室伏広治  日本の最終兵器が放つハンマーと雄叫びに世界は震え、感動した。
2016年12月14日 更新

室伏広治 日本の最終兵器が放つハンマーと雄叫びに世界は震え、感動した。

ハンマー投げ、世界歴代4位、日本選手権20連覇。端正なルックス。化け物じみた身体能力。圧倒的な存在感。謙虚、かつチャンレンジングな姿勢。そして雄叫び。室伏広治は、すべてが規格外の日本、いや世界、人類の最終兵器、最強アスリートである。

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乙武 

ところで、お父さんの目っていつも気になります?

室伏 

いや、そんなに気にならないですよ。

乙武 

いつも記事に出る時とかって、どうしても「父と2人でメダルを目指す」とか、書かれるじゃないですか。
嫌じゃないですか?

室伏 

まあ、父親が46時中くっついているわけじゃないですから・・・
いいんじゃないですか。

乙武 

本当にお父さんのことを尊敬していることが伝わってくるんですけど、同じ競技者として見てもやっぱりスゴイ選手ですか?

室伏 

そうですね。
やっぱり、体格のハンディとかかなりあった中で長い間日本、アジア、世界で実績を作ってきたっていうことはすごく大変だっだと思います。

乙武 

初めて記録の面でお父さんを抜いた時って「父を超えた」という風に書かれましたけど、でもご自身では「記録の面では超えたけど、選手として父を超えたとは思っていません」とお答えになっていて、ああ、室伏さんにとってお父さんは本当に大きな存在なんだなぁと思ったんですけど、お父さんの1番のすごさ、どうしても超えられない部分っていうのはどの部分なんでしょう?

室伏 

やっぱり、地道な努力でしょうね。
特に、今では海外に行ったり色んな情報が入ってきたり、インターネットなど記録の情報も多く収集できる中、ライバルの選手が何をやっているといった情報なども、不便はないんです。
でも、昔は1人で技術を追求しなければならなかったし、世界の情報も本当に入ってこなかった。
特に、東西冷戦の頃は。
そういう孤独な状況や、日本にはライバルがいないといった環境の中で、41歳で現役を終えるまでずっと1人で考えて競技生活を作り上げてきたっていうのはなかなかできることじゃないですよね。

シドニー オリンピック ハイライト

乙武 

自分が練習に打ち込んでいる時に、ふと世間の若者たちから取り残されてるんじゃないかと、焦燥感に襲われることがあると、何かの記事で読みました。
どういう部分を1番失ってしまったと捉えているのですか。
また、そう感じたとしても、それ以上に得たものがあるからこそ競技を続けられていると思うのですが、実際、何を得ているのでしょうか。

室伏 

みんな何かを得るためにやるのでしょうけど、僕自身については具体的にはよく説明できません。
例えば周りの人から飲みに誘われても、行く気にならない。
そういう心境にならないんです。
そんな緊張感が続くときが多く、ましてや自分の学校はすごく田舎にあって、キジが出たりイタチが出たりする森のようなところなので、夜なんてものすごく静かな環境で練習をすることがある。
そうすると自分自身に集中して自分と向き合うことができるんです。
普通に生活して色々な人と接したり社会に溶け込んでいってしまうと本来の自分というのをついつい見失ってしまうときがあります。
周囲に流されたり、自分が本当にそれがしたいのか、それとも仕方なくやっているのか、分からなくなってしまう。
そういった面でマイナスでなく、失うものもなく自分と向きあっているという世界を少しでも1日の中で持っているということが大事だと思いますね。

乙武 

シドニーでもIAAFグランプリでいつも顔を合わせるメンバーがそろうわけですが、五輪ならではのお互いの駆け引きみたいなのもあるんですか。

室伏 

あるんじゃないですかね、それは。
その日のうちにいろんなハプニングがあると思うんですね。
そんなときにパッと適応出来るように、柔軟性のあるような雰囲気で臨みたいですね。

乙武 

自分が準備してる時って、ライバル達が後ろからじーっと見てるわけですよね。
そういう目って気になったりします?

室伏 

気になる人はいないんじゃないですかね。
みんな自分自身に集中しているから。
競技の合間も、いかにして自分の記録を伸ばすかなんて意外と考えていないんじゃないかな。
トップにいけばいくほど、そういう風に考えるんです。
一度、世界選手権決勝に出させてもらったんですが、予選とまた違うんですね。
決勝に進んだ時など、例えば大声で集中するために一人言の様に喋ったり叫んだりする選手もいます。けど誰も見向きもしないですよ。
みんなものすごい集中の域に入っているんです。

乙武 

それくらい集中していないと、80mを越すような記録は生まれてこないと。

室伏 

それもあります。
ただし、大きい試合になると自然とみんなそうなるんです。

乙武
 
その集中力が、シドニーでもいかんなく発揮されることを心からお祈りいたします。
僕もシドニーへ行くことになっているんです。
トラックに応援に行きますね。
今日は本当にありがとうございました。

室伏 

こちらこそ。
次はシドニーで会いましょう。

高い技術力

世界記録 ユーリ・セディフ選手 86m74cm

現在の世界記録はユーリ・セディフ選手の86m74cm。
室伏広治選手の84m86cmは世界4位の記録である。

世界の有力選手は110kg以上が普通で、そんな中、187cm96kgと小柄で細身な室伏が対等に渡り合えている理由は高い技術力である。
重いハンマーを直径2.135mのサークルから高速回転で安定的に投げるためには、高い技術力と強靭な肉体が必要である。
室伏が飛距離を伸ばすのに役立てているのが「倒れこみ」である 。
倒れこみは父:重信が外国人選手との体格のハンディをカバーするために編み出した技術である 。
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ハンマーを遠くに投げるためには、ハンマーの先端のスピードアップが不可欠である。
重信は、体を後ろに倒れこみながら回り、回転半径を大きくして、ハンマーの遠心力を高めた。
そして重信は当時の日本記録75m96cmを打ち立て、その技術は息子に受け継がれた。

また2003年から師事しているアメリカ在住のアイルランド人:トーガコーチと新技術も導入した。
「元々、ディール選手( 米)のコーチなんですが、試合などでディール選手と話していると共感できる部分が多かった。
「自分しか気づいていないだろう」と思っているようなことまで知っていたんです。
ずっと彼の練習拠点(オレゴン州ユージン)に行きたいと思っていて、それが実現したときに、トーガコーチを紹介されたのです。
非常に厳しい方で僕には合っていると思いましたし、一緒にやっていて本当に奥が深いなと思います。
技術を変えているというよりも基本に戻って作り直す作業なんです。
これが大変なんですよ。
ある程度の記録が出るようになると勇気のいることなんです。」
回転スピードの速さが室伏の特徴であり武器である。
世界のトップと室伏を見比べると1番に目につくのは室伏の速さである 。
しかしトーガは、その回転をゆっくり始めるように指導した。
ハンマーの飛距離を決めるのはリリース(手からハンマーが離れる瞬間)時のスピード。
その局面での最大スピードを獲得するには、最初からスピードを上げるより徐々に回転速度を上げていく方がいい-というのがトーガコーチの考え方。
ただこれは表面的な言い方であって、室伏によれば、次のような説明になる。
「速い遅いというよりも、1個1個、1つ1つの回転をこなすことが大事なんです。
確実に回っていくということですね、
しっかりした円にならないとダメなんです。
もちろん最後は、ハンマーヘッドは速くなりますよ。
それは、トレーニングをしていく中でできるようになるんです。」

人生、チャレンジ、人間、チャレンジするために生まれてきている

1998年 
父:重信氏の日本記録を更新
アジア大会優勝
2000年
80m突破
2001年
世界選手権銀メダル
アジア記録の83m47cm
2002年
世界グランプリ優勝
アジア大会2連勝
2003年
世界選手権銅メダル
世界歴代3位の84m86cm
2004年
アテネ五輪金メダル
2008年
北京オリンピックでは80m71で5位になったが、2位と3位の選手がドーピング違反が発覚し、失格、メダル剥奪となったため一時、3位となった。
(後にこの処分は撤回され、銅メダルならず。)
2010年
IAAFワールドチャレンジミーティングス、リエティ大会で世界ランキング1位となる80m99、ザグレブ大会で79m91を投げて優勝し、IAAFハンマースローチャレンジの初代年間チャンピオンとなった。
2011年
世界陸上大邱大会で81m24を投げて優勝。
世界選手権で初の金メダルを獲得。
世界選手権における男子最年長優勝者(36歳と325日)。
日本人選手で初となる五輪・世界選手権2冠覇者
2012年
ロンドンオリンピックでは78m71で3位になり、銅メダルを獲得。
2014年
日本選手権20連覇を達成
2015年
日本選手権と世界陸上を欠場。
2016年
2年ぶりの出場となったリオデジャネイロ五輪代表選考会を兼ねた第100回日本選手権で自己ベストを20メートル以上下回る64m74を投げて12位。
引退を表明。

室伏の達成してきたことは日本陸上競技会において金字塔の連続だった。
オリンピックと世界選手権における投擲種目のメダルは史上初。
2003年、84m86cmを投げ、世界歴代3位、現役選手では最高記録保持者となった。
2004年、アテネ五輪では日本の投擲選手としては史上初、陸上競技で、マラソン以外の種目では68年ぶりの金メダル。
五輪や世界選手権とは別に、グランプリ・シリーズという世界の主要都市で開催されるサーキット形式の試合がある。
そのうち最もレベルの高い数試合がゴールデンリーグで、室伏は2001年ローマ大会で同リーグ日本人初の優勝者となり、2002年にはこれも日本人初めての種目別優勝を飾った。

「人生、チャレンジですから。
スポーツでも人生でも、それぞれの立場で必ずハードルが与えられている。
仕事でも学校生活でもチャレンジするものはたくさんあると思いますよ。
それに対して逃げたらダメなんです。
ハンマー投も、1つのことができたらまた次、それができたらその次と、常に挑戦の連続でここまで来た
人生もチャレンジの連続なんですよ。
チャレンジすれば絶対にワクワクする。
やる気が起きないというのは、チャレンジしていないからなんです。
それはどこか生き方に問題がある。
チャレンジする対象は絶対にあります。
それを見過ごしたらダメなんです。
人間、チャレンジするために生まれてきているんですから。」

引退宣言 室伏広治 

世界最強のアスリート!?

武井壮 vs 室伏広治

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