“カルト映画の神様”と呼ばれた鈴木清順監督の浪漫三部作の1本「ツィゴイネルワイゼン」
2020年2月24日 更新

“カルト映画の神様”と呼ばれた鈴木清順監督の浪漫三部作の1本「ツィゴイネルワイゼン」

「生きているひとは死んでいて、死んだひとこそ生きている」いかにもカルト映画という印象的なセリフですね。あの世とこの世の狭間の世界を圧倒的な演出で描いた「ツィゴイネルワイゼン」。妖しく怖くもあり、たまらなくエロチックでもあるこの映画。独特な映像美の世界に足を踏み入れてみてください!

4,837 view

浪漫三部作

日本を代表する映画監督の一人である鈴木清順。「清順美学」と呼ばれる独特の映像美は、クエンティン・タランティーノ、デヴィッド・リンチ、ジム・ジャームッシュなど多くの映画監督に影響を与えています。
鈴木清順

鈴木清順

本名:鈴木 清太郎
生年月日:1923年5月24日
没年月日:2017年2月13日(93歳没)
出生地:東京府東京市日本橋区
職業:映画監督、俳優
活動期間:1956年~2017年
その「清順美学」の到達点とも言える作品が「浪漫三部作」と呼ばれている3本です。

鈴木清順「浪漫三部作」

「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」「夢二」。この3本は時代設定が同じ大正時代いうだけで連作ではなく、独立した作品です。

どれも甲乙つけがたいほど素晴らしい作品ですが、浪漫三部作の1本目で、カルト映画の大傑作として今なお多くの人たちを魅了し続けている1980年の「ツィゴイネルワイゼン」をご紹介します。

ツィゴイネルワイゼン

「ツィゴイネルワイゼン」とはスペイン生まれの ヴァイオリニスト:サラサーテが作った曲です。サラサーテ自身が1904年に録音したレコードが残されているのですが、この録音には、途中に呟き声が入っていることで知られています。

内田百閒がこのレコードの呟き声を題材にして「サラサーテの盤」という小説を書いており、これが映画の原作となっています。
加えて「ツィゴイネルワイゼン」は、「サラサーテの盤」以外にも「山高帽子」「花火」「東京日記」などからも題材をとっており、更にそこにオリジナルエピソードを加えてあります。

「ツィゴイネルワイゼン」予告編

鈴木清順としか言いようのない映像美!その素晴らしさが予告編からもうかがい知れますが、あの世とこの世の狭間の世界を圧倒的な演出で描いています。

そして登場人物が、個性的で素晴らしいのです。
ツィゴイネルワイゼン

ツィゴイネルワイゼン

左から
藤田敏八、大谷直子、原田芳雄、大楠道代
主な登場人物は4人。
原田芳雄が演じる全国を旅する自由人「中砂糺(なかさご ただし)」、その妻の「中砂園(なかさご その)」と芸者「小稲(こいね)」の二役を大谷直子。
中砂の友人で翻弄されまくる「青地豊二郎(あおち とよじろう)」を映画監督の藤田敏八が演じ、その妻の「青地周子(あおち しゅうこ)」が大楠道代です。

あらすじ

難解と評される「ツィゴイネルワイゼン」ですが、一言でいうと中砂(原田芳雄)と青地(藤田敏八)という親友二人のドイツ語学者をめぐる怪奇談です。

物語はサラサーテの名曲「ツィゴイネルワイゼン」が流れる中、中砂と青地の声がカットインしてくるところから始まります。「何て言ったんだろ」「君にもわからないか」。映画は冒頭から、聞き取れない言葉という“謎”が提示されるのです。

そして場面はかわり、中砂の元へ向かう車中の青地が映し出されます。

ツィゴイネルワイゼン

ドイツ語学者、青地豊二郎と友人の中砂糺の二人が海辺の町を旅していた。二人の周囲を、老人と若い男女二人の盲目の乞食が通り過ぎる。老人と若い女は夫婦で、若い男は弟子だそうだ。
旅に出た、士官学校教授の青地豊二郎(藤田敏八)と友人の中砂糺(原田芳雄)。その途中、彼らは弟の葬式に出席してきたという芸者の小稲(大谷直子)と出会う。
中砂糺(なかさご ただし):原田芳雄、小稲(こいね):...

中砂糺(なかさご ただし):原田芳雄、小稲(こいね):大谷直子

それから1年、中砂から結婚の報を受けた青地は、彼の家を訪ねることに。だが、妻だという園(大谷直子)が小稲とうり二つであることに驚かされる。
やがて、園は生まれたばかりの娘を残して逝去。
中砂の様子を見に行く青地だが、今度は小稲が乳母として娘を抱いていることに驚く。
青地周子(あおち しゅうこ):大楠道代

青地周子(あおち しゅうこ):大楠道代

32 件

思い出を語ろう

     
  • 記事コメント
  • Facebookでコメント
  • コメントはまだありません

    コメントを書く
    ※投稿の受け付けから公開までお時間を頂く場合があります。

あなたにおすすめ

関連する記事こんな記事も人気です♪

【ツィゴイネルワイゼン】第4回(1981年度)日本アカデミー賞を振り返る!【高倉健】

【ツィゴイネルワイゼン】第4回(1981年度)日本アカデミー賞を振り返る!【高倉健】

1981年と言えば、ダイアナ妃がチャールズ王子と結婚した年。初のスペースシャトル、コロンビアが打ち上げされた年でもあった。そんな1981年の日本アカデミー賞を振り返ってみよう。
もこ | 584 view
鈴木清順監督が持てる才能の全てを注込んで挑んだ怪奇幻想譚「陽炎座」。

鈴木清順監督が持てる才能の全てを注込んで挑んだ怪奇幻想譚「陽炎座」。

「三度びお会いして、四度目の逢瀬は恋になります。死なねばなりません。」このセリフが全てか?!独特な映像美と難解な物語。まるで悪夢を見ていつような異様な緊張感を持った鈴木清順監督の代表作のひとつ「陽炎座」です。傑作中の傑作。現在では作ることが不可能と思える映画らしい映画です。
obladioblada | 3,638 view
「ツイン・ピークス」で有名なデヴィッド・リンチ監督の初期作品!

「ツイン・ピークス」で有名なデヴィッド・リンチ監督の初期作品!

独特なスタイルで人気のデヴィッド・リンチ監督の初期作品集です。「ツイン・ピークス」で見せた映像美や複数の題材を多く盛り込むことで謎が謎を呼ぶスリーリーに仕立て上げるというスタイルは80年代に既に確立されています。
obladioblada | 3,695 view
ヌードも辞さない「石田えり」が出演した80年代の映画作品は傑作揃いです(その前篇)

ヌードも辞さない「石田えり」が出演した80年代の映画作品は傑作揃いです(その前篇)

石田えりにとって80年代は女優としての地位を確立した重要な時代だと思いますが、その10年間に彼女が出演した作品は日本映画界においても重要な作品ばかりなんです。
obladioblada | 42,296 view
プロ野球選手と結婚し引退した80年代アイドル【秋本理央】現在どうしてる?

プロ野球選手と結婚し引退した80年代アイドル【秋本理央】現在どうしてる?

「レッツゴーヤング」の「サンデーズ」のメンバーに選ばれ、歌手デビューも果たした元アイドルの秋本理央さん。プロ野球選手の方とのご結婚により約5年の芸能生活に幕を閉じました。そんな秋本理央さんの芸能活動を振り返りつつ現在の様子についてチェックしてみました。
ハナハナ | 223 view

この記事のキーワード

カテゴリ一覧・年代別に探す

あの頃ナウ あなたの「あの頃」を簡単検索!!「生まれた年」「検索したい年齢」を選択するだけ!
リクエスト