”草魂”の最後の登板
後楽園での日本ハム-近鉄11回戦、6月17日の南海14回戦(大阪)以来、3週間ぶりの登板となった鈴木は3回集中打と自らの悪送球で5点を奪われ、味方の3点援護を守れなかった。
日本ハムの4番・古屋英夫三塁手の打球が右翼フェンス直撃の三塁打となり、内野に打たれた球が戻ってきた。普通、投手はボールを球審に替えるよう要求するものだが、鈴木はそのままグラブに収めた。
岡本伊三美監督が投手交代を告げ、板東里視投手コーチが歩み寄るや否やマウンドを降りた鈴木。古屋に打たれたボールを板東コーチに手渡すことなく、グラブに入れたままベンチに下がった。
via matome.naver.jp
翌10日、ナインに別れを告げると独りで帰阪。球団首脳には現役引退の意思表示をした。シーズン中、しかも多大な功績のある投手をこのまま辞めさせられないと慰留、間近に迫ったオールスターでも復活した“サンデー兆治”こと、ロッテ・村田兆治投手に次いでファン投票2位でもあった。しかし、37歳の男は引き際も頑固だった。
「魂の抜けた鈴木啓示をファンの皆さんの前にさらすことは恥。もう投げません。オールスターは生き生きとしたスター選手が集まるドリームゲーム。死にかけた選手が出るところではない。(引退は)心と体がバラバラになってどうしょうもなくなったから。(6月17日の)南海戦で張りつめていた糸がプツンと切れた。もう一度と思い日本ハム戦で投げたが、もとには戻らなかった」。
”男の勲章”
鈴木に与えられた冠は”草魂”。鈴木の座右の銘そのものだ。鈴木は入団時から「弱い球団」「狭い球場」という逆境を乗り越えようとした。たとえ狭い球場でもエースとしてホームグラウンドを好きになろうと努力した。そしてホームグラウンドで勝つために制球力を磨いた。
鈴木には世界記録がある。それは被本塁打560という大記録だ。この記録は、日生球場をホームグラウンドとした大エースでなければ打ち立てられなかった記録だろう。
鈴木には世界記録がある。それは被本塁打560という大記録だ。この記録は、日生球場をホームグラウンドとした大エースでなければ打ち立てられなかった記録だろう。
鈴木自身はこの記録について、「男の勲章だと思っている。どんな強打者からも逃げずに勝負した結果。560本も打たれるまで使ってもらえる投手は他にいない。」と語っている。