金足農業で実写化!?川原泉「甲子園の空に笑え!」は、そして現実となった・・・!!
2020年2月28日 更新

金足農業で実写化!?川原泉「甲子園の空に笑え!」は、そして現実となった・・・!!

1984年、『花とゆめ』に連載された「甲子園の空に笑え!」は、川原泉の初期の傑作短編ギャグ漫画です。庄司陽子の「甲子園にちかえ!」のパロディで、漫画が描かれてから34年後に甲子園の決勝で準優勝した金足農業高校が、作品中の豆の木高校にそっくりだとネットで騒がれました。金足農業で実写化だ!と話題の川原泉「甲子園の笑え!」の内容をおさらいしてみましょう。

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異彩を放つ、ゆるい甲子園漫画!「甲子園の空に笑え!」

甲子園の空に笑え! (白泉社文庫)

甲子園の空に笑え! (白泉社文庫)

1995年出版の文庫本。広岡監督と豆の木ナイン。
甲子園と聞いて思い出す漫画は、何がありますか?やっぱりタッチ?ドカベン?おお振り?ダイヤのA?きりがないほどたくさんある甲子園漫画の中で、「甲子園の空に笑え!」を読んでみると、ここまでゆるくノホホンとした甲子園挑戦を描いた漫画はないかも・・・と思ってしまうかもしれません。

「甲子園の空に笑え!」は、カーラ教授こと川原泉の初期の傑作野球漫画です。川原泉といえば、学園コメディ、スポーツもの、SF、ファンタジーなどさまざまなジャンルで独特の作品世界を描き出している漫画家です。デビューから一貫してギャグ漫画を描き続けています。

「甲子園の空に笑え!」も、野球ギャグ漫画のジャンルに属する漫画です。内容と、登場人物、そして「漫画から34年後の奇跡」、「川原泉は預言者」といわれた、金足農業高校の2018年、甲子園の戦いについてみていきましょう!

庄司陽子「甲子園にちかえ!」をパロってみた川原泉。

「甲子園の空にちかえ!」は、青春のすべてをかけて甲子園を目指す3人の投手と、それを見守る3人の少女を描いた、庄司陽子の初期の高校野球モノの感動作です。それをパロったのが川原泉でした。
甲子園の空にちかえ!

甲子園の空にちかえ!

感動スポ根漫画。
「甲子園の空にちかえ!」は、昭和40年代典型のスポ根漫画です。昭和40年といえば「アタックNo,1」、50年代はじめには「エースをねらえ!」というスポ根漫画が大ブームを起こしました。気合と根性で試練を乗り越えるのがスポーツだ、というポリシーが一般的に信じられていた時代だったのかもしれません。
1984年に川原泉は「甲子園の空に笑え!」を描きました。昭和59年のことです。タイトルからも分かるように、内容は「甲子園にちかえ!」のパロディとなっています。川原泉はスポ根モノが嫌いなのかな、と思ってしまうほど、脱力系ホンワカのほほん甲子園を描いているのです。

ストーリー

九州の豆の木高校。廃部寸前で9人で野球をしていたところに赴任した新人監督は女性の新任教師。「若いから」というだけで野球部の監督になった生物教師の広岡真理子。

制度の改定も味方して、豆の木高校は、奇跡的に県予選を突破し甲子園に出場。広岡監督の運転するマイクロバス(スクールバス)で九州から甲子園へ。

「甲子園まで何マイル?マイクロバスで行くんだよー 野越え、山越え、海越えて」甲子園では、運の良さと守備の力のみ!で、豆の木高校はなんと決勝戦まで進出。

決勝の日。お坊様のように澄み切った心で球場に向かう広岡監督。「あー きょうも 運が良いといいね 、楽しいといいね 、幸せだといいね」。

豆の木高校の奇跡の甲子園挑戦。その結果は・・・??

34年後、豆の木は現実に!?金足農業と豆の木高校がそっくり!

金足農 雑草魂の奇跡

金足農 雑草魂の奇跡

9人野球で戦い抜いた金足農業。
●2018年の甲子園、準優勝の県立金足農業高校は部員が9人。
→豆の木高校は私立の高校で部員は9人。

●準決勝に強豪の日大三高とあたり、金足農業は最後に逆転勝ち。
→豆の木高校も、強豪の茶畑高校に逆転勝ちする。

●決勝で、金足農業高校は優勝候補No.1の大阪桐蔭に負ける。
→豆の木高校も前年度優勝チームで、優勝候補の北斗高校に負ける。

●金足農業の生徒たちの実家は全員農家。
→豆の木高校の生徒たちの実家も全員、農家。

●滞在費が足りず、全国から広く寄付を募る金足農業高校。
→滞在費が無く、村民の皆さまの寄付に助けられる豆の木高校。

●ブラバンが少なく、善意の助っ人ブラバンと一緒に、Gフレアなどを演奏する金足農業。
→ブラバンがなく、オーケストラで応援。ベートーベンやモーツアルトを演奏する豆の木高校。

ネット上では、「川原泉は34年前の預言者だ!」と騒然としていました❣

おそるべき広岡監督!!

広岡監督の愛読書は、野球の専門書です。「近代野球における せこい点の取り方」(川原泉創作の本)が、文庫の表紙の絵にも描かれています。「せこい」というあたりが笑える本です。

豆の木高校は、着任そうそう広岡監督が編み物をしちゃうほど、野球が下手っぴな高校でした。広岡監督は、様々な野球の技術書を読むことにより、「せこい」勝ち方を見いだします。それは、①点をやらなきゃ、負けることはない。②バント・盗塁・ヒットエンドラン・バスターなど何を駆使しても良いから1点をもぎ取れ、というものです。9人で、スモール・ベースボールをやるのです。

飛び抜けた実力者もリーダーも、エースもいないけれど、どこまでも基本に忠実に、農業で鍛えた足腰で「守る」野球をして勝ち上がって行くのです。「負けないためには、点をやらなきゃ良い」という広岡監督の言葉通り、「守って、守って、守り抜く」野球を貫いて、豆の木高校は決勝まで行くのでした。

広岡監督の存在がキーワード?女性監督でも違和感なし!

「甲子園の空に笑え!」が成功し、今でも多くの読者を獲得している理由のひとつに、広岡監督の存在があるのではないでしょうか。担当教科は生物で、醒めている冷静な監督です。練習でも試合でも感情的になることは、決してないのです。

この漫画は今から34年前の1984年に連載されたものです。その頃は、社会のなかで男性と女性は、区別される時代でした。男女雇用機会均等法が成立したのは翌年の1985年で、施行されたのは1986年。川原泉は、男性の仕事とされる分野で、女性でも十分やれるということを描きたかったのかもしれません。

広岡監督が女性監督だからと特別扱いされる描写はほとんどありません。9人の生徒たちにも懐かれ、校長先生や教頭先生にも信頼され、ライバル校の男性監督とも親しくなります。男性の登場人物たちが広岡先生を対等に扱っているので、読んでいて気持ちがほっこりします。

漫画連載から34年経った今も、女性監督が甲子園に出場することはありません。それでも、広岡先生は作品の中で、すんなり受け入れられる違和感ないキャラクターとして描かれています。

広岡監督、夢を見る!?やっぱり優勝したかった・・・。

甲子園の土を持ち帰る選手

甲子園の土を持ち帰る選手

豆の木高校も土を拾ったのでしょうか?
「たかがガキの球遊び」と言い切っていた(それでも生徒を見る目は、温かい)広岡監督が、甲子園に行き、対戦を重ねるごとに、熱血ではないものの、「生徒を先に進ませてあげたい」気持ちになっていくところが面白いところです。

決勝戦では、現実主義者で冷静なはずの広岡監督が、最後に夢をみます。「生徒たちを勝たせてあげたい」と願うのです。やっぱり、今まで一緒に練習してきて情も移っていますよね。生徒たちのために勝たせてあげたい、と、夢をみるのです。

逆に、理想に燃えていた対戦相手の北斗高校の高柳監督は、逆にシビアに現実をみて、確実に勝ちに行く作戦をとります。逆転2ランホームランを打たれた際の広岡監督の切ない表情が印象的で、甲子園の夢と現実という感じがするシーンです。
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