遅咲きのサクラが府中の杜で満開に!末脚炸裂・サクラチトセオー
2019年10月31日 更新

遅咲きのサクラが府中の杜で満開に!末脚炸裂・サクラチトセオー

遅咲きのサクラは6歳の秋、府中の杜で満開に咲き乱れました。同じトニービンを父に持つ同期のウイニングチケットほどのスター性はありませんでしたが、後方一気のその末脚に魅了された人は多かったのではないでしょうか。今回はそんなサクラチトセオーをご紹介します。

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サクラ軍団入門

1990年5月11日、北海道でちょうど桜の花が見ごろを迎えるころ、北海道静内町にある谷岡牧場で1頭の牡馬が誕生します。父・トニービン、母・サクラクレアーとの間に産まれたその牡馬は、のちにサクラチトセオーと名付けられます。株式会社さくらコマースの所有馬となり、サクラ軍団に入門。当然のごとく美浦・境勝太郎厩舎に入厩することになります。

期待膨らむも開花せず

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サクラチトセオーの父・トニービンは、社台グループが導入した期待の新種牡馬でした。サクラチトセオーはその期待の新種牡馬・トニービンの初年度産駒になります。同じ父を持つ同期には、ダービー馬・ウイニングチケットやマイルの女王・ノースフライトなどがいます。

牧場での評価も高かったサクラチトセオー。入厩してからもその評価は高く、デビュー前から評判になるほどでした。そんな中迎えたデビュー戦は1992年10月11日、舞台は東京競馬場。芝1600mで争われるこのレースで前評判の高さからサクラチトセオーは単勝3.4倍の1番人気に支持されます。

鞍上はサクラ軍団の主戦・小島太。レースは1番人気の支持に応えて見事快勝。その能力の高さを証明してみせました。続く2戦目は12月の中山競馬場、芝1600mで行われるひいらぎ賞。単勝は5.0倍で牝馬のカノープスに次ぐ2番人気。レースは1着入線した1番人気のカノープスが走行妨害により13着に降着する波乱の結果に。クビ差の2着に入線していたサクラチトセオーが繰り上がりの勝利となりました。

これで2連勝となったサクラチトセオーは一躍クラシック候補に躍り出ました。周囲の期待は膨らみましたが、年が明けて4歳を迎えるとサクラチトセオーは腰の状態が悪くなり、なかなか思うようにレースを使うことができません。それでも5月に東京競馬場で行われたダービートライアル・NHK杯で3着に入り、何とか日本ダービー出走の権利を手にします。

迎えた大一番、日本ダービー。その素質の高さを買われ6番人気に支持されますが、体調が本物ではなかったことに加え、キャリア4戦目という経験の浅さを露呈し11着と惨敗します。勝ったのは同じトニービンを父に持つウイニングチケットでした。結局この年サクラが開花することはありませんでした。

大舞台での勝負弱さ

1994 京王杯オータムハンデ サクラチトセオー

ダービー出走後、サクラチトセオーは腰の状態の悪さもあり、長い休養に入ります。結局4歳の秋は1度も出走することなく5歳を迎えます。明け5歳の初戦は2月の東京競馬場。ダート1400mの節分賞でした。このレースはサクラチトセオーにとって生涯最初で最後のダートレースです。2番人気の支持を受けますが、レースはクビ+ハナ差の3着に惜敗。

中1週で臨んだテレビ埼玉杯は東京・芝1600m戦。単勝1.5倍の圧倒的1番人気に応えて見事3勝目を挙げました。そしてその勢いのまま3月のGⅡ・中山記念に格上挑戦します。格下の身ながらファンはサクラチトセオーを3番人気に支持します。レースではサクラチトセオーがファンの期待以上の走りを見せてこのレースを快勝します。

晴れてオープン馬となったサクラチトセオーは再びGIの舞台に戻ってきました。春のグランプリレース・宝塚記念に出走します。 レースでは4番人気の支持を受けますが、本格化した同期のビワハヤヒデには全く歯が立たず6着敗退。秋の初戦はGⅢ・京王杯AHを選択します。するとこのレースを後方待機から上がり33.9秒の末脚を繰り出し1分32秒1というレコードで快勝。大きな期待を持って天皇賞(秋)に挑みます。

このレースでも4番人気に支持されたサクラチトセオーでしたが、最後の直線でもがき苦しむビワハヤヒデすら捉え切れずまたも6着に敗れてしまいます。その後、年末の大一番・有馬記念にも出走しましたが、ここでもまた6着に敗れ、大舞台での勝負弱さを露呈します。

7分咲きのサクラ

1995 安田記念 ハートレイク

年が明けて6歳になったサクラチトセオーは、1月のGⅡ・AJCCから始動します。このレースを2番人気で快勝し、前年に勝利したGⅡ・中山記念をクビ差の2着としたサクラチトセオー。春の最大目標を東京競馬場の芝1600mで争われるGI・安田記念に定めます。

レース当日、サクラチトセオーは単勝3.3倍の1番人気でレースを迎えます。レースがスタートし、サクラチトセオーは4コーナーを回るまで最後方待機。府中の長い直線を鋭い末脚で猛烈に追い込みます。しかし、勝馬のハートレイクをわずかにハナ差捉え切れず2着に惜敗。GI初勝利があともう少しというところでするりと逃げていきました。しかし遅咲きのサクラは間もなく満開を迎えそう、そんな予感めいたものがありました。

ついにサクラ満開

1995 天皇賞(秋) サクラチトセオー

あとわずかのところでGI勝利を逃したサクラチトセオーは、春のグランプリレース・宝塚記念に単勝1番人気の支持を受け挑みました。しかし、安田記念で見せた自慢の末脚は不発に終わり7着に敗れてしまいます。秋の初戦をGⅡ・毎日王冠としたサクラチトセオーでしたが、重馬場に泣かされまたも末脚が不発。4着に敗れます。

そして秋の最大目標であるGI・天皇賞(秋)を迎えます。この日のサクラチトセオーは絶好調。単勝人気も休み明けの怪物・ナリタブライアンに次ぐ2番人気でレースがスタート。鞍上の小島太はこの日も後方待機から最後の直線勝負に賭けます。最後の直線、直線半ばで先頭に立った皐月賞馬のジェニュインをハナ差捉えてついにGI初勝利を飾ります。遅咲きのサクラはついに満開となったのです。

このレースの前に、鞍上の小島太は翌年2月で現役引退することを決めていました。このレースに賭ける意気込みは並々ならぬものがあったに違いありません。レース後、小島太は「こんなに必死になって追ったのは何年ぶりだろう」と呟いたと言います。それほど鬼気迫る猛烈な追い込みでした。

引退、そして種牡馬に

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天皇賞(秋)を制したサクラチトセオーは暮れのグランプリ・有馬記念に挑みます。この日は単勝4番人気。レースは菊花賞馬・マヤノトップガンに逃げ切りを許しますが、サクラチトセオーも上がり最速の35.0秒の自慢の末脚を繰り出し3着と健闘しました。このレースを最後にサクラチトセオーは引退、種牡馬入りします。

初年度からラジオたんぱ杯2歳ステークスを勝った、ラガーレグルスを輩出し、順調なスタートを切りますがGIを勝てるほどの大物を輩出することはできませんでした。2011年に種牡馬を引退し功労馬として余生を過ごしていましたが、2014年1月30日、老衰のためこの世を去ります。サクラは散ってしまいました。見るものを魅了するあの強烈な末脚はこの先も語り継がれていくことでしょう。
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