滅茶苦茶なゲームバランスなのに何故か面白い対戦格闘ゲーム『GUILTY GEAR』。マイナーながらも地味な人気を得てシリーズ化に至ったその理由とは。
2018年3月5日 更新

滅茶苦茶なゲームバランスなのに何故か面白い対戦格闘ゲーム『GUILTY GEAR』。マイナーながらも地味な人気を得てシリーズ化に至ったその理由とは。

当時は中小メーカーもいいところであったアークシステムワークスが1998年に製作した、オリジナルの対戦格闘ゲーム。それが今回紹介する『ギルティギア』です。石渡太輔氏の出世作でもあり、彼はキャラクターデザイン&世界観設定・BGM・主人公の声を全て担当するという八面六臂の大活躍を見せました。後に『ギルティギア』はシリーズ化されますが、その第一作目である本作のぶっ壊れバランスっぷりと、それでもなぜか面白かった不思議な魅力に迫ります。

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当時としては実験的なゲームとBGM

家庭用オリジナル作品であったにも関わらず、そのSFや中世ファンタジーが混ざりあった独特の世界観やキャラクターの濃さ、メタル風の激しいBGM、派手なエフェクト・演出など、当時のゲームとしては非常に実験的な試みでした。

石渡氏の作曲した戦闘曲は人気が高く。エレキギター全開のハードロック/ヘビーメタルが主体のBGMとなっています。
どれも良曲ぞろいで、「Holy Orders」「Suck a Sage」「Writhe in Pain」「Momentary Life」などのBGMは後のシリーズでも使用されており、ラスボス・ジャスティス戦の「Meet Again」などは非常に人気が高いです。
ゲームをプレイしたことが無い人でも聞いたことがある曲もあるかもしれません。
ギルティギア サウンドコンプリートBOX

ギルティギア サウンドコンプリートBOX

HEAVEN OR HELL
  Let's Rock !!

問題点

世紀末すぎるムチャクチャなゲームバランス

大半のキャラが弱攻撃が入ったらそこからチャージキャンセルコンボに繋げられるうえに、その難易度も他の格ゲーに比べて容易でした。どう考えても「世紀末」なゲームバランスです。
もっとも、チャージキャンセルを使わない永久・即死コンボも普通に開発されていたりするのですが…。
「ダッシュしながら攻撃を出すとダメージが倍増する(通称:CLASH)」「チャージで強化すると異常な攻撃力になる技が多数ある」「体力半分以下だと覚醒必殺技(=超必殺技)が撃ち放題になる」「低空ダッシュの高度制限が無いためジャンプキャンセルからの低空ダッシュでコンボ繋ぎ放題」「何にでもダッシュ慣性が仕込めるためノックバック無視し放題」といったイケイケ調整もその滅茶苦茶ぶりに拍車をかけています。
さらに気絶の解除条件が「コンボ補正が切れたところで攻撃を当てるか、ダストアタックを当てる、または殺界発生技を食らった際に回避コマンドを入力する事、もしくはダメージを受けていない状態で一定時間経過する事で解除される」のいずれかとなっており、上記の条件を避ければ気絶させっ放しでコンボを繋げることができます。気絶中は受身も一切取れないので空中コンボもつなげ放題でした。

システム面でも問題が…

まず基本的な部分ですが、CPU戦の難易度が高いです。
序盤はそうでもありませんが、後半~ラスボスは的確に反撃・コンボを決めてくるためまさしく鬼です。ノーコンティニューでクリアするなら、チャージキャンセルコンボの使用もやむをえないレベルでしょう。
前述したとおり、本作では体力が50%以下になったら覚醒必殺技使い放題なのですが、ラスボスはそれを悪用して覚醒必殺技「ガンマレイ」を連発してきます。避けにくい極太レーザーを照射し、ヒットしたら大ダメージ+100%気絶、そして再びガンマレイを撃たれて終了、ガードしても大量の削りダメージ…ととんでもないことになります。ただし、照射直前の隙を突いてダッシュ攻撃で出かかりを潰す(実は本作では覚醒必殺技の暗転時に時間停止がない)、ハイジャンプで空中に逃げる、といった抜け道もあります。
なお、一撃必殺技はCPUも狙ってくることがあります。
また、CPU戦の難易度・本数設定ができない点も難易度上昇に一役買ってしまっています。
コンボ重視のゲームなのに、高く飛んでも画面がほとんど上にスクロールせず、せっかくの空中コンボが画面の上端や体力ゲージで隠れてしまう事が多いのも問題ですね。
ダストアタック(浮かせ技)を当てた時などは浮いた相手がちょうど体力ゲージの裏の辺りに留まるため、最初から見せる気が無いとしか思えません。

一撃必殺技を回避された場合、仕掛けた側が先に動けるようになっているのですが、相手が無防備なところにそのままコンボを繋げる事が可能なキャラがいます。回避しなければ一撃必殺が待っているのですが、回避してもコンボからワンチャンで死ぬという素晴らしい理不尽仕様です。
「殺界発生技を喰らった瞬間に気絶すると絶対に回避できない」という、これまた理不尽な仕様も存在しています。

コミカルで豊富なバグの数々

ここまでくれば当然、バグもやたらと多いです。再現の難しいバグから実戦でぽんぽん起こるバグまで様々なものが発生します。実戦投入できればさらなる世紀末化が期待できるバグも多いでしょう。復刻版で修正されたものもありますが、ほんの一部のみでした。
中でも面白いものは「CPU戦の対戦相手が全員ポチョムキンになる」という謎の裏技ですね(笑)。これを使うと、ジャスティス登場デモの後なのにポチョムキンが出てくるという珍妙な事態に。しかしCPU戦の後半の難易度は(使用キャラにもよりますが)それでも結構高いのが現実でした。

テスタメント・ジャスティス・梅喧の勝利台詞が用意されていないというのもバグなのでしょうか…。通常プレイでは勝利台詞を見ることができませんし、ある手順を踏むことで勝利台詞を出現させても、「ただいま開発中によりメッセージが用意されておりません」という、いかにも「作りかけ」といった趣旨のメッセージが表示されるのみとなっております。

総評

ここまで読めばだいたい察しが付くでしょうが、本作の要素を全て解禁した時「ゲームバランス」などというものはどこかに消し飛んでしまうほどガタガタで粗い作りであることが分かると思います。
もし本作が当時のアーケードシーンや現在のネット対戦用ゲームとして登場していたら、間違いなく「商品失格のクソゲー」呼ばわりされるであろうレベルであり、そこかしこに今となっては考えられないトンデモ調整が行われている点が数多く見受けられます。処女作の時点で世紀末の血脈を感じることが出来るのではないでしょうか。

しかし、爽快感あふれるゲーム性や魅力あるキャラクター、名曲揃いのBGMといった良点は決して無視できるものではなく、「『家庭用ハードでしか展開していない2D格闘ゲーム』としては飛び抜けた完成度の高さである」という印象を与えてくれる作品ではありました。

どう考えても最悪のバランスなのに何故か面白い、とマイナーながらも地味な人気を得た名(迷?)作です。

余談

本作の製作スタッフ「TEAM NEO BLOOD」は「全員が入社したてのホヤホヤで、これまで商用ゲームを制作したことが無く、さらに人数も少ない」というにわかには信じられない事実があります。少人数制作によるフットワークの良さが、(世紀末に足を突っ込んではいますが…)いい結果を残したと言えます。

本作の発売当時はやはりメジャーな存在とは言えず、「面白いクソゲー」として一部で人気を獲得するに留まっていました。
しかし、大手メーカーながらゲーム方面ではいまいちだったサミーの目に止まり、続編製作が決定。そして2000年に完成、発売された続編『GUILTY GEAR X』はついにアーケードに進出、格闘ゲーム界及びアーケード業界に新風を吹き起こすこととなります。
続編『GUILTY GEAR X』

続編『GUILTY GEAR X』

00年代初頭の格ゲー人気を支え、さらに会社の方向性をも変えた名作はこうして生まれたのです。
本稿で記載しております情報は、ゲームカタログ@wikiから引用させていただきました。

出典元はコチラです。
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