノート】のご紹介です。
ハッピーエンドのその先を描いた少女漫画「ないしょのプリンセス」

ハッピーエンドのその先を描いた少女漫画「ないしょのプリンセス」

りぼんで連載されていた水沢めぐみさんの人気漫画「ないしょのプリンセス」。当時は両想いになるとそこで終わりという漫画が多かったですが、この漫画はこの先まで描かれていますよ。
saiko | 1,040 view

関連する記事こんな記事も人気です♪

大和和紀先生の名作!『ヨコハマ物語』をもう一度読みたい!

大和和紀先生の名作!『ヨコハマ物語』をもう一度読みたい!

大和和紀先生といえば明治時代や大正時代の描写が素晴らしい漫画家さんの一人。その代表格といっても過言ではない『ヨコハマ物語』は何度読んでも飽きない名作でした!令和という新時代を迎えた今だからこそ!新時代を生きた2人の少女の物語『ヨコハマ物語』を振り返ってみましょう!
『あさきゆめみし』実は“三高”だった源氏の君の恋愛遍歴を探ってモテてみましょう

『あさきゆめみし』実は“三高”だった源氏の君の恋愛遍歴を探ってモテてみましょう

源氏の君はさまざまさまざまな女性を愛してきました。義理の母である、藤壷、年上の六条御息所、正妻の葵の上、行きずりの恋の相手・夕顔、不美人な末摘花、 朧月夜、流罪にされ出会った明石の御方、朝顔の姫君、玉蔓、秋好中宮(六条御息所の娘)、おっとりとした花散里、空蝉、三ノ宮などと遍歴の多かった 源氏の君はさまざまな美しい(中には美しくない女性を囲いましたが)女性を入れ食いしてきました。そんな源氏の君の魅力に迫りましょう。
me*me | 1,934 view
大和和紀『はいからさんが通る』の2部作アニメのタイトルが決定!原作の結末も描かれる!

大和和紀『はいからさんが通る』の2部作アニメのタイトルが決定!原作の結末も描かれる!

大和和紀による70年代の人気漫画「はいからさんが通る」。そのアニメ映画が前後編の2本製作されるが、タイトルが決定した。前編は11月11日、後編が2018年内に公開される予定だ。
「はいからさんが通る」の大和和紀が画業50周年原画展でサイン会!

「はいからさんが通る」の大和和紀が画業50周年原画展でサイン会!

2016年7月10日に東京・東武百貨店池袋店にて、漫画家・大和和紀(やまと わき)のサイン会実施が決定しました。また、同会場では、6月30日から7月12日まで大和の画業50周年記念の原画展も行われます。
バレエ漫画の金字塔!有吉京子による人気漫画『SWAN—白鳥―』の特装版などが続々と発売!!

バレエ漫画の金字塔!有吉京子による人気漫画『SWAN—白鳥―』の特装版などが続々と発売!!

平凡社より、有吉京子による人気漫画『SWAN—白鳥―』関連の書籍が現在好評発売中となっています。
隣人速報 | 69 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト