滅茶苦茶なゲームバランスなのに何故か面白い対戦格闘ゲーム『GUILTY GEAR』。マイナーながらも地味な人気を得てシリーズ化に至ったその理由とは。
2018年3月5日 更新

滅茶苦茶なゲームバランスなのに何故か面白い対戦格闘ゲーム『GUILTY GEAR』。マイナーながらも地味な人気を得てシリーズ化に至ったその理由とは。

当時は中小メーカーもいいところであったアークシステムワークスが1998年に製作した、オリジナルの対戦格闘ゲーム。それが今回紹介する『ギルティギア』です。石渡太輔氏の出世作でもあり、彼はキャラクターデザイン&世界観設定・BGM・主人公の声を全て担当するという八面六臂の大活躍を見せました。後に『ギルティギア』はシリーズ化されますが、その第一作目である本作のぶっ壊れバランスっぷりと、それでもなぜか面白かった不思議な魅力に迫ります。

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概要

『GUILTY GEAR』パッケージ

『GUILTY GEAR』パッケージ

記念すべき『ギルティギア』シリーズの初代。
概要
チャージキャンセルを使った永久コンボや、一撃必殺システムでの荒削りな面があるが、操作性や連続技のスピード感、独特なキャラクターや世界観などはこの頃から健在であり、口コミで評判は徐々に広まっていった。CPU戦の難易度が高く難易度設定もできないため、初心者にはハードルが高い。

開発初期はプリレンダCG(シリコングラフィックス)を使用した物を想定していた。なお、キャラクターに関しては予算の関係上、一部のキャラをスタッフが音声担当することになった。

ストーリーは、続編であるアーケードローンチタイトル『GUILTY GEAR X』以降、正式に接点を持つ『GUILTY GEAR 2 OVERTURE』以外は外伝である。また、GG2はジャンルがアクションに変更されている。

サブタイトルの『the missing link』はドイツのヘヴィメタルバンド、レイジが1993年にリリースした『The Missing Link』に由来する。
『GUILTY GEAR』は1998年5月14日にアークシステムワークスから発売されたプレイステーション用対戦型格闘ゲームです。 怒涛のコンボを重視したシステムを持ち味とする『コンボゲー』の大家であり、後にあるチャンスを得て続編がアーケードで稼働し、格闘ゲーム業界に一大旋風を巻き起こすことになります。

ストーリー

22世紀。人類は無限のエネルギーを生み出す「魔法」の理論化に成功する。だが各地の紛争は依然収まる所を知らず、ついには生体兵器「ギア」を誕生させてしまう。自らを「ジャスティス」と名乗るギアは全人類に対し宣戦を布告、対する人類は聖騎士団を結成。全ギアと人類同士の100年に渡る戦いは「聖戦」と呼ばれ、最終的にはジャスティスの封印に成功した人類側の勝利に終わった。それから5年後、ジャスティス復活を予感させる妖気が世界を包み始め、国際連合はその事態に対処する為に「第二次聖騎士団」結成を考案。人員選考の為に武道大会を開催する。

もう少し詳しい設定など

科学と魔法(本シリーズでは「法力」と呼ばれる)が両立し、過去に起こった大戦で荒廃した世界が舞台となっています。攻略本ではゲーム中では語られていないそれら設定が年表付きで詳細に解説されています。
生みの親である石渡氏は、『漫画「BASTARD!!」などをモチーフにした』と発言していました。
例えばメインキャラクターの一人、カイ・キスクの衣装シルエットは「BASTARD!!」のラーズ王子が着用したコートのシルエットまんまであったり、同じように登場人物には「ハードロック・ヘヴィメタル」関連から名前を取ったキャラが多数います。

癖のありすぎるキャラクター紹介

「ソル・バッドガイ」
本作の主人公。神器「封炎剣」で生体兵器「GEAR」を狩る賞金稼ぎ。かつての親友にして全ての元凶である「あの男」なる人物を探している。
飛び道具、無敵対空、突進技を所持したスタンダードな性能のキャラ。

「カイ・キスク」
ソルのライバルにして「もう一人の主人公」。神器「封雷剣」を所持する天才剣士で、弱冠16才で聖騎士団(人類側の精鋭軍)の団長に就任。
ソル同様、飛び道具、無敵対空、突進技を持つスタンダードな性能のキャラ。
後発の関連作品(ドラマCDや小説等)での出番が多い。

「チップ・ザナフ」
「大統領」となって世の中を変えようと考えているアメリカン忍者。何者かによって殺された師匠の仇も探している。
非常に素早い動きが可能で、さらにワープや迷彩といった撹乱技も使える。特に地上ダッシュの早さが半端ない。続編では「防御力がとても低い」という特徴が追加され、その紙装甲っぷりからネタにされることも多くなったが、立ち回りで圧倒すれば上位キャラも食えるので愛用するプレイヤーが多く、彼が主人公の外伝小説も出ているなど愛されてもいる。

「アクセル・ロウ」
元ギャング、20世紀からのタイムスリッパー。超人的な体術で二丁鎖鎌を操る。
鎖鎌はリーチが長く、敵を寄せ付けない戦い方が可能。接近戦もそれなりに強い。
ロック/メタル関連を元ネタに持つキャラが多いとは先に述べた通りだが、このキャラは見た目と名前がそのまんまなド直球(攻略本でも明言済み)。
ちなみにSNKの某棒術使いのキャラにも非常に似ているため騒動になったとかならなかったとか。

「メイ」
義賊「ジェリーフィッシュ快賊団」の一員。小柄な体で錨を振り回す怪力少女。
リーチが短い代わりにすばしっこく接近戦が強い。技もコミカルなものが多い。
因みに初代のみ一部の飛び道具を反射できたりする。

「ポチョムキン」
上半身と下半身がアンバランスなマッチョキャラ。祖国の命令で無理やり戦いに参加させられている。典型的な鈍重&パワーキャラ。巨大な図体かつ重量級キャラであるために、様々なキャラに対ポチョムキン専用のコンボが多く存在する事と、小回りの効かなさで相性の悪いキャラにはとことん我慢と苦戦を強いられるのが不安要素。防御力は一番高いが…。
投げ技「ポチョムキンバスター」はどうみてもアレ。
「Dr.ボルドヘッド」
常人離れした長身を持つスキンヘッドの殺人鬼。かつては優秀な医師であったが、患者の少女を誤って死なせてしまった事がきっかけで発狂してしまった。
体格、キャラの動き、台詞などあらゆる面であきらかにイカれたキャラ。因みに声優は塩沢兼人氏。

「クリフ・アンダーソン」
先代聖騎士団団長。現在は老いたため引退していたが、若かりし頃は一騎当千の強さを誇っていた。身の丈以上の巨大な剣を振るう為に攻撃力が異常に高くリーチも非常に長いが、その代わりに防御力が低く、機動力も最低クラスという超極端な性能。特定の技でぎっくり腰になってダメージを喰らう事もある。続編GGXで削除されたキャラクターの一人。その理由は設定上本作で死亡したこと以外にも、上記のキャラ性能のせいでもあると思われる。ただし家庭用限定のキャラとして登場したりとなんだかんだで愛されているキャラ。

「ザトー=ONE」
アサシン組織の頭領。自らに「禁呪(強力さと危険性の高さから禁じられた法力の術)」を施したことで、影を意のままに操ることができる能力を得た。ただし、その代償として視力を失っている。名前と盲目である設定から明らかであるように、元ネタは『座頭市』。
遠近問わず戦えるキャラ性能と、千変万化する影のバリエーションがウリのキャラ。塩沢兼人氏のボイスと相まって、キャラ人気は高かった。
次回作以降では影の分身との同時攻撃を行う上級者向けテクニカルキャラに。

「ミリア・レイジ」
「禁呪」により髪を武器に変える力を手に入れた元アサシン組織の暗殺者。ザトーとはただならぬ因縁があるらしいが…。発射後向きを変えられる飛び道具や、持ち前の高機動力で敵をかき回しつつ戦うキャラ。続編では起き攻めが強烈な強さを誇るようになる。

「テスタメント」
中ボス。人間を素体とした「GEAR」で、大鎌を振るう死神のような外観。
罠設置に特化しており、移動封印、毒付与、時間差で打ち出されるガード不能の攻撃といったオンリーワンの技を持つ。ボス性能ゆえか、技性能が次回作以降と比べるとかなり凶悪である。
例えば覚醒必殺技の「ナイトメアサーキュラー」。ヒットした相手に毒を付与する技なのだが、本作では毒のスリップダメージでも容赦なく死ぬ上に、テスタメントがダメージを受けても毒が消えない、技自体の威力も高めかつコンボにも組み込める…と凶悪な性能であった。

「ジャスティス」
本作のラスボス。かつて人類に反旗を翻した最強最悪の「GEAR」。見た目はテッカマンブレードに似ている。
通常技、必殺技共に強く(中でも飛び道具は凶悪性能)、覚醒必殺技でボルテッカに似た極太レーザー「ガンマレイ」も照射する。さらにCPUは超反応かつ的確にコンボを決めてくるため、クリアの際の強大な壁となる。
ストーリーとキャラ性能の関係上、次回作以降は家庭用専用キャラとして登場。

「梅喧」
粗暴な女剣士。幼少時に家族を惨殺した「あの男」を探している。
特定の条件を満たすと使えるようになる隠しキャラなのだが、あまり作り込まれているとは言えず、必殺技も少なかった。しかし続編以降では、「ガードキャンセル技主体に立ち回り、相手の勢いを削ぐ」という、独自の戦法を取るキャラに生まれ変わった。
初代での声優は本作でメイの声を演じているこおろぎさとみ女史。彼女の演じる役としては「粗暴な成人女性」というあまり類を見ないタイプのキャラ。

実際の対戦動画

初代『ギルティギア』プレイ動画

1分40秒あたりから始まります。

作品の特徴・評価点

爽快感を重視したゲームシステム

二段ジャンプや空中ダッシュ、チェーンコンボ、通常技ジャンプキャンセル、といった動作はほぼ全キャラに搭載されており、適当に操作しているだけでも非常にスピーディで派手な動きができます。初代の時点でシリーズの特徴である「自由度の高いゲームシステム」は確立されていました。
ダストアタック(打ち上げ攻撃、追撃可)、フォルトレスディフェンス(ゲージを使ってバリアを張る)、デッドアングルアタック(ガードキャンセル攻撃)などのシステムも、内容は若干異なりますが名前は本作が初出です。
いわゆる意味の無いアピールが挑発・敬意と二種類ありますが、こちらも本作からでした。

全ての通常技がジャンプキャンセルに対応していたり、空中ダッシュの高度制限が無いといった、バランス重視の格闘ゲームでは考えられない思い切った仕様がいくつか存在しています。
後の作品では制限がかかり厳しくなりましたが、家庭用版ではその制限を本作同様に緩和できる隠しモードが実装されていることもあります。

独特すぎてバランスが崩れるレベルの特殊システム

「一撃必殺技」
文字通り「相手を一撃で倒す」必殺の技です。本作では一撃必殺技を成功させると「規定本数を全て」取ったことになります。つまり本当の意味で勝ちが確定するのです。
発動方法は特殊で、まずボタン同時押しで出せる「殺界発生技」を当てるか、相手の攻撃を受ける直前でガードすると「殺界」が発生。「殺界」中に一撃必殺技コマンド(波動拳コマンドと非常に簡単)を入力すると一撃必殺技が発生し、勝利が確定します。防御側は防御コマンド(竜巻コマンドとこちらも簡単)を出すことで回避できます。

「チャージ」
大半のキャラは「チャージ」という行動で特定の必殺技を強化可能になっています。対応した必殺技と同じコマンド+敬意ボタンでその場で気合を溜め始め、溜めた時間に応じて必殺技の性能が上昇します。
チャージレベルはLv1~3まで存在し、一回必殺技を使うとLv1に戻ります。また、チャージは必殺技同様、通常技をキャンセルして行うこともできます。
ただ、「チャージを終了した時に一切硬直が発生しない」のが大問題でした。これにより、大斬りを当てる→チャージでキャンセル→チャージを一瞬で終了→ダッシュ→通常技を当てる…というお手軽極まりない永久コンボ「チャージキャンセルコンボ」が成立してしまうのです。
一部チャージを持っていないキャラもいますが、そういうキャラに限ってパンチ→キック→パンチ→キック…と繰り返すだけで永久コンボになったりします。
続編では共通システムとしては削除されたましたが、カイがこのシステムを再現した技を持っていたり、聖騎士団ソルが固有システムとして似たようなチャージシステムを持っていたりと、後の作品でも活用されています。

個性あふれるキャラクター達

当然キャラクターデザインも石渡氏が担当。雑誌の前情報などでキャラクターイラストは公表されており、独特のセンスを持ったそれらはゲーム発売前から注目を集めていました。
キャラごとのエンディングも凝った作りになっています。特にソルとクリフのエンディングは必見です。
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