最初から最後まで、「死」さえも美しい
女子高生・美月と小学生・蛍、同時に交通事故に遭い生死をさまよった二人と、その周りの人物が織りなすミステリー作品です。その描写は非常に美しく、矢沢あい作品では大事な存在であるボケキャラも少なく、またコミカルな要素が他作品と比べても少ないように思います。
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蛍にだけその声、姿かたちが見える、いわゆる「幽霊」のような状態になってしまった美月。記憶喪失に陥った彼女がたった一つ覚えている恋人「アダム」の存在ですが、彼は19年も前に他界しているミュージシャンだったのでした。生死をさまよう美月の体に憑依する「さやか」の霊、このさやかこそアダムの恋人で、これもまた19年前に亡くなってしまったという悲しい過去があったのです。
「死」については、矢沢あい作品では『NANA』以外であまり触れることのないテーマでしたが、初めて彼女が「死」というものを美しく描写したのがこの作品ではないでしょうか。
「死」については、矢沢あい作品では『NANA』以外であまり触れることのないテーマでしたが、初めて彼女が「死」というものを美しく描写したのがこの作品ではないでしょうか。
小学生4人組の恋路も気になる
さまよう美月のためにアダムを探し、最終的にはアダムの死を理解させ、さやかの霊を成仏させようと奮闘する小学生4人組が、とにかくかわいい。みんな子供だけどしっかり者。でもそれぞれの胸に秘める思いも手を抜かず描写されていて、メインテーマとは別でそちらの展開も気になる要素となっています。蛍は正輝に憧れ、蛍の思いを知る親友・沙絵ちゃんは次第に揺れ動く自分の気持ちを押し殺す。お調子者の哲は危なっかしい蛍をほっておけず・・・とこの4人のかわいい恋愛模様からも目が離せません。
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矛盾のない繊細なストーリー
ミステリー作品、それもりぼん掲載の少女向けとなると、伏線回収がしきれなかったり無理やり感があったりするのですが、そこはやはり巨匠・矢沢あい。蛍らの頑張りによりさやかは成仏、美月は意識を取り戻すハッピーエンドで、誰しもが納得できる静かな結末を迎えます。メインキャラクター以外の細やかな人間関係の描写も素晴らしく、抜かりないものとなっています。
6年後に映画化という大器晩成型
内容が難しすぎて当時のりぼん読者にはふるわず。そりゃそうですよ、大人になって再度読んであ~なるほど・・・となるような内容なのですからね。次第にその素晴らしさが認められてきて、りぼん掲載の6年後に映画化を果たした大器晩成型の作品です。
アダム役にHYDEさん、身長以外はハマり役と当時かなり話題になりましたね。なんせ美月役が栗山千明さん。ぜひ身長を交換したいところです。
アダム役にHYDEさん、身長以外はハマり役と当時かなり話題になりましたね。なんせ美月役が栗山千明さん。ぜひ身長を交換したいところです。
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原作の幻想的な要素は残したまま、さらに美しいラブストーリーへと昇華しています。他キャストも豪華で、限りなく原作をまとめる努力が見られ、レビューを見てもがっかり度は低いようです。
原作を読んでしっぽり映画を見る、ラストクォーターの夜なんてのも、いいんじゃないでしょうか?
原作を読んでしっぽり映画を見る、ラストクォーターの夜なんてのも、いいんじゃないでしょうか?
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